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カントリー・ロックの祖と呼ばれるグラム・パースンズって何者?

2005年4月5日
“Return To Sin City: A Tribute To Gram Parsons”
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ずっと待っていたDVDがやっと入荷した。2004年7月に行われたグラム・パースンズ・トリビュート・コンサートの模様を収めたUS盤“Return To The Sin City: A Tribute To Gram Parsons”がそれ。故パースンズの自作曲やレパートリーにしていたナンバーを、さまざまなアーティストが歌い演奏し、彼の功績を讃えるというイヴェントの記録だ。リージョン・フリーなので、みなさん見れますよ。

個人的には、反骨精神を忘れず社会的メッセージを発し続けるスティーヴ・アール、ひとり勝手に「ナッシュヴィルのパティ・スミス」と形容しているルシンダ・ウィリアムズの動く姿も嬉しいが、一般的にはノラ・ジョーンズ、そして何と言ってもキース・リチャーズの出演が一番の話題だろう。

実際、リチャーズがすごい。ジョーンズがパースンズ作の名曲‘She’を歌い終えたあと、呼び出されただけで、一気に場をさらってしまう。アコースティック・ギター(バックにテレキャスターの名手ジェイムズ・バートンやスティール・ギターのアル・パーキンズがいるので、エレキはちょっと…)を抱え、ジョーンズの肩に手を回しながらデュエット(ほとんどリード)するのが、これまた名曲でパースンズのレパートリーだった‘Love Hurts’。続いてソロでザ・バーズ時代のパースンズの代表曲‘Hickory Wind’を歌い、もう一曲、全員参加で演奏されるのが、ジャガー = リチャーズ作でパースンズに捧げられたストーンズ・ナンバー‘Wild Horses’だ。この3曲だけで、もうこのDVDは“買い”でしょう。

…と書きながら、お読みくださってるみなさんの「グラム・パースンズって誰?」という声が、すでに聞こえてますよ。今回は、そのパースンズについてです。

実を言うと、ロックを聞き始めてからしばらくの間、カントリー・ミュージック(以下、カントリーと略)を毛嫌いしていた。なんか保守的な匂いがつきまとっていたから。カントリーは白人にとってのブルースだ、とかいったことを学習するのは、ずっとあとになる。だから、パースンズとの出会いにも、感動はなかった。

ザ・バーズ「ロデオの恋人」
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インターナショナル・サブマリン・バンド「セーフ・アット・ホーム」
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ぼくがパースンズの名を初めて知ったのは、後追いでザ・バーズの1968年作品「ロデオの恋人(Sweetheart Of The Rodeo)」を手にしたときだった。脱退したデイヴィッド・クロスビーの穴を埋めるために、インターナショナル・サブマリン・バンド(ISB)をやっていたパースンズをクリス・ヒルマンが引っ張ってきたそうだが、それまで彼らのフォーク・ロック・サウンドが大好きだったぼくは、いきなりのナッシュヴィル録音、スティール・ギターやフィドル、バンジョーの響きに面食らった憶えがある。“カントリー・ロックの金字塔”と称されるこのアルバムも、当時のぼくにとっては「これってカントリーじゃん!?」ってな感じだった。もちろん、今ではとらえ方がまったく違いますが。なお、「ロデオの恋人」とISB唯一のアルバム「セーフ・アット・ホーム」は、4月20日にCD再発が予定されている。

人種差別を理由に南アへのコンサート・トゥアー同行を拒否し、わずか半年ほどでザ・バーズを脱けてしまった(なんと「ロデオの恋人」リリース前!)パースンズは、“ロックンロール・バンド編成でカントリーを演奏する”というポリシーを実現すべく、フライング・ブリトウ・ブラザーズ(以下、FBBと略)を結成する。最初のメンバーは、パースンズ(ヴォーカル/ギター/キーボード)のほか、やはりザ・バーズを脱退したクリス・ヒルマン(ギター/マンドリン/ハーモニー)、ISB時代の同僚クリス・エスリッジ(ベース)とジョン・コーニール(ドラム)、そしてスニーキー・ピート・クレイナウ(スティール・ギター)という布陣。

69年のファースト“The Gilded Palace Of Sin”も後追いで聞いたのだが、その頃にはカントリー・ロックという音楽形態が持つ意味あいも少しは理解できていたので、比較的すんなりと耳に馴染んだ。カヴァー曲にも、アリサ・フランクリンが歌った‘Do Right Woman’やジェイムズ・カーで知られる‘Dark End Of The Street’(どちらもダン・ペン作曲)といった南部産ソウル・ナンバーが選ばれており、カントリーとR&Bの近似性に着目、両者の融合を目指していたフシがある。個人的なベスト・ソングは、美しいバラード‘Hot Burrito #1’。

