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トラベル&ゴルフThe isle of islay
リンクスコースとシングルモルトの旅
文●武田 薫
写真●北川外志廣

2006/11/29
旅の始まり

 スコットランドといえば、ゴルフ、ウィスキー、バグパイプ……耳のとがった小型犬を挙げる人もいるだろうか。イングランド、ウェールズとともにグレイト・ブリテン島を構成する、日本でいえば北海道ということになるのだろう。

 だが、サッカーやラグビーにはイングランドの他にスコットランド代表というものが存在する。かといって、オリンピックの代表は英国である。それでも、バグパイプのスカート姿は英国のイメージではない  スコットランドのアイデンティティーはいかにも強烈なのである。

 その西端にアイラ島という島があるという話を聞いたのは、銀座の『スタア・バー』でのことだった。世界カクテルコンクールで優勝した経歴を持つバーテンダーの岸 久さんは、モルトウィスキーをアイラ島で学んだという。島には老舗蒸留所だけで8つ。バーのカウンターには蒸留所の写真が広げられ、ラガブリン、ボウモア、カリラ、いずれもアイラモルトを代表する銘酒のボトルが並べられていた。

アイラ島

 琥珀色の液体が氷の襞をなぞり、やがてグラスの底に広がる。
   「……」
薬のような強い香りが立ちのぼって、遠い記憶が飛び出してきたような懐かしさに包まれた。言葉を探す客の表情には慣れているのだろう、岸さんはおもむろに写真帳を開いた。

   「これがピートです。結局、これを燃やして香りをまぶしているわけですね」
香りの元は、アイラ島に層をなすピート(=泥炭)だという。写真の中の岸さんは土くれのようなものを手に嬉しそうにポーズをとっていた。

   「小さな空港で、スチュワーデスが鍵を閉めていたのを見たよ」
   「一本道に棒が立っていたな」
   「レンタカーは自家用車でした」
居合わせた常連客は、いずれもアイラ島を訪れたことがあるらしい。岸さんとのやりとりを何気なく聞いていると、こんな話が耳に入った。
   「飛行機から、浜辺のゴルフ場が見えましたね」
モルトウィスキーの島のリンクスコース窶披€迫キはそのとき始まった。

三亜マリオット・リゾート&スパ

 スコットランドの首都は東部のエジンバラである。ゴルフ発祥の地セントアンドリュースにはこの首都から向かうのが一般的だが、アイラ島はちょうど反対側、中部のグラスゴーから1日2便ある飛行機に乗れば45分で着く。

 が、敢えて陸路を使うことにした。グラスゴーからアイラ島へ渡るフェリーの出るケンナクレイグまでおよそ200キロ。フェリーの乗船時間は2時間ほど。常連の話に加わるために、それくらいの努力は必要だろう。

 誤算は、この一帯の地形だった。スコットランド西部はラック(loch)と呼ばれる深い入り江と湖に削られて、道は狭くうねり、港に辿り着くまでに4時間近くかかった。

 最終便は午後6時。なんとか間に合ったものの、予約していなかったため、冷や汗連続のドライブになった。

 ともかくも船上の人となり、船内を観察すると、甲板にはランドクルーザーが並び、デッキでは家族連れが風に吹かれている。ラウンジのバーテンダーがゲイル訛りのきつい英語を話した。

   「バードウォッチング?」
アイラ島は南北に25マイル、東西に19マイルというから淡路島くらいの広さで、様々な野鳥が渡って来るそうだ。人口は3千人でこれといった観光名所はなく、島を訪れるのはのんびりと自転車旅行やバードウォッチングを楽しむ家族連れくらいらしい。静かな健全アイランドということである。

 ちなみに隣接するジュラ島は起伏に富んだ地形で、鹿の棲息地で知られ、人口は120人だというのだから、それは静かだろう。

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