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トップアマチュア対談 阪田哲男VS尾家清孝 前編
ゴルフを楽しむためにはプレッシャーも必要

WG お互い競技者として、相手をどのようなプレーヤーだとご覧になっていますか?

尾家 阪田さんの強さは、やっぱり、その集中力のすごさにあると思います。一緒に回っているときに何気ない雑談をしていても、アドレスに入ると完全に外界をシャットアウトしてしまうのが分かる。打つ前には「ああ、左のOBが結構効いているねえ」なんていっておきながら、自分が打つときには目標にだけ集中しているんです。ところが、そのOBへの恐怖心だけが、残っている我々に伝染しちゃうんです(笑)。

阪田 尾家君は人がいいからか、対戦している相手に譲ってしまうところがあるよね。でも、強いときは断然差を付けて強い。僕はその点、試合に出たら最初からリードを奪わないと気が済まないタイプ。そのため、自分で自分にプレッシャーをかけているんです。何もブッちぎりで勝つ必要はない。ハナ差でもクビ差でも勝てばいいという、競馬でいえばシンザンのタイプでしょうね。

鍋島直要
1935年東京生まれ。旧肥前藩主鍋島侯爵家の現当主。慶応大学を経てアメリカのマンモス大に留学。ゴルフは11歳で始め数々の競技会で好成績を収める。JGA理事、ナショナルチーム強化委員長を歴任。倉本昌弘、湯原信光、服部道子らアマ時代に薫陶を受けたプロは数知れない。

尾家 いやいや、阪田さんは、マラソンでいったらイカンガーのタイプですよ(笑)。スタートから飛び出して、そのまま先頭でゴールインじゃないですか。

WG 尾家さんは勝負にはこだわらないタイプなんですか?

阪田 そんなわけないでしょう(笑)。

尾家 試合に出る以上、勝敗は重要です。ただ、スウィングにしても迷いのない阪田さんとは違って、試行錯誤の繰り返しなんですよ。こういう球が出せればいいなあ、と考えたら、いろんなことを練習でやってみる。それが実現できたときの喜びは、何よりも得がたいものです。それは、理論とか科学的な根拠ではなくて、純粋に感覚的なものなんですが、その感覚はゲームの中でこそ研ぎ澄まされていくんだ、というイメージですね。

中部銀次郎
1942年~2001年。享年59歳。大洋漁業の二代目・中部利三郎の三男として山口県・下関に誕生。小学校4年生でゴルフを始め、18歳で日本アマに初出場。62年の初優勝以降、78年には史上最多の日本アマ6回優勝を達成。生涯アマチュアを通した「ゴルフの神さま」として畏敬される一方、酒を愛する豪放なライフスタイルと、軽妙で含蓄深い語り口は広く慕われた。

阪田 そうなんだ。ボクの場合は「ああいう球を打ちたい」と思ったことはありませんね。あくまで自分のボールが置かれているロケーションと、自分の体力、技術に応じて、そのときできる最善のショットをイメージするだけです。どこまでも現実的なのでしょうね。

尾家 ゴルフは他の競技と違って考えている時間が長いため、より精神的なファクターが大きな比重を占めるといわれますよね。体力、技術、精神力がミックスアップしたところにゲームがある。だからこそ普段の練習の成果以上のパフォーマンスが、ゲームの中で発揮されることもあるんでしょう。

阪田 ただ、僕はここ10年ほど、普段は週に1日しかラウンドしないようにしているんです。学生時代や若い頃はそれこそ毎日練習して、休みは週に1日だけだったのとはちょうど逆さまにしているんです。コースに出るときは、ゴルフを集中して楽しめるようにするコツといってもいいでしょうね。

尾家 ホントですか。だけど、僕は飽きたことないから毎日練習してます(笑)。

阪田 僕は自分で自分にプレッシャーをかけるし、そのプレッシャーが楽しいと感じるタイプだからかな。尾家君は僕とは違う種類の集中力を発揮するタイプなんだろうね。それと、15年ほど前から「アプローチ・イップス」なのもあると思います。これで何度優勝を逃してきたか分からないくらい。特に「日本アマ」のタイトルとは無縁だった。でも、だからこそ、この歳になるまで競技者としてプレーを続けているのかもしれません。

次回「日本のゴルフ界がより成熟するためには」につづく
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