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徹底討論!〜メッタ斬り!版芥川賞レース予想(前編)

2006年1月11日

(前回記事はこちら

(アライ ユキコ=フリー編集者)

1月17日、第134回の芥川賞と直木賞がそれぞれ決定する。今回は、それに先駆けて、「文学賞メッタ斬り!コンビ」の二人、大森望と豊崎由美が、選考委員の意向を推察しつつ、候補作の当落を予想。さらに、各作品に対する評価を本音で語り倒した。これこそ、「文芸を愛する人間による真実の選考会」と言っていいはずだ。あなたも、ぜひ、受賞作を予想してみてほしい。年に2回のお祭りをいっしょに楽しもう!

第134回芥川賞選考委員/
池澤夏樹・石原慎太郎・黒井千次・河野多惠子・高樹のぶ子・宮本輝・村上龍・山田詠美

伊藤たかみ「ボギー、愛しているか」

大森 Dはあんまりでしょ(採点表を見ながら)。と言っておいて、オレもCか。ちょっと低すぎたな(作品評価を書き変えようとする)。

豊崎 何してんですか、大森さん(阻止して)! いじっちゃダメですよ。こんなものCで十分ですよ、Cだって優しいってもんですよっ。

大森 豊崎さん、前回候補になった「無花果カレーライス」に対する評価も厳しかったよね。

豊崎 だって、この人ヘタだもん。どうして立て続けに候補になってるの? 中学時代の友人に、ボギーってあだ名の指の欠けている男が居た。かつて、こいつから巻き上げた20万円を持って、W島に行って散財しようってだけの話でしょ。

W島は〈地元で売春島だと噂される小さな島〉って書いてあることから分かるように、三重県の渡鹿野島のこと。中部地方出身の人間だったらだれでも分かるスポットなんですけどね。

大森 関東で言えば新島みたいな?

豊崎 そうそう。そんな、少年のころ特別の思いで見ていたW島に行こうとする二人の中年男のグダグダな日常を描いてるだけ。

豊崎由美氏。「GINZA」「本の雑誌」「TV Bros.」「文藝」などで書評を連載中。

いちばんダメなのは、視点が一定してないところ。一人称と三人称の間を好き勝手に行き来してて、読みにくいったらありゃしない。

例えば、〈自分と加藤が無様であるということだけは知れたのでよかった〉の〈自分〉っていうのは主人公の飯島のことだから、一人称視点ですよね。でも、この2行後には〈二時頃には飯島もすっかりできあがり、〉とあって、ここは三人称視点。で、その3行後、〈「愛だ何だ言ったって、マハリクマハリタには適わんよな」加藤が肩を組み、ぐっと体重を預けてくる〉。ここはまた一人称視点。

視点を移動させるっていうのは、うまくやれば作品世界に奥行きをもたらす大変高度なテクニックですよね。例えばジェーン・オースティンやヴァージニア・ウルフは、この手法をとても効果的に使っている。でも、悲しいかな、伊藤たかみさんは無自覚なままやってるだけだから、何の効果も持たらさない。そればかりか、逆に読みにくくしてる。小説世界が視野狭窄に陥ってます。

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