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藪平(茅場町)〜カレー蕎麦の救世主「冷やしカレー」

2005年6月20日

蕎麦屋のカレーが好きである。

もちろんきちんと作られたカレーも好きなのだが、蕎麦屋の、あの、ダシでカレー粉をといてあり、片栗粉でとろみをつけてあるカレーにはなんとも言えない魅力がある。後味もしつこいし、食べてから3時間は口の中がカレー臭くなるし、なんともくどい味なのだが、それでもやっぱり好きである。そういうヒト、意外と多いよね?

でも、「カレー蕎麦」というメニューには複雑な思いを持っている。だってあれ、肝心の蕎麦がボニャボニャに伸びるんだもの。片栗粉のせいで熱が冷めないので、余計にボニャボニャのボニャになる。しかもカレーの強い風味で蕎麦の香りが全くしない。カレーに浸っているんだもん、仕方ないのだけど、やっぱ蕎麦を食いに来ているのだもん、蕎麦の香りも味わいたい。こんなに蕎麦屋のカレーが好きなのに、カレー蕎麦をオーダーするのをいっつも躊躇する理由である。だから蕎麦屋でカレーを食べたいときはカレー丼にする。んー、どこかにボニャボニャ伸びてないカレー蕎麦を給する店はないものか。

と、思っていたら!救世主現る、である。つか、ずっと現れ続けていたらしいがボクがやっと気がついた、ということである。

茅場町の「藪平」という小さな小さな蕎麦屋さん。ここには「藪平特製冷やしカレー」(720円。店では「冷しカレー」と表記してある)という面妖なメニューがあり、これがボクの理想を叶えてくれているのであった。そう、ボニャボニャ伸びておらず、蕎麦の香りもきちんとする奇跡の「カレー蕎麦」なのだ(ちょっとオーバー)。

冷やしカレーと言っても、カレーが冷たいわけではない(その辺誤解しやすいメニュー名ですね)。熱々のカレー(もちろん蕎麦屋独特のカレー!)が丼になみなみとつがれて出てきて、その横に冷たいせいろ蕎麦がドデンとましますのである。そう、冷たいせいろ蕎麦をカレーにつけて食べる方式なのだ。これがですね兄さん、なにしろせいろ蕎麦だから伸びてないでしょ? で、それを箸でひとつまみしてカレーにつけてサッと喰うと、きちんとコシがある蕎麦でカレー蕎麦が食べられるわけですよ。そう、ボニャボニャに伸びてないの。んでもってカレーは熱くて蕎麦は冷たいという不思議な温度感が口の中で楽しめるのだ。そのうえしかも! 蕎麦をカレーにつけすぎず、箸でつまんだところ10センチくらいは浸さずにズズズとたぐるでしょ? そうすると蕎麦の香りがちゃんとプ〜ンと香るのである。口中で蕎麦の香りとカレーの香りが混ざるのである。こ、これじゃ! これじゃがな!

どうやら名物らしく、昼メシに訪れた客の半分はこの「冷やしカレー」を頼んでいる。古い店内だが清潔で、接客も気持ちよい。他のメニューもうまそうだ。でもでも、やっぱりこの店では「冷やしカレー」を頼んで欲しい。あぁ楽しや、カレー蕎麦。ぼにゃぼにゃに伸びていない、蕎麦の香りがするカレー蕎麦。どうです、ご同輩、食べたいでしょ? 定期的に通いたい店がまた増えてしまったボクなのである。

店データ

藪平
東京都中央区日本橋茅場町2-4-9
Tel:03-3666-2890
11:00 〜 14:00/17:00 〜 20:00
土日祝休
日本橋の高島屋に面した南側の通りを茅場町に向かって歩いていくと左側にある。てんぷら「みかわ」の路地を北側に出たところ、と説明した方がわかる人も多い?

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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