豊崎 40代の3人の女性がいて、若いときからの親友同士である、と。アナウンサーで、独身でばりばり仕事をしている千波、離婚して女手ひとつで娘を育ててきた作家の牧子、写真家と再婚して、やっぱり娘を育てている美々。その3人が、着かず離れずで拡大家族みたいに助け合って生きているって話になってるわけですけど、1つひとつのエピソードのつくりかたがうまくて、大人の小説として読ませる作品になってますよ。なにもがんで死んじゃうだけの話じゃないでしょー。
大森 だったらアナウンサーになんかしなきゃいいのに。しかも草野満代に取材したとか書いてあるからなあ。もうね、その3人の職業設定だけでイヤ。なんかいい人ばっかり出てくるのもイヤ。僕にとっては、北村薫のイヤな部分だけを集めてつくったような小説だったな。
だいたい中途半端ですよ。地味な日常小説だったら、アナウンサーだの乳がんだの作家だの写真家だの出さずに、それこそバーバラ・ピムの『秋の四重奏』みたいに、ふつうの人の何も起きない話をたんたんと書いてほしかった。でなきゃ逆に、もっとテレビドラマ風に派手な事件をどんどん起こして、波瀾万丈の話にしてほしかった。全体としては通俗ドラマなのに、でも北村さんのタッチで日常のエピソードを書くと、しみじみとしたリアリティがにじみ出て、そこが気持ち悪い。
まあ、趣味の問題だから、こういう小説を好きな人がいてもいいですよ。でも、北村薫ともあろう作家がこんな小説で売れてはいかんのではないか。いっそもう、とっとと直木賞でもなんでも取って映画化されてミリオンセラーになってあっちの世界へ行ってしまえ(笑)。
豊崎 映画化は当然されるでしょうね、直木賞を取れば。
大森 これ、実は発売前にプルーフ(見本版)で読んだんですよ。でね、読み終えた瞬間、「この本のことは忘れよう、読まなかったことにしよう」と。だから中身はぜんぜん覚えてなかったのに、さっきぱらぱらページをめくって、イヤな記憶がよみがえってきた。ああ、せっかく忘れてたのに!!
豊崎 ほんとにイヤなんですねぇ。
大森 ま、いい人向けの小説だってことですよ。
(後編に続く)
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