70年のセカンド“Burrito Deluxe”ではエスリッジが脱けたためヒルマンがベースを兼任、ギターにバーニー・レドン(のちにイーグルスへ)が加入し、ドラムもマイケル・クラーク(これまたザ・バーズ脱退組)に替わった。バンドとしてのまとまりでは、このアルバムのほうが上だと思う。ザ・バーズ時代のヨーロッパ・トゥアーでの共演、悪夢のオルタモント・コンサートへのFBB出演などでパースンズがローリング・ストーンズ(特にキース・リチャーズ)との親交を深めていたせいか、ここではストーンズの「スティッキー・フィンガーズ」に先駆けて‘Wild Horses’を取り上げている。

フライング・ブリトウ・ブラザーズ「アンソロジー」
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ここで、はたと困った。かつて上記2枚は国内盤でCD化されていたのだが、現在は入手困難。輸入盤もなし。ここはひとつ、代表曲がほとんど入った「アンソロジー」で我慢していただくしかない。

このままFBBで行くのかと思われたパースンズだが、またしてもセカンドのリリース前に脱退(リチャーズとの交遊によるご乱行がたたってクビになったという説もあり)してしまう。その後、ディレイニー&ボニー、フレッド・ニール、ザ・バーズ、ストーンズなどのレコーディングに顔を出していたパースンズは、リプリーズとの契約が成立し、ようやくソロ・アルバムをリリースすることになる。

グラム・パースンズ「GP」
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73年のファースト・ソロ「GP」は、バックの演奏も含め、素晴らしい出来となった。子供時代にエルヴィス・プレスリーのステージを見てミュージシャンを志したというパースンズにとって、このバック・ミュージシャンの選択は、まさに夢の実現だったろう。当時、プレスリーのバック・バンドの中核メンバーだったギターのジェイムズ・バートン(すごいプレイを披露)、ピアノのグレン・D・ハーディン、ドラムのロニー・タットが顔を揃え、スティール・ギターの名手バディ・エモンズとアル・パーキンズ、フィドルのつわものバイロン・バーラインまで参加しているんだから。そして特筆すべきは、ボストンのクラブで歌っているところをパースンズが発掘したという新進女性シンガー、エミルー・ハリスの存在。随所で、清楚なのに力強さも備えたデュエット/ハーモニーを聞かせている。アルバム全体としてカントリーとR&Bの融合はさらに進み、ソングライティングの腕前も向上、実にいい曲が並ぶ。スロウなナンバーが好きなぼくには、‘A Song For You’や前述の‘She’が滲みる滲みる。

グラム・パースンズ「グリーヴァス・エンジェル」
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74年のセカンド・ソロ「グリーヴァス・エンジェル」は、前作同様、バートン、ハーディン、タットを中心としたバック陣だが、ハリスの比重が増し、ほとんどデュエット・アルバムと言ってもいいくらいだ。アップ曲でもストレイトなカントリー臭は薄れ、独自のカントリー・ロック路線が完全に確立したことを物語っている。スロウ・ナンバーも‘Brass Buttons’や‘1000 Wedding’、前述の‘Love Hurts’など、名曲だらけ。ところが、このアルバムの制作が最終段階に入っていた73年9月、カリフォルニア州ヨシュア・トゥリーのモーテルで、ドラッグとアルコールの過剰摂取によりパースンズは他界してしまう。享年26。遺体が盗まれ砂漠で焼かれているのが発見される、などという不可解な騒動もあったが、あまりにも若すぎる死だったと思う。

フロリダ州ニューヘイヴン生まれのパースンズが音楽的ルーツを南部に求め再発見し、自身のアイデンティティを確認・再構築していった道のりは、けっして平坦なものではなかっただろう。しかし、彼が蒔いたカントリー・ロックという種は、90年代後半にオルタナティヴ・カントリーという花を咲かせ、現在のアメリカーナと呼ばれる音楽に結実しているのである。

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大竹 直樹

1976年から株式会社ニューミュージック・マガジン→ミュージック・マガジン勤務。月刊「ミュージック・マガジン」編集長、季刊「ノイズ」編集長、制作部長などを歴任し、2001年に退社。現在は、株式会社ディスクユニオンでロック&ポップ担当マーチャンダイザー。音楽は単なる嗜好品ではなく文化だ、という考えは絶対に譲らず、ロック半可通との会話では情け容赦ない頑固者でもある。ふだんは明るく柔和な酒好きで、元気当たり前!

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