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第135回 芥川賞レース予想(前編)

2006年7月6日

(アライ ユキコ=フリー編集者)

7月13日に開かれる“本家”の選考会に先んじて「文学賞メッタ斬り!コンビ」の二人、大森望と豊崎由美が、選考委員の意向を推察しつつ、候補作の当落を予想した。加えて、各作品に対する評価を、歯に衣を着せぬ本音で語った。

中原 昌也「点滅……」

大森 (豊崎が伊藤たかみに◎を付けてるのを見て)ええーっ! なんで? 中原昌也が本命じゃないの!? 愛してる馬の馬券は買わないと。

豊崎 だって、無理ですよ。

大森望

大森 そういう問題じゃないよ! たとえ負けると分かっていても、勝負を逃げちゃダメでしょう。トヨザキ社長たるもの、ここは中原昌也に全財産突っ込まなきゃ。

豊崎 でも当たり馬券を買おうと思ったら、今回は伊藤たかみでしょ? 今回の芥川賞は、そういう企画なんでしょ?

しっかし、そんなに伊藤たかみに芥川賞をあげたいんですかね、文藝春秋は。候補作の中で、文藝春秋が発行する「文學界」に掲載された作品は、伊藤たかみの「八月の路上に捨てる」だけ。あとの4作は「新潮」の掲載作。芥川賞の母体は文藝春秋なんだもの、伊藤たかみで決まりでしょー。露骨ですよねえ。

大森 いやいやいや、単純にそうとは言い切れません。

豊崎 なんで?

大森 「太陽が西から昇ることはあっても中原昌也が芥川賞候補になることはありえない」とまで言われてきたのに。その中原くんが大逆転で候補入りを果たしたんですよ。そこが今回最大の注目ポイント。いや、驚きました。だって、単なる伊藤たかみシフトなら、なにもリスクをおかして「点滅……」を候補に入れる必要はないんですよ。

そこから考えると、今回の「新潮」偏重は文春左派の造反劇じゃないかという穿った(うがった)見方もできる。つまり、最近の「文學界」右傾化に対して敢然と叛旗を翻したんじゃないかと。ほら、石原慎太郎の小説(「火の島」)を連載したりしてるでしょ。

豊崎 はあぁー。

大森 最新号(7月号)の特集「国語再建」では、「国家の品格」の藤原正彦と「声に出して読みたい日本語」の齋藤孝が「『日本人の誇り』は国語教育から」なんてタイトルで対談してたりするし。

豊崎 それはいかがなものか!

大森 そうそう。そういう右方向に舵を切った「文學界」に対して社員の一部がもの申すと言うか、お灸を据える意味合いの候補選びだと考えられなくもない。

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