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ヴィロン(渋谷) 昔ながらの、本物のバゲット

2005年5月9日

キミは本物のバゲットを知っているか!

って、バゲットって何って方もいらっしゃいますよね、すいません。バゲットとはいわゆるフランスパンのことだ。あの長くて茶色くて円柱状のヤツ。一部には固いだけの味がないパンと思われているアレ。でもフランスに旅行に行った女性とかはだいたいこう言う。「バゲットがチョ〜美味しかったの〜」

そう、本場でうまいバゲットを食べるとパンはこれ以外いらないとまで思ってしまうくらいうまい。もちろんクロワッサンや全粒粉系のパンも愛しているが、うまいバゲットの懐の深さにはかなわない。特に料理と合わせた時、バゲットは最大のチカラを発揮する存在なのだ。

ただ、本場パリでも本物のバゲットは長く失われていた。1960年代から機械こねとそれに耐えるアメリカ産やカナダ産の強力粉が席巻し、昔ながらの味が失われていたのである。近年それが見直され「昔ながらのバゲットの味を取り戻せ」といろんな運動が起こり、いまや完全に復活した。そこで使われたのがフランス産小麦粉「レトロドール」。そしてそれを作っている製粉メーカーの名前が「ヴィロン」という。そう、今日取り上げる店名といっしょ。渋谷東急本店前にあるこの店こそ、そのヴィロン直営のパン屋兼レストランなのである(正確に言うと、ブーランジェリー/パティスリー/ブラッスリー)。

シンプルな工程で作られる昔ながらのバゲット「レトロドール・バゲット」は、いままで知っていたバゲットと全然違うのがひと目でわかる。まず細い。そして中(フランス語で「ミ」と呼ぶ)が黄金色をしている。んでもって大きな気泡がいっぱいあいている。さらに皮が香ばしくムチッとしている。一般で売られているバゲットはもっと太くて、中身ももっと白くて、気泡などほとんどなく、皮はパリパリするだけだ。うーむ。んでもってひと口食べるとこれまたビックリ。香りがグガーッと濃厚に立ち上る。全体にものすごくムチムチで骨太。バゲットって本当はこんな味だったのかーと驚くこと確実。実にんまい。

聞けば、日本でこの味を再現するのには相当苦労したらしい。小麦粉レトロドールを使っただけではこの味にならなかったらしいのだ。日本の軟水が合わないという。だから贅沢にも硬度が高い(値段も高い)コントレックスを混ぜた水で練ってるらしいぞ。それでやっとこの味になっているのだな。なるほど。

店は1階がパン販売で2階がブラッスリー。是非2階で出来たてほやほやのレトロドール・バゲットを食べてみよう。

ランチは1プレートの料理がついて1890円。食べる前は少々割高に感じるが、本物のバゲットが食べられるうえに、量も多く味も結構。そこらのビストロのランチよりうまいとボクは思う。ボクが行ったときは仔羊のクスクスだったが、おかわりし放題のレトロドール・バゲットとよく合って満足度はとても高かった。まぁそれでも「昼から1890円は…」という方は1階でレトロドールのサンドイッチでも買って2階で食べるのが正解かもしれない。そう、1階で購入して2階で食べることもできるのだ。

んでもって、食後はぜひ1階のお店でレトロドール・バゲットを買って、奥さんのお土産にしよう。そして「これが本物のバゲットだ」と蘊蓄(うんちく)しよう。得点アップ間違いなしである。

ランチで気軽に知れる本場本物のバゲット。「ヴィロン」は、渋谷に勤めている人でなくても、ちょっと足を伸ばして行く価値がある小粋なブラッスリーなのである。

店データ

ヴィロン
東京都渋谷区宇田川町33-8
Tel:03-5458-1776
9:00 〜 24:00
渋谷東急本店前。朝9時から24時までぶっ続けでやっているので、オーチャードホール利用の際とか便利。ちなみに朝食も満足度高い。

さとなお

本名:佐藤 尚之。1961年東京生まれ。本職は広告会社のクリエーティブ・ディレクター。

1995年、個人サイト「www.さとなお.com」を立ちあげ、現在約1000万アクセス。ネット上での活動をきっかけに出版や連載を手がけるようになる。著書に「うまひゃひゃさぬきうどん」「ジバラン・フレンチレストランガイド」「さとなおの自腹で満足!」「沖縄やぎ地獄」「沖縄上手な旅ごはん」など。最新刊はエッセイ集「人生ピロピロ」(角川文庫)。今年は鮨の本なども予定中。

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