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試行錯誤の果てに…

 リー・トレビノという選手がいた。ジャック・ニクラスの全盛時代に、しばしば帝王の前に立ちはだかった名手である。ダウンスイングから右肩を積極的に飛球線方向にターンさせていく独特のスウィングで、低いフェードボールに徹してホールを次々に攻略していった。ドローボールが打てなかったわけでも、ハイボールが打てなかったわけでもない。必要に迫られれば、多彩な技を駆使し、ショットを繰り出した。ただし、それらは、ローフェードボールほどの精度の高さはなかったというだけのこと。それほどトレビノのフェードボールは天下一品だったということにもなる。

 伊沢は、日本ツアーでも、なかなか優勝争いにからめなくなった。「今は、スイング調整中だから…」というセリフにも、ちょっと言い訳がめしい響きが伝わるようになってしまった。

 試行錯誤の果てに、気づいたことがある。トーナメントであれだけ自信を持っていたフェードボールの精度が怪しくなっていたのだ。左サイドの障害は意に介さずにピンを攻められたのに、その左サイドへ曲げてしまうことがある。ドローボール用のスウィングの動きが、どこかで勝手に入り込んでくる。伊沢はいう。

 「フェードとドロー。どちらも100%をめざして、失敗した。具体的にいえば、マスターズ4位のときはフェードボールの精度は90点であったのに対してドローボールは50点ぐらいだった。ドローボールも90点以上に高めようとして、結果的には70点ぐらいのところまでいった。でも、最大の武器であったフェードボールの精度が75点ぐらいに下がってしまった。これが、最大の誤算だった」とー。

 トレビノのようにフェードボールを絶対の武器にし、いざとなれば、多彩な技を駆使できることで攻めと守りの幅を広げる。実は、マスターズ4位のときのフェードボールの精度が90点だったというなら、それをさらに100点に高めることこそが、伊沢のゴルフスタイルにふさわしかったようだ。今季は、そこに立ち戻って、スイングを修正してきた。「かなりの線までいけるようになった。結果を出せる日が近づいているという手応えもあります」と復活の予感を口にする。

 伊沢の所属は、全日空と記されている。大会ホストとして迎える全日空オープン開幕を前にしたある日、こんなことをもらした。

 「精神的にも肉体的にも一番苦しかったときに、契約を更新してくれた。スポンサードが打ち切られても仕方がないと覚悟していただけに、本当にありがたかったし、感謝しています。御礼の気持ちは、優勝することで表すしかない。だから、全日空オープンには、いつにも増して(優勝への)強い気持ちで臨む」

 あのとき(マスターズ4位)よりも、もっと精度を高めたスウィングとフェードボール完全復活。そして再び日本の頂点から世界へ。再びの飛翔のときが、近づいてきている。

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