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スイッチさえ入れば
徐々に体重も回復、飛距離も目に見えて戻ってきたと実感できたのは、6月半ば。まさに宍戸カップを目前に控えた時期だった。「それでもまだ以前の状態と比べれば80%くらいの回復度だったかな。でも、だからこそショットの飛距離よりも正確性を心がけてティグラウンドに立てた。大きなスコアが期待できない、タフなセッティングのコースであることも、自分のゴルフにとって、うまく噛み合う要因になっていたと思います」 細川はこうもいう。 「クラブとボールにマッチングがあるように、ゴルフって本当に、すべてが噛み合わせだと思うんです。長いシーズンを戦うプロには、体調を管理するトレーナーも、スウィングをチェックしてくれるコーチも、プレーするモチベーションを支えてくれる家族も必要」 細川にも多くのプレーヤーと同じようなバックアップスタッフ「チーム・カズ」がある。また、構えやすいコース、相性のいいコースというものは存在する。細川にとって宍戸ヒルズは、数ある中でその最たるコースだ。自宅から通えるくらい近くにあることも有利な条件だったし、最終日が愛妻の誕生日に当たっていた。こんな「天の配剤」はなかろう。 「あらゆる要素がうまくマッチすれば、自分でも驚くようなプレーができるんです」復活優勝を成し遂げた細川のもとには、全国に8万人ともいわれる「潰瘍性大腸炎」の難病患者の関係者から、たくさんの祝福と併せて「問い合わせ」が寄せられた。
もとより細川本人にしても投薬治療は続けているし、いつまた再発するかもしれないという不安は常に頭の隅にある。「でも、古い友だちみたいなもので、厄介な相手だけど、長い人生、うまく付き合っていくしかないと思ってます。不安だ、イヤだと考えても、何もいいことはありませんから」 05年は1年を通じて「再発」の兆候がなかった。これならやれる。また、8月にはWGC-NECインビテーショナルに出場、ケンパー・オープン以来5年ぶりでPGAツアー独特の空気と興奮に触れることができた。「ああ、この感触だなあって、意欲が湧いてくるのを感じました。体の中でカチッとスイッチが入って噛み合いえさえすれば、また最高の舞台で戦えると思いました」 そして今シーズン。細川は連続5試合予選落ちという過去に例のない最悪のシーズン・スタートとなった。だが、一度「地獄を見た男」は慌てたりしない。「ショットや調子は、そんなに悪くないんです。でも、スイッチが入るのは、待ってるだけじゃダメ。自分から動いていかないと、噛み合うものも合いませんからね」 いつかは、マスターズ。それが「チーム・カズ」の合い言葉だ。実現すれば、それはとりもなおさず、同じ難病に苦しむ患者たちに「夢」を与えることにもなるのである。「復活」の先のさらなる「飛躍」を期待したい。
ほそかわ かずひこ●1970年生まれ。茨城県出身。日本体育大学を経て、93年プロ転向。95年『KBCオーガスタ』でツアー初優勝を飾り、以来豪快なゴルフを持ち味に着実に勝利数を重ねる。01年に難病「潰瘍性大腸炎」の診断を受け、病魔と闘いながら05年『ツアー選手権』で見事復活優勝を遂げた。
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