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【不定期通信】苦節○年のレコード漁り(2)

2005年2月28日

話題が尽きない70年代後半のサザン・ロック・グループ

前回の【不定期通信】は、大学進学が決まり東京に出てくるところまででしたが、今回はその続き。

(勉学ではない面で)希望に燃え上京、最初に住んだのが世田谷区駒沢だった。四畳半一間、台所・トイレ共同、当然のごとく風呂なし。部屋代の仕送りはあったが、ここからアルバイトに明け暮れる生活が始まる。まだ田園都市線(新玉川線)など開通していなかった頃だ。

ビル清掃、新幹線ビュッフェ、レストランの喫茶部とバイトを続けながら、暇を見つけては輸入レコード店、中古レコード店、ロック喫茶を巡りました。情報源は相変わらず少なくて、「ニューミュージック・マガジン」の輸入盤紹介欄(特に小倉エージさんや北中正和さんの取り上げるアルバムがフィット)などが頼り。あとは自分でレコード店やロック喫茶に足を運ぶしかなかった。

まず行ったのは、やはり新宿。しかし。西新宿は今ほど輸入盤店が集中しておらず、価格や品揃えに不満が残ったし、ロック喫茶にしてもハード・ロック中心だったので、すぐに足を向けなくなってしまった。この頃には、プロデューサーやバック・ミュージシャン、レコーディング・スタジオなどが嗜好の判断基準という、いっぱしのアメリカン・ロック/シンガー・ソングライター・ファンになってたから。

代わって浮上したのが、バス一本で行ける渋谷。渋谷西武B館の地下1階にあったシスコはよく利用した。そして、高校時代の友人が住んでいた吉祥寺の芽瑠璃堂(めるりどう)や、原宿竹下通りにあったメロディハウス。記憶はおぼろげだが、これらの店で、名盤と呼ばれるアルバムのカットアウト盤(ジャケットに切り込みがあったり穴が空いてたりするやつですね)や、のちに名盤の仲間入りするアルバムをずいぶん手に入れた。

そんな中から、現在でもCDで手に入るものをいくつかご紹介。どの店で買ったのか憶えてないものがほとんどですが。

フィフス・アヴェニュー・バンド「フィフス・アヴェニュー・バンド」
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まずはフィフス・アヴァニュー・バンド。手持ちの同名ファーストLP(69年作)はカット盤なので完全に後追い買いだが、メンバーのピーター・ゴールウェイが結成したオハイオ・ノックス(71年作)や彼の同名ソロLP(72年作)を同時期に手に入れた記憶がある。これら3枚は萩原健太さんらが監修したワーナーミュージック・ジャパンの“名盤探検隊”シリーズで世界初CD化されていたが、フィフス・アヴェニュー・バンド以外は復刻されていないので、今回は触れません。このバンドのキー・パースンは、ゴールウェイよりもケニー・アルトマン。いかにもシンガー・ソングライター然としたゴールウェイ作品より、ジャズの要素などもふんだんに取り入れたモダンなアルトマン作品のほうに、サウンド面も含め普遍性を感じる。今でも。




ジェシ・ウィンチェスター「ジェシ・ウィンチェスター」

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ジェシ・ウィンチェスターの同名デビュー・アルバム(70年作)は、たぶん芽瑠璃堂に朝早くから並んで購入したのだが、リリースから時間が経っているにもかかわらず、カット盤ではなかった。しかもベアズヴィル盤ではなくアンペックス盤(何のことかわからない方、すいません)。シンガー・ソングライター名盤として名高い一枚で、プロデュースはザ・バンドのロビー・ロバートスンでした。


ジェシ・エド・デイヴィス“Jesse Davis/Ululu”
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ジェシ・エド・デイヴィスの同名ファースト(71年作)とセカンド“Ululu”(72年作)も思い出深い。スワンプ・ロック(米南部の湿った土臭さを音像化したもの。おもに南部録音)という言葉が浸透し始めた頃、誰が言いだしたのか“L.A.スワンプ”と呼ばれる一群が出現。デイヴィスもそのひとりだが、すでにスライド・ギタリストとして数々のセッションに参加していたので、名前とプレイには馴染んでいた。エリック・クラプトンら豪華ゲストを迎えたファーストのLPで言えばB面、そして“Ululu”のすべて…故人なだけに泣けます。この2枚は“名盤探検隊”で単独CD化されていたのだが、現在は入手困難なので2イン1の米盤CDを挙げておきます。

