
豊崎 由美
豊崎 伊坂幸太郎って、ほんとにキャラクターつくるのはうまいですよねえ。主要登場人物の一人、西嶋に面白いしゃべりかたをさせてるでしょ。入学したばっかりのクラスコンパで、
“ちょっと、何をしんとしてるんですか? だいたいね、世界のあちこちで戦争が起きてるっていうのにね、俺たちは何やってるんですか。平和の話をしてるんですよ、俺は。呆れてどうするんですか”
なんて不自然な喋り言葉で演説させたり。
でも、これって完璧に「チルドレン」ラインの小説でしょ。西嶋をはじめキャラ的にもかぶってるし、実際その西嶋とかぶる「チルドレン」の重要キャラもちらっと出て来たし。その「チルドレン」をすでに候補作として読んだ選考委員の中に「また同じ世界なの?」と思う人がいても不思議じゃありません。
大森 でも、伊坂幸太郎の仙台を舞台にした作品群はみんな微妙なところでつながってるんだよ。映画になった「陽気なギャングが地球を回す」のシリーズも実は同じ世界だし。だから、ほぼすべての作品が一つの大きなシリーズに属しているとも言える。いままでずっと読んできてる人には分かるという、一種の読者サービスだと思うけどな。
豊崎 あと、砂漠ってイメージが陳腐だと思うんです。モラトリアムである学生時代、その外にある社会人として過ごさないといけない世界が砂漠っていうイメージは、どうなの? 卒業式の演し物を見て“ああいう悪ふざけが通用するのは、砂漠に出るまでだから”
って言っちゃうところとか、なんかヤ。社会人になったって悪ふざけくらいすりゃいいじゃん! 「人間の土地」(サン=テグジュペリ)にある“ぼくは砂漠についてすでに多くを語った。ところで、これ以上砂漠を語るに先立って、ある一つのオアシスについて語りたいと思う”
という文章をベースにしてる気取りは悪くないと思うけど。大森さんは対抗を付けたんですね、わたしは穴。
大森 どうして対抗かというと、これで取らないと、次はもう後がない。6回目ですからね。野球の投手心理を考えると、2-3に陥る前に勝負するだろうと。まあ、投手じゃないから分かりませんけどね。でも、最近の流れから見ても、森絵都、伊坂幸太郎の2作受賞の可能性は高いと思います。
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