徹底討論!〜メッタ斬り!版芥川賞レース予想(後編)
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(アライ ユキコ=フリー編集者)

大森 今回、西村賢太が候補に挙がったおかげで、松尾スズキはちょっと分が悪いよね。
豊崎 そう、同時に候補になっちゃったことが最大の敗因になるかもしれない。西村さんが一種天然の笑いだとすると…
大森 松尾スズキのは、計算し尽くした、つくった笑いだからね。さすがに巧いんだけど、「松尾スズキならこれくらいは書けて当然」と思われてしまうところも弱い。
豊崎 この人は、人生の箍(たが)が外れかけている人間が醸す無惨な笑いってものを書かせたら東西随一の作家です。演劇でもそうであるように。
「クワイエットルームにようこそ」は、いわゆるオーバードーズで強制入院させられた女性ライターの、退院するまでの数日間を描いた物語。今現在「もう限界、絶望!」っていう悲しみの極みにある人にはぜひ読んでいただきたい。慰撫されると思いますよ。

大森望氏
大森 松尾版「カッコーの巣の上で」ですね。
僕は「失踪日記」も思い出した。後半で、著者の吾妻ひでおがアル中になって精神病棟に入れられてしまうところ。で、両方を比べると、「失踪日記」の方が文学的かもしれない(笑)。
豊崎 〈睨み飯〉とかのシーン、好きだなあ。主人公の恋人が病院の拒食症患者たちの食事の光景を〈痩せてご飯睨んじゃって、睨み飯。よく生きてるな、あれ。睨んでてもカロリーとれないからなあ〉って言うんですよね。そのすぐ横で頭をチリチリに焦がしてる女の子が、泣きながらナースに〈「もう、頭燃やしません!」〉って謝ってる。巧い。笑わせすぎ。
next:「あーあ、ゲロでうがいしちゃってるよ」…
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