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六甲の霞の中に息づく遠い歴史
数年前、神戸のゴルフ愛好家にロンドンから問い合わせがあったという。そちらに縁があるものではないかとの手紙を添え、トロフィーと一振りの旗が送られてきた。
それらは明治44年(1911年)に開かれた第5回全日本アマチュアゴルフ選手権の優勝トロフィーとKRACの旗で、優勝者EGフラッドグレイ(根岸)は依頼人の祖父だった。KRACのジュリアン・エーハート理事長がこう補足説明した。 「当時のアマチュア選手権は神戸、横浜、上海のインターポート大会の一環として行われていたようです。勝った倶楽部に相手の旗が与えられ、ですから、根岸のフラッドグレイさんが持っていた。現在も同じように行われていますよ」 トロフィーは、現存する最古のレプリカとして広野のゴルフ博物館に収められ、旗はKRACに返された。手段は変わり、時間は変わっても、遠い歴史は、六甲にかかる霞の中に息づいている。 「いろいろ調べてもわからないことはありますね。グルームさんのウイスキーのこともついにわからなかった」
そう高畑理事長はため息をついた。神戸倶楽部の各ホールにはニックネームがあり、1番ホールはグルームが愛飲していたスコッチの名前として『ダンピー(DUMPIE)』となっており、ホールインワンをした者に1ケース贈られたとの記録が残っている。八方に問い合わせても、そんなブランドはなかったという。ダンピーとは、スコットランド種の鶏の姿から、ハイランドの蒸留所で造られた「ずんぐり」したボトルの愛称である。特にダンピーボトルで知られたのが『グレンドロナック』。これだという確証はないが、1826年創業でアバディーンの蒸留所……トーマス・グラバーの故郷の酒と聞けば、そこに神戸倶楽部をめぐる鎖の輪がほんのりと浮かんでくる。
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