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トラベル&ゴルフThe isle of islay
リンクスコースとシングルモルトの旅
文●武田 薫
写真●北川外志廣

2006/12/20
アイラ島
ウィスキーはアイラの命

 フェリーが着いたポート・エレンから海沿いに北に走ると、ラフロイグ、ラガブリン、アードベッグという有名な銘酒の里が、次々と白亜の壁を連ねている。

アイラ島

 ラガブリンの見学料金は一人4ポンド、ほぼ千円と安くはない。その日は18人が集まった アイラ島は雨が多く、ラックと呼ぶ湖や川が島内のあちこちに清楚な水音を響かせ、気候温暖で、もともと耕作に適した土地だったという。そのため昔から麦が獲れ、酒造りには欠かせない軟水に恵まれていたと女性ガイドが説明する。聞いているのは、酒が好きそうな父親と仕方なさそうな家族といった組み合わせである。

 「ご覧ください」とガイドの指先を追いかけて驚いた。小川の水が、澄んではいるが飴色だ。
 「この水は、ピート層で濾過されるため色が付いています。ラガブリン社はこの川の水を原料および冷却水として、週に120トン使います」
前の晩に見たバスルームの謎は、このピートの色だったのである。

 発酵から蒸留まで、約40分ほどで見た工場はまったく人気がなかった。酒を寝かせているためかと思っていたが、そういうはずもなく、わずか7人の3交代制で管理されているのだという。

 締めくくりはラウンジでの試飲会。ごゆっくりお過ごしくださいとガイドが気を利かせて立ち去れば、ラガブリン16年が飲み放題……。バーで飲めば一杯4ポンドだから、ツアー料金はリーズナブルだったのだ。

 翌日は島の中心地、ボウモアへ向かう。といっても、ボウモアは車なら1分で通過し、徒歩なら15分で回れる小さな町である。レストランが4、5軒。スーパーとミニスーパー、電気屋、観光局……。

 そのはずれにあるボウモア蒸留所はアイラ島で最も古い1779年の操業で、これまで三度女王陛下の賞を受賞し、1980年にエリザベス女王の訪問を受けた唯一の蒸留所であることを誇りとしている。

 じきじきに案内してくれた広報のイシャベリー・マクタガーさんが「ラッキーでしたね」と言った。翌日から、工場は4週間の定期操業停止に入るという。
「この時期、雨が少なく、川は減水します。減水すれば水温が高くなるため、工程に影響が出ます。この時期に合わせてメインテナンスをするわけです」

 勤続40年のエディー・マカファーさんが、網床の下でピートを燃やして香り付けを実演してくれた。ピートは火の粉を散らして燃え盛り、香りを含んだ煙が舞い上がる。もともと家庭用燃料として使われ、今も使われているとか。ピート層は限られているため、蒸留所の使用量が管理されているとも……。

 蒸留されると色は無色透明になり、ピートの香りだけ残る不思議。それが樽詰めされ、寝かされ、再び飴色の液体に変貌するのである。

 ボウモア貯蔵庫に眠る最も古い樽は1957年、売り出されるときは1本=4000ポンドの値がつくだろうという。ほぼ100万円である。

 シェリー、バーボン、ポートワイン、それぞれの樽に仕込んだモルト・ウィスキーを試飲させていただいた。ピートの香りの奥に微細な味が蠢いている。酒はこんな風に味わいたいものだ。樽が置かれている倉庫は静寂に包まれ、酒精の呼吸が聞こえるようだった。

 「壁の向こうはすぐ海です。輸送のためというより、温度を一定に保つためです。ピート、麦畑、豊富な水、温暖な海流、どれひとつ欠けても作れません。ウィスキーはアイラの命です」

 アイラモルトは、島の必然なのだ。

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