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第136回 直木賞候補作を斬る!(前編)

2007年1月12日

(アライ ユキコ=フリー編集者)

 1月16日に開かれる「本家」の選考会に先んじて「文学賞メッタ斬り!コンビ」の2人、大森望と豊崎由美が、選考委員の意向を推察しつつ、候補作の当落を予想した。加えて、各作品に対する評価を、歯に衣を着せぬ本音で語った。

佐藤 多佳子『一瞬の風になれ』

豊崎 すごい、2人とも評価はAなのに、なんの印も付けてない。

大森 全3巻の小説は絶対ムリ。

『一瞬の風になれ』は直木賞を落ちて本屋大賞受賞っていうコースがもう決まってるからいいんです(笑)。

豊崎 誰が読んでも面白い小説ですもんね。まさにエンタの王道。

大森 小説でリアルに書いた、あだち充『タッチ』の陸上競技版みたいな。

豊崎 優秀なサッカー選手である兄と、やっぱりサッカーをやってるんだけど、兄の影に隠れてしまってる弟。高校進学を期に、弟は陸上部に入り、才能を開花し始める。

大森 主人公の新二と一緒に陸上部に入る幼なじみの連が天才肌のスプリンターでね。人物配置もよく考えてある。

大枠は『タッチ』なんだけど、高校スポーツものの方法論としては『ドカベン』ですね。新二の年代では、地元の神奈川県に全国レベルのすごい才能が集中しているって設定なんですよ。だから県大会レベルでも盛り上がる。地元のライバルたちのとの関係を3冊かけてじっくり描いていって、インター杯出場を賭けた関東大会がクライマックスになる。

豊崎 甲子園に行かない『ドカベン』ってことですね。なるほどー。

大森 3冊しかないから、とても甲子園まではたどり着かない(笑)。次々に強い敵が出現するという少年マンガ的な構造は小説向きじゃないんですよ。インターハイ前で止めるところがうまい。

豊崎 これ、「イチニツイテ」「ヨーイ」「ドン」の3巻で完結してるけど、続けようとと思えばいくらでも続けられる話でしょ。でも3巻でちょうどよかった。十分に楽しませていただきましたし、これ以上あったらくどい。キャラの立て方にしても成長小説の展開のし方にしても、類型っちゃ類型。にもかかわらず、類型嫌いなわたしが、なぜかすごく楽しめてしまいました。

■直木賞は誰の手に?

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