ジーン・クラーク“Gene Clark”
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そのデイヴィスがプロデュースしたジーン・クラークの“Gene Clark”(71年作。通称“White Light”)も忘れられない。ニュー・クリスティ・ミンストレルズ〜ザ・バーズのメンバーだったクラークが、満を持して放った畢生の名作。叙情性あふれる曲作りとヴォーカル、南部録音とはひと味違ったアーシーなサウンドが、見事なマッチングを見せます。彼もすでに故人。


ボビー・チャールズ「ボビー・チャールズ」
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ウッドストック(地名)・サウンドの代名詞と言ってもいいボビー・チャールズの同名ソロ・アルバム(72年作)も、出てすぐに買った。これはレイド・バックした和みの一枚。ファンにはたまらないウッドストック勢総出のバック・ミュージシャン、共同プロデュースがチャールズ、ザ・バンドのリック・ダンコ、そしてジョン・サイモンというクレジットを見た瞬間に、買い!でした。


ボニー・レイット「ギヴ・イット・アップ」
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ウッドストックがらみでは、ボニー・レイットのセカンド「ギヴ・イット・アップ」(72年作)も素晴らしい。彼女は今でも(英語限定)マイ・フェイヴァリット・フィーメイル・シンガーである。ギター・テクニックもすごいけど。ここでもバックはウッドストック勢総出演だが、プロデュースがマイケル・カスカーナのせいか、デイヴ・ホランドがベースを弾いてたりもする。ラストを締めくくる名曲「ラヴ・ハズ・ノー・プライド」にジ〜ン。リンダ・ロンスタットのヴァージョンより格段にいいですよ。

エリック・ジャスティン・カズ「イフ・ユアー・ロンリー」
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その曲をリビー・タイタス(現ドナルド・フェイゲン夫人である彼女のセカンド・ソロ・アルバムも素晴らしい)と共作したのがエリック・ジャスティン・カズ。彼の72年作「イフ・ユアー・ロンリー」もウッドストックがらみ、プロデュースがマイケル・カスカーナだが、これも名盤の誉れ高い。リチャード・デイヴィス(ベース)、グラディ・テイト(ドラム)ほか、ニューヨークのジャズ系ミュージシャンが大挙参加しているが、茫洋としたヴォーカルのせいか、ミョーに癒し系の仕上がりなのが嬉しい。

このほかにも、みなさんご存じのドゥービー・ブラザーズ「トゥールーズ・ストリート」(72年作)などメイジャー系の新譜や、持っていなかった60年代後期〜70年代にかけてのアルバムも買っていたので、バイト代のほとんどはレコード購入費に消えた。ふり返ってみれば、どうやって飯を食い酒も呑んでたんだろうとも思うが、深くは考えないようにしている。

この頃には「亜米利加音楽の家」と謳っていた渋谷・百軒店のロック喫茶“BYG”によく行くようになっていたのだが、ある日、バイトのヘッドハンティング(?)をされることになる。そこからまた新たなルートや面白いコネクションができていくのだが、それらは次回の【不定期通信】で。



[追記]

 今回触れなかった中にも、一度はCD化され、すぐに廃盤あるいは生産中止になってしまったアルバムは数多い。もちろん未CD化アルバムも。あらゆるものに当てはまるが、見つけたときにすぐ買っておかないと二度と手に入らなくなってしまう、という鉄則があることをお忘れなきように。何にでも一期一会がある、ということですか。

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いやぁー懐かしい。
懐かしいだけでなく、個人的には一番音楽を聴くのが楽しかった時期のものでもあるな。
アーティスト名義のCDとして手元にないのは、ジェシ・ウインチェスターとフィフス・アヴェニュー・バンドだけど、今聴いてみたいのはフィフス・アヴェニュー・バンドの方かな。

よく、この手の音楽で、AOR化を嘆く声を聞きます。でも、この手のアーティストで大成功したのは、ロッド・テイラーだと聞いています。彼はTV脚本家として成功している筈。文学青年が詩を書きメロディーの付いたアルバムを出す→世間で認められる→小説家に成る為に”ノウハウ”を知りたくて映画やTVの世界に売り込みだす。映画「サイコ」の脚本家スティーブン・レベロが作詞家出身だった事を考えると、文学青年風のアーティストが、いずれはハリウッド調に成るのも、そこらへんが原因かもしれないですね。

大竹 直樹

1976年から株式会社ニューミュージック・マガジン→ミュージック・マガジン勤務。月刊「ミュージック・マガジン」編集長、季刊「ノイズ」編集長、制作部長などを歴任し、2001年に退社。現在は、株式会社ディスクユニオンでロック&ポップ担当マーチャンダイザー。音楽は単なる嗜好品ではなく文化だ、という考えは絶対に譲らず、ロック半可通との会話では情け容赦ない頑固者でもある。ふだんは明るく柔和な酒好きで、元気当たり前!

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