保管しておいたブルーレイディスクが時間経過とともに劣化、あるいは傷がついてしまっても同様だ。大事にしていたコンテンツは二度と戻せない。
こんな薄氷を歩かせるような仕組みを抱えているものを、家電製品と呼べるのだろうか?
時間のかかるムーブの仕組みも、もし、ファイルの移動だけで可能にするなら、数分で作業は完了するだろう。ただし、これは簡単に実現させることはできない。一般のコンピュータのファイルシステムで行われているようなファイル移動の仕組みではARIB(電波産業会)の規定に反してしまうのだ。多くのOSのファイル移動は、ファイルを別の場所にコピーした後、元のファイルを削除したという印を付ける。OSに詳しい人なら、ファイルのコピーが終わった瞬間に作業を中止させたり、削除マークの付いたファイルを復元させてしまうかもしれないからだ。したがって、OSに単純にムーブの操作をまかせるわけには行かないという事情がある。
しかし、そこは工夫次第だ。外付けのハードディスク、あるいはネットワークサーバなども含めて、ある一瞬に2つと同じコピーが存在しない形でファイルを移動させる仕組みを作ることは不可能ではないだろう。たとえば、ムーブ作業が始まると、いったんソースファイルにはユーザーがアクセスできないように鍵をかけ不可視とした後で、外部メディアにコピーをする。ファイルのコピーに失敗したような場合は、この鍵を元の状態に戻すといった仕組みだ。プロテクトの強度が十分なものであることが立証されれば、ARIBの規定に準拠していることを認めさせることもできるだろう。
また、バックアップとして保管することだけはいくつでも自由にできるが、再生は正当な復元キーを保有している人、あるいは機器にしかできないという仕組みを加えることも必要だろう。富士通のハイビジョン放送がそのまま録画できるパソコン「FMV-DESKPOWER TX90L/D」にはこうした工夫が加わっている。しかし、録画を行ったパソコン本体あるいはハードディスクが壊れてしまったら、バックアップファイルは再生できなくなるという弱点がまだ残っている。
こうした工夫が一般のデジタル放送対応機器に組込まれるようになれば、使い勝手を良くする工夫がさらに広範に広げられる。たとえば、ネットワークサーバに蓄えたコンテンツも一つのライブラリとして管理できるからお好みのコンテンツをいつでも画面上のリストから呼び出せるようになるだろう。ちょうどiTunesなどで楽曲を何1000曲もアクセス可能にしているといった使い勝手がビデオの世界にも広がるだろう。
今のデジタルビデオコンテンツの管理のしかたはコンピュータがなかった何十年も前の時代に押し戻されたような感じだ。せっかく映像はデジタルで固定できるようになったのだから、もっと柔らかいデジタルライフスタイルが送れるよう、工夫を凝らしてもらいたいものだ。
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