豊崎 北上さんだって思ってますよ、大森くんは情緒がないって。
しかし、『ナラタージュ』に対する評価がこんなに低いのってわたしたちだけなんじゃないですか。だから、島本さんは安心してっ。大森、豊崎以外の人は、みーんなあなたが大好きっ。書店員さんもきっと応援してるから気にしないで!
大森 ありえないような台詞が書かれている恋愛小説に抵抗がない人が多くて、それは不思議ですよね。
『ナラタージュ』もそう。例えば主人公が卒業式で先生に言うせりふ。「卒業間際の感傷なんてふざけたことを言わないで。あの日から私はずっと同じ場所にいます。そして、あなたから連絡が来るのを待っていた。それでもあなたは思い込みだって言うんですか」。こんなことを言う人がこの世にいるでしょうか(笑)。先生との会話はみんなこういう調子なんだよ、友だちとの会話はそうでもないんだけど。
豊崎 まあまあ。島本さんはきっとこういう話し方をする人なんですよ。
大森 でも、いわゆる完成度の高い作品なんでしょうね。会話を別にすれば、文章はうまいし。そういうものに、僕はなんの興味も持てないってだけで。
豊崎 確かに。興味の持てる完成度じゃないんですよね。なんか教科書くさいっていうか、お行儀がよすぎるっていうか…。
ああ、でも、もう『ナラタージュ』のことは、これ以上悪く言いたくないです。次に行きましょう!
3月17日の回は、『その日のまえに』、『県庁の星』、『容疑者Xの献身』を取り上げます。ご期待ください。
■大森 望(おおもり のぞみ)氏のプロフィール
1961年生まれ。翻訳家。
「本の雑誌」「週刊新潮」「小説すばる」などの書評欄を担当。「このミステリーがすごい!」大賞選考委員のほか、各種小説賞の選考にも多くかかわる。個人サイト「大森望SFページ」の日記にも文学賞ネタがたくさん!
著書多数。『ライトノベル☆めった斬り!』(太田出版/三村美衣と共著)、『読むのが怖い!』(ロッキング・オン/北上次郎との共著)、『現代SF1500冊 乱闘編 1975-1995』 『現代SF1500冊 回天編 1996-2005』(太田出版)、『特盛! SF翻訳講座』(研究社 3月12日発売予定)など。
訳書、編訳書に、コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』(早川書房)、シオドア・スタージョン『輝く断片』、『不思議のひと触れ』(河出書房新社《奇想コレクション》)など。
豊崎 由美(とよざき ゆみ)氏のプロフィール
1961年生まれ。ライター。
「GINZA」「本の雑誌」「TV Bros.」「文藝」などで書評を多数連載。岡野宏文との共著『百年の誤読』(ぴあ)の海外小説版を「ダ・ヴィンチ」で連載中。最近刊は、過激な袋綴じ付録でも話題の『そんなに読んで、どうするの?』(アスペクト)。他の著書に『それ行けトヨザキ!!』(文藝春秋)など。
池袋コミュニティ・カレッジにて書評講座「書評の愉悦 ブックレビュー読み書き講座」を開講中。
■『文学賞メッタ斬り!』(大森望 豊崎由美/PARCO出版)
笑って読める痛快文学賞ガイド。読書サイトエキサイトブックスのコンテンツ「文学賞メッタ斬り!」(2003.6/12)をベースに単行本化した。
小説を心から愛し、膨大な量の本を、多岐のジャンルにわたって読んでいる大森望氏と豊崎由美氏が、日本の主な文学賞について徹底討論。各賞の成立事情や選考過程はもちろん、選考の内幕や賞をめぐる文壇ゴシップやトラブル・けんか・騒動にも斬り込む。歴史や賞金額だけでは判断できない賞の「格」や「権威」についても、歴代受賞作を基にスバリ判定する。
「選評」をさかなに選考委員を品評する「選考委員と選評を斬る!」や、2003年から2004年の主な文学賞受賞作を100点満点で採点した「巻末特別付録 文学賞の値うち」など、ここまでやっていいの?と思える常識やぶりの企画を満載。文学賞を切り口にしたブックガイドとしても重宝。ただいま第2弾を準備中。
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