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荻原 浩『四度目の氷河期』

豊崎 ある種の陸上競技小説がもう一冊。

大森 子供時代のいかにもな貴種流離譚幻想から陸上競技の槍投げに向かうところは素晴らしかったですね。中学校の陸上部で投てき競技に挑むのはなかなか難しい、でもどうしても槍を投げたい…という強い動機から始まるユニークな陸上競技小説。

豊崎 それが途中で変わってしまう。

大森 惜しいよねえ。中学校の三種競技から始めて、四種、七種、八種と進んで十種競技に行く話にもできたのに。

豊崎 『一瞬の風になれ』の高校生には感じなかったんですけど、『四度目の氷河期』の少年にはつくりもの感を覚えてしまって、物語に乗りきれませんでした。

大森 僕が最初にひっかかったのは、5ページ目。“四歳のぼくは、母さんをギオレンジャー・レッドより大きいと信じていた”ってところ。ギオレンジャー・レッドはないでしょギオレンジャー・レッドは! それを言うならギオレッドだって! あと、このネーミングだと、いったい何戦隊なのか見当もつきませんよ!

豊崎 大森さん大森さん、そういう小説じゃないですよっ(笑)。

大森 いやいや、そういう細部こそが、子どものリアリティをつくるんですよ!

豊崎 まあねー、確かにそう言われりゃそうだけど。

母親と2人暮らしの少年のビルドゥングスロマン(成長小説)なわけですけど、なぜか母親が父親の正体を明かしてくれないんですね。自然の中で過ごすのが好きなことや、外見がハーフっぽいこととかいろんな要因が重なって、主人公の少年は自分のことをクロマニヨン人の子どもだと信じ込んでしまい…。

このタイトルだし、帯にもクロマニヨン人とかうたってるから、てっきりSF小説かと思って読み始めたんです。荻原浩は『明日の記憶』ですごく有名になったから、リアリズム小説の書き手かと思われてますけど、実はファンタジー系の作品も書いてる作家ですしね。その路線の荻原作品が好きなわたしは期待して読んだぶん…。

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