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ゲームをプレイすることは、映像作品を鑑賞することよりも能動的な作業が要求されるため、より濃密な「エヴァンゲリオン」体験ができる。それが、このゲームの肝だ。以下に記す衝撃体験(ネタバレ注意)によって、「エヴァンゲリオン」の世界に住みたい、ということに完璧(パーペキ)に気がついてしまった。

ゲームシステムは独特でとっつきはよくない。だが、それもいかにも「エヴァンゲリオンらしい」。ゲーム内容は主に対人関係を調整していくもので、そのために用意されたコマンド数はなんと815。その結果、生じるステイタス(心理状態)は単純な「好き/嫌い」ではない。例えば「思慕」「馴染みがある」「ウザい」「どうでもいい」など、もっと複雑なものになっている。

キャラクターが抱えるこれらのステイタスの相関関係によってシナリオの展開が変わり、原作ではありえなかった事態も起こる。例えば、プレイヤーキャラクターにシンジを選択し、アスカととても仲良くなる。すると、シンジがアスカにキスをしても、「気持ち悪い」と言われることはない。そればかりか、アスカの方から「指をからめる」ことがある。これには心底、驚いた。華麗なる天才美少女がオレにメロメロじゃないか。しかも、まるで渡辺淳一の小説のように、ねっとりと指を絡めあうなんて。脳がとろけそうだ。ちょっと妙だが、悪くない。

もちろん、アスカに慕われる喜びを感じることだけを目的に、エヴァンゲリオンの世界にいたいわけでなない。原作は、分岐して別の方向に展開する「エヴァンゲリオン」世界の可能性を示唆していた。この可能性も「エヴァンゲリオン」世界の魅力の一つである。このゲームは、この可能性をも感じることができるのだ。アスカに慕われるのは、多様な可能性の一例である。このゲームは、「エヴァンゲリオン」の根っ子を握っている。根っ子を握ることは、原作のあるテレビゲームおいて最も重要な部分だ。

ある日、パチンコ店にて

このソフトには限定版と通常版がある。限定版には『劇場版新世紀エヴァンゲリオン DEATH(TRUE)2 / AIR/まごころを、君に』の劇場版を収録したUMD(注:PSPで再生できる光ディスク)が2本同梱されているので、購入するのであればこちらをお薦めしたい。手のひらの中でエヴァンゲリオンを観ることで、テレビやスクリーンで観るのとはまったく異なる“感触”を得られる。これはかなり新鮮な体験だ。手のり「エヴァ」、それは青い文鳥のようなキュートさで絡みつき、指をついばむ。

パチンコ店の開店待ちの間、PSPで劇場版を観て過ごす。オープンしたら「CRエヴァンゲリオン・セカンドインパクト」に向かってダッシュ。目指すはもちろん「覚醒モード」。

こんな生活、心地はいいけど、逃げなきゃダメだ。

飯田 和敏(いいだ・かずとし)

1968年生まれ。東京生まれ千葉育ち。ゲーム制作会社アートディンクを経て独立、バウロズ代表。

「アクアノートの休日」「太陽のしっぽ」「巨人のドシン」など、「アート色」の強い作品で知られる。デジタルハリウッド大学教授。著作に『日本文学ふいんき語り』(麻野一哉・飯田和敏・米光一成/双葉社)など。ロックイベント「teen of the year」のレギュラーDJも務める。Web本の雑誌にて、鼎談企画「脳を鍛える!ゲーム化会議」連載中。

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