本谷 有希子「生きているだけで、愛。」(新潮6月号)
25歳のメンヘラ(躁鬱で過眠症)のあたしは、合コンで知り合った雑誌編集者の津奈木のマンションに転がり込んでいる。
決まった時間に起きることもできず、日常生活をまっとうに送れないでいる無職のあたしの前に津奈木の元カノが現れ、「彼と別れろ」と言う。「お金がないから津奈木のマンションから出て行けないのだ」と言うあたしに元カノは、強引にアルバイトを世話する。そのバイト先を飛び出してきたあたしは、真冬のマンションの屋上で(昔、じぶんの母親がしたように)全裸になって、津奈木を呼び出し、もっとあたしに疲れてほしいのだと訴える。
島本 理生「大きな熊が来る前に、おやすみ。」(新潮1月号)
保母の“私”は、会社員の徹平と暮らし始めて半年。眠る前に私はいつも祈る“今夜は熟睡できますように”。なかなか眠れない私の脳裏にいつもあるのは、“子供がいつまでも起きてると、大きな熊が来て食われるぞ”という幼いころに聞いた父の大きな声。
私は父から暴力を受けていた。そして徹平もある夜、私に暴力を振るう。父の暴力と徹平のこととを考えながら、何事もなかったように過ごす日々のなか、私は妊娠していることを知る。
伊藤 たかみ「八月の路上に捨てる」(文學界6月号)
自販機ルートドライバーの水城さん(女性)とコンビで仕事をしているアルバイトの敦。水城さんがドライバーを辞めるという暑い8月のある一日、仕事の傍ら、水城さんは敦の離婚話を聞かせろという。離婚歴のある水城さんに、敦は、離婚した妻・知恵子との大学での出会いから同棲、結婚、破綻に至るまでを物語る。
物語ったあと、最後の仕事場所でなじみの客から、水城さんが再婚することを教えられ、敦は複雑な気持ちになる。敦は、30歳の誕生日に提出する予定の離婚届の保証人サインを水城さんに頼む。
next: 直木賞候補作紹介…
あなたのご意見をコメントやトラックバックでお寄せください
この連載のバックナンバー バックナンバー一覧へ 画面先頭に戻る
- 第136回 芥川賞・直木賞の受賞作発表を聞いて (2007/01/17)
- 第136回 直木賞候補作を斬る!(後編) (2007/01/12)
- 第136回 直木賞候補作を斬る!(前編) (2007/01/12)
- 第136回 芥川賞候補作を斬る!(後編) (2007/01/11)
- 第136回 芥川賞候補作を斬る!(前編) (2007/01/10)
