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第136回 芥川賞候補作を斬る!(前編)

2007年1月10日

(アライ ユキコ=フリー編集者)

 1月16日に開かれる「本家」の選考会に先んじて「文学賞メッタ斬り!コンビ」の二人、大森望と豊崎由美が、選考委員の意向を推察しつつ、候補作の当落を予想した。加えて、各作品に対する評価を、歯に衣を着せぬ本音で語った。

柴崎 友香『その街の今は』

豊崎 芥川賞候補作は地味ですね。やっぱり今回は5回目のノミネートである佐川光晴さんに授賞しましょうってことじゃないかなあ。佐川さんシフト。ただ、選考委員の先生がその意図に乗ってくれるかどうかは分からない。

大森 今回は、佐川光晴と星野智幸のダブル受賞で決まりなんだってば。

豊崎 (賞の主催側である文藝春秋の文芸誌である)「文學界」掲載作品を2つとも? そこまでエグイことする?

大森 前回とか、もっとエグイこともしてるじゃん! もうね、世間の常識も小説の中身も関係なんですよ。タイトルも著者名も見ず、文藝春秋がらみの作品があれば、そのまま本命印を打つ。それで7割は当たっちゃうんだから。

豊崎 ひゃー、考えなくていいんだ(笑)。

大森 そう。じゃあこの予想対談の意味はどこにあるのかって話になりますが(笑)。ま、予想は予想として、候補作の中身はどうなのか、せっかくだから読んでみましょうと。

まずは、初ノミネートの柴崎友香「その街の今は」。豊崎さんは評価高いね。しかも受賞予想は本命。

豊崎 いやー、びっくりした。たいへんうまいですね、この人は。トヨザキ感服つかまつり候です。1973年生まれっていうから、まだ30代前半の若い作家ですけどね。

大森 まあ、今回の芥川賞候補作の中で、ふつうに読んでいちばん面白いのはたぶんこれですね。

豊崎 舞台は大阪。勤めてた会社が倒産しちゃって、カフェでアルバイトしている“わたし”の一 人称で、彼女の友人たちとの交流や合コンのエピソードで話をまとめてます。

この女の子が大阪の昔の写真を集めていて、そういうものを見るのが好きなんですね。だから、会話や地の文の中で時おり“ふと”現在の大阪の光景に昔の姿が重なっていく。その“ふと”という感じがわざとらしくなくて絶妙です。

とくに大きな事件が起きるわけじゃないし、内容自体は地味な小説です。だけど、小説がストーリーだけで成り立っているわけではないことを、はっきりと読み手に伝えていて頼もしい。ちょっと新人離れしたうまさだなと、A評価にしたんですけど、大森さんはBなんですね。

■芥川賞は誰の手に?

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