愉悦のピアノ〜フリードリッヒ・グルダ
クラシックのコンサートというと、一般には“かしこまった”イメージが強いかも知れない。しかしそれは大いなる誤解だ。通い慣れると分かるのだけれど、最近ではずいぶんと雰囲気が変わり、本当の意味で“音楽を楽しむ時間と空間”であることが多くなってきた。これは聴衆も、そして演奏者側の意識も変わってきたことが大きいだろう。今回のお題は、終生「音楽って、こんなに楽しいんだよ。かしこまらないで愉快に聴けばいいじゃないか」という姿勢を貫いた、あるピアニストのお話である。
愉快な企画が東京で
この1月末のこと、東京でユニークな企画の、それは楽しい演奏会が催された。タイトルは「グルダを楽しく想い出す会」。2000年1月に亡くなった、ウイーン出身のピアノの巨匠、フリードリッヒ・グルダの追善演奏会だ。グルダの得意だったウオルフガング・アマデウス・モーツアルトの作品を中心に、グルダの自作も加えたプログラム。かつてグルダがそうだったように、かしこまらずに楽しく演奏し、聴衆も一体になって、会場内のみんなで愉快にグルダを想い出そう、という企画だ。どなたかが亡くなっての追悼演奏会は珍しくないが、日本のクラシック音楽界でこうした追善演奏会はあまり例がない。
ではなぜ演奏会のタイトルが「楽しく想い出す」なのか。それはグルダこそ、「かしこまったクラシック音楽の演奏会なんて、ぶち壊せ!」と主張し、楽しい演奏会を実践した張本人だったからだ。
企画の発案者は、現代ピアノ界の最高峰であるマルタ・アルゲリッチ女史。アルゲリッチ女史は13歳から1年半の間グルダにピアノを師事、常に師と仰ぎ、とても親しい友人でもあった。そのアルゲリッチ女史が、グルダの2人の息子(両方ともピアニスト)と、自らが推す若手の実力ヴァイオリニスト、そしてチェリストを独奏者として引き連れ、クリスティアン・アルミンク指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団と競演した。もちろんアルゲリッチ女史自身も独奏者として登場して。
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