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「ゴッドファーザー」登場

昨年末に公開されたアニマルアクション巨編「キングコング」をご覧になった方は多いだろう。あれはすごいゴリラだった。図体がデカい割に、動きが速い。中の人はさぞかし大変だっただろう、って、中の人はいないのだ。あのゴリラはすべてコンピューターによって描かれたものだ。全身を覆う体毛の質感はとてもCG(コンピューターグラフィックス)とは思えないのだが。

もちろん、この映画のゲームバージョンも、映画に一月ほど先行する形で発売された。映画を観る前にゲームを遊んでしまうとネタバレ(ストーリー上の落ちが分かってしまうこと。それを避けようとする映画ファンは多い)してしまうということもあるのだが。

このような形でゲーム化される映画は、CGを多用しているものが多い。理由としては、もちろんターゲットユーザーがかぶること、そして、映画のために作られたCGデータをテレビゲームのデータとして流用できるので、ゲームの開発効率が高いということが挙げられるだろう。ワンソース・マルチユースの考え方だ。ゲーム機やパソコンの性能が上がったことにより、こうしたことが可能になった。その再現性の高さは「グーニーズ」のころとは次元が違うのだ。

映画の名作を愛するオマージュ作品が現れ始めた

こうした、映画とゲームの同時開発は、従来のメディアミックスビジネスモデルの延長線上にある。ここの最近になって別種の動きが現れ始めている。それは商売っ気よりも愛とこだわりを優先するオマージュ作品(先行する作品への敬意をあらわした作品)であり、トリビュート的な意味合いを持つものだ。

その筆頭となるタイトルが8月に発売されたばかりの「ゴッドファーザー」である。ゲームをプレイする前は、マーロン・ブランドという稀代の怪優が持つ圧倒的存在感と異常なオーラを、デジタル技術で再現するのは不可能だと思っていた。しかし、プレイして驚いた。実に見事な出来栄えである。音声は新たに録りおろしたもので、ブランド自身が吹き込んだ。ほぼ隠遁していたブランドを引っ張り出してこれたことも、愛の成せるワザであろう。そしてこのゲームが、マーロン・ブランド最後の作品となってしまった。

ゲームを起動するとおなじみのパラマウント社のロゴに続き、このゲームの発売元であるエレクトリック・アーツのロゴが映し出される。このロゴ、いつもの企業ロゴとは違うデザインを使っている。なんと「ゴッドファーザー」のタイトルロゴと同じ書体なのである。その後、日本の暴走族も大好きなあのテーマ曲が高らかに演奏されるという粋な流れだ。ここにエレクトリック・アーツの「本気」を感じ、大変な感銘を受けた。もちろんゲームの中身に文句はない。いまいちシャキッとしていなかった映画のパート3より、はるかに「ゴッドファーザー」である。

続いて「スカーフェイス」の発売が控えている。こちらにはゲーム版「ゴッドファーザー」に登場していなかったアル・パチーノがばっちりとデジタルアクターとして出演する。いやがおうにも期待の高まる一本である。

これら以外にも名作映画のゲームリバイバルは準備されている。「ゴッドファーザー」が破格の出来栄えだっただけに、後続のプレッシャーはたいへんなものがあると思うが、がんばってほしい。これが一大ジャンルとして定着すれば、相当おもしろいことになりそうだ。「時計じかけのオレンジ」、「地獄の黙示録」、「グッドフェローズ」など、魅惑のモチーフは無限にある。

また、日本の優れた文芸作品「坊っちゃん」や「人間失格」といったものをゲームとして再解釈していくことも楽しそうだ。実は、この連載を担当してきたわれわれ(飯田、麻野、米光)は本気でそれを考えていて、専用の書籍を出していたりもする。こちらについては「日本文学ふいんき語り」(双葉社刊)をご一読ください。

飯田 和敏(いいだ・かずとし)

1968年生まれ。東京生まれ千葉育ち。ゲーム制作会社アートディンクを経て独立、バウロズ代表。

「アクアノートの休日」「太陽のしっぽ」「巨人のドシン」など、「アート色」の強い作品で知られる。デジタルハリウッド大学教授。著作に『日本文学ふいんき語り』(麻野一哉・飯田和敏・米光一成/双葉社)など。ロックイベント「teen of the year」のレギュラーDJも務める。Web本の雑誌にて、鼎談企画「脳を鍛える!ゲーム化会議」連載中。

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