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吉野鮨本店(日本橋)〜地方出張前に江戸の味

2005年5月23日

自慢ではないが、新幹線で東京ー新大阪間を1日2往復半したことがある。いや、自慢といえば自慢かも。悲惨自慢。こんな悲惨な仕事をしたことあるよー、という自慢である。お酒を飲んだりした時に思わず出るアレね。つか、普通しますか? 1日12時間30分新幹線に乗っていたのですよ!ついでだから詳細にご報告しよう。

あれは確か7、8年前のこと。朝6時、徹夜で編集したビデオを持って始発の新幹線に乗り、新大阪へ。9時の会議でスポンサー試写して直しやダメ出しを聞き、すぐ東京へ。先に電話で編集オペレーターに連絡して直しを進めておいてもらい、東京で降りたらすぐに編集室へ行きチェック。直し終わったビデオを持ってまた新大阪にとって返す。新大阪に着いたらもう16時くらい。すぐスポンサー試写して、その場で細かい最終直しをもらい、また東京へ。東京着いたらもう20時前後。例によって先に連絡して直してもらっていた箇所を、新幹線ホーム上にモニター持ち込んでチェックして、最終の新幹線で新大阪へ。んでもって夜中に放送局に搬入…(オンラインでビデオも送れる今現在はもうこんな非効率なやり方、ありえないけど)。

ま、ここまで悲惨なのはこれ一回の特殊な体験なのだが、新幹線は実によく利用させていただいた。新幹線にマイレージが導入されてたらパリやニューヨークに行けるくらいは乗っただろう。毎月20往復はしたと思う。そのくらい乗ってくると、何がつらいってメシだ。東京駅や新大阪駅で売っている弁当はすぐ食べ尽くしてしまうし、何度も食べてると飽きまくる。だから駅周辺の弁当屋やメシ屋を相当開拓することになる。でもね、当時、東京駅周辺はメシの空白地帯で、なかなかしょ ぼかったのである。

とはいえ、当時もいい店がいくつかあった。今日ご紹介するのはそのうちの一店。当時開拓した中でも特に気に入って通っていた「吉野鮨本店」である。日本橋の高島屋の裏手にあるのだが、歩いてみると東京駅から意外と近い。早足なら5分かからず店に入れる。でもって日本が誇るファストフードである鮨だから、早ければ15分もあれば食べ終わる。新幹線の待ち時間には最適なのである。

というか、この店は早いから気に入っていたわけではもちろんない。なにせ創業明治12年の大老舗。東京でもトップクラスの老舗なのだ。その老舗の江戸前鮨がランチだと1575円(現在)で食べられるのである。江戸前の技を気軽に安く楽しめる店としては東京でもトップクラスの質を誇る店なのだ。煮きりを使い、酢飯と鮨ダネのバランスもとても良い。仕事してある光り物や穴子などは伝統の技を受け継いだ本格的なもの。酢飯とタネがいいバランスで口の中でほどける。昼時ともなると、高島屋でお買い物の奥様方で混み合うが、彼女らはテーブル席に陣取るので、意外とカウンターが空いている。新幹線で地方に出張する前に本格的江戸前を味わって出かけるのもまたオツだ。鮨は胃もすっきりするので移動時ももたれない。

ただし、ランチコースは若手が握ったりしているので、少々出来にムラがあることもあることを付け加えておきたい。少し財布に余裕ある時はお好みで10貫くらい食べる方が満足度は高いであろう。え?お好みだと高いだろうって。まぁランチコースよりは高いけど、それでも、お酒飲まなければ4000円程度である。この値段で本格的な老舗鮨が食べられるなら、決して高くはないと思う。

店データ

吉野鮨本店
東京都中央区日本橋3-8-11
Tel:03-3274-3001
11:00 〜14:00/16:30 〜21:30
日祝休(土曜昼のみ)
日本橋高島屋の裏手。東京駅からは徒歩5分ほど。

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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