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第136回 直木賞候補作を斬る!(後編)

2007年1月12日

(アライ ユキコ=フリー編集者)

(前編はこちら

白石 一文『どれくらいの愛情』

豊崎 では、大森さんが、北村さんの『ひとがた流し』と同じじゃないかとおっしゃる『どれくらいの愛情』に批判の矛先を向けますか。

大森 最初の一編「20年後の私へ」はちょっと面白かったんですよ。一瞬、これなら弁護してもいいかと思った。安西という男が自分のコレクションを使って社内で個人DVDレンタルをやってて、ヒロインの岬のところにせっせと映画のDVDを持ってきては、1枚100円で貸し出す。でも実は…という話。この安西の行動がなかなかせこくておかしい。この微妙にダメないい人さかげんが素敵。しかも、そのDVDのラインナップが絶妙で。

豊崎 そうそう、「八月のクリスマス」「イルマーレ」「インタビュー」「ラブストーリー」「星願 あなたにもういちど」「恋する惑星」…まだまだ続く。

大森 白石一文、自分の読者層をよく分かってるなと。だからね、こういう映画が好きな人が『ひとがた流し』も買ってんですよ(笑)。こういうので励まされるタイプの人が。で、岬は、おすすめラインナップの中でも、「海猿」とか「バニラ・スカイ」とか「メイド・イン・マンハッタン」は借りなかったと。この区分けなんか実に芸が細かい。だからなに? という気もするけど、これは笑えました。

ある意味で自分を客観視できてるし、意外といいんじゃないの…と思いかけたんですよ。ところが、「ダーウィンの法則」という短編を読んで、腰が抜けました。これは子どものいる女性の半分くらいを敵にまわしてるでしょ。

豊崎 ほんとですよね。知佳っていう主人公の保育士が、保育園に子どもを預ける親について“ゼロ歳児の赤ちゃんから二、三歳の幼児までおしなべて、そういう無垢な存在を平気で赤の他人に預けて働く親たちにどうしても心から協力する気持ちになれくなっていったのだった。正直なところ彼らは「生みっぱなしの責任放棄」と謗られてもやむを得ないのではないか”って考えてるのが、ひゃーって感じ。

■直木賞は誰の手に?

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