大森 『明日の記憶』以後も、『僕たちの戦争』とか『押入れのちよ』とか、SF系、ファンタジー系の話を書いてますからね。僕も、『四度目の氷河期』が出たばかりのとき、SFの新刊時評の対象になる本なのかどうかしばらく悩んだ覚えがある。あちこちの書評を見て、どうもSFでもファンタジーでもなさそうだと判断して、そのときは読まなかったんですが、冒頭だけ見ると確かにSF風。いきなりアイスマンが出てくるし。まあ、ラストはある意味SFというか、まったくあり得ないことが起きるんだけど。
豊崎 そうそう! 唖然(あぜん)としました。ネタバレになりますから、ここでは言いませんけど。
大森 いくらなんでもあのラストはどうか。
豊崎 このまんま、ふつうの成長小説の線でまとめてしまうのかなあと思っていたら、最後に大どんでん返しが!(笑)
大森 主人公がロシアに行くのはいいとして、そのあとが…。ほんとにああいうものが発見されて、その後ああいう事実が判明したとしても、いくらなんだってあんな状態には置かれていないと思いますけどね。主人公の幼なじみの女の子がとてもいいキャラで、そこだけとってもナイーブなラブストーリーになりそうなのに。なんでまた…。
豊崎 ねえ、どうしちゃったんでしょうか、荻原さんは。
大森 まあ、こういう成長小説は直木賞のストライクゾーンかなという気もして、「穴」を付けました。北村薫の年齢が目立たないように候補に入れたのかって気もしますけどね、30代、40代のなかに56歳の北村さんが独りいるとめだつから(笑)。
荻原さんは、今後2年以内に直木賞を受賞する確率が非常に高いと思いますが、今回はちょっと難しそう。 その荻原さんが『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞を受賞したときの選考委員が北村薫さんなんですが…。
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