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Jack nicklaus 帝王の軌跡 chapter.1「私は、いまでも上手くなりたい」
第2回 自ら描いた肉体と精神の放物線
文●三田村 昌鳳
写真●宮本 卓

2005/12/16
ジャック・ニクラス2

 ニクラスにインタビューをすると、その会話の中に、ニクラスのゴルフ哲学や人間模様を垣間見ることができる。

 確か1975年の「ニクラスと中部銀次郎」の対談のときだった。”肉体(フィジカル)と精神(メンタル)“の話になったとき、中部さんが質問したのはゴルフの優勝年齢(最も優勝しやすい心身ともに充実した年齢、また優勝者の平均年齢で、その当時は32歳だった)のことだった。

「優勝年齢というのは、肉体面がピークをほんの少し過ぎていままさに落ちようとしている、そしてメンタル面はこれからピークをさらに迎えようとしている時期ではないかと思うけれど…。どう思いますか?」

 するとニクラスは「うーん。確かに一般的にはそう言えるかもしれない。でも私の場合は、少し違う」といって僕のメモ用紙とペンを貸してくれといって、自ら描いた。

 それは、ふたつのカーブだった。ちょうど台形のような山をふたつ、少しずらして描いている感じだった。まずは肉体が先に、上昇していく。人間の肉体成長線だ。それが上昇し、次に精神成長が、それに伴ってついていく。やがてそれが肉体成長線に辿り着き、ふたつはそのまま横に伸びていく。肉体成長線が精神高揚線を支えるように、2本の台形の線は描かれた。

「肉体は精神を支え、精神は肉体を支えて、高みの領域で持続していく。……でも、これもやがて、両方とも下降線を辿ることになる」

ジャック・ニクラス2

 普通の選手なら、交差するポイントが一点で、肉体はどんどん下降し、精神的な面はさらに成長していく。だから、まだまだやれるというメンタリティになる。ニクラスは、それを肉体を鍛えることで精神が、精神を鍛えることで肉体が支えられ、トップの位置を持続できると説明したのである。ここにニクラスの強さがあったのだ。

 彼は、競うことが好きなのだ。負けたくないのだ。だから「私は、プレッシャーを楽しんでいる。本当にプレッシャーの中で戦うのが楽しいんだ。競い合う気力が充実し、その場に身を置くことが気持ちよくなってくる。それができないなら、トーナメントには出たくない」と言い放った。

 そして「優勝争いをしていて、最終ホールにくると、呼吸することさえ難しいとわかるよ(笑)。しかし、実際ゲームで優勝争いの渦の中にいると、私だってプレッシャーは感じる。けれども、プレッシャーを感じることで、俄然、競争心、闘争心が沸いてくるんだ。競い合って、競り勝ちたいという気持ちが強くなる。そういう状況に身を置くことが楽しいんです」

次回「第3回 ジャンボ尾崎との対談で示したゴルフの姿勢」につづく
セカンドステージ