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ビーフン東(新橋)〜忘れられない濃い味バーツァン

2005年5月30日

ボクは会社に入って14年間、関西に勤務した。関西時代の思い出はいろいろあるが、第一に上げられるのは昼メシ。くわしくは最新刊「人生ピロピロ」(さとなお著/角川文庫)に書いたが、とにかく周りの人々が昼メシを重視していて、新入社員だったボクもその雰囲気にそのまま感化され、昼メシにどこへ行くかは毎日の重要課題な日々であった。あの頃があったから今この連載を書いていると言っても過言ではない。仕事の句読点として昼メシの重要性を知ったのもそのころ。昼メシの味や会話がいい刺激となり午後の仕事がぐんと充実した覚えがある。東京転勤以降その感じがあまりないのがとても不満であるのだが、それはまた別のお話。

で、関西勤務時代、昼メシによく通った店に「ビーフン東(あずま)」という店がある。大阪のキタ、アメリカ領事館の裏手の古いビルの1階にあり雰囲気も抜群。定番は「バーツァン(ちまき)」と「汁ビーフン」。本場台湾もかくや、というような濃厚コテコテの味で、食べ終わると口が脂でいっぱいになる感じ。とはいえ、旨みが強い脂っぽさだったので、なんだかとても幸せな気分になった。若かったこともあると思う。時々無性に食べたくなる味だったのである。

大変はやっていたその店であるが、理由はわからないがある日多くの人に惜しまれつつ店を閉め(たしか1990年くらいだったと思う)、東京でオーナーの兄弟がやっているという店に全員移ったらしいと風の噂には聞いていた。その店が新橋にあるとわかったときの喜び。またあのバーツァンが食べられる! あの汁ビーフンに浸れる! なんという幸せっ。ボクは喜び勇んですぐに足を運んだ。ずいぶん前のことである。

新橋駅前汐留側のその名も「新橋駅前ビル1号館」の2階の奥にある「ビーフン東」。おお、ロゴも一緒だ! マークも一緒だ! と驚喜しながら店に入り、まずはマネージャーらしき人をつかまえて「大阪にあった東さんですよね!」と聞いたら「そうですよー。よくぞ訪ねてくださいました」との言葉。うれしかったなぁ。聞けばそのマネージャーさんは大阪店で働いていたらしい。席に座ってすぐ「バーツァンと汁ビーフン!」とオーダー。この店にはいろんなメニューがあるのだが、この黄金の組み合わせにはかなわない。焼ビーフンにもいつも惹かれるのだが、バーツァンと合わない気がする。やっぱりバーツァンには汁ビーフン!

運ばれてきたそれは大阪時代まんまの味。厳密に言うと少し脂っぽさが減ってしまった気もするが、こちらの舌も変化しているから比べられない。あぁ懐かしいこの旨み。バーツァンの中の具の味までが懐かしい。この店独自の味付けなのだろう。しっかり記憶と重なり合う。若いときはバーツァン2個と汁ビーフン(普通)を頼んでいたが、いまではバーツァン1個と汁ビーフン(普通)で昼メシにはちょうどいい感じ。小食の方はバーツァン1個と汁ビーフン(小)でも充分だろう。味が濃い、旨みたっぷりのバーツァンとビーフン。ボクの「会社青春時代」の味、ぜひとも皆さんにも共有していただきたいと思うのである。

店データ

ビーフン東
港区新橋2-20-15 新橋駅前ビル1号館2F
Tel:03-3571-6078
11:30 〜 14:00/17:00 〜 21:30
土11:30 〜 13:30/夜休
日祝休

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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