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弘兼憲史のゴルフ&ワイン
第5回 オーガスタの地下に眠る世界の逸品の数々。
2006/11/30

 オーガスタのクラブハウスの地下室に、とんでもないワインセラーがあると聞かされたのは、何を隠そう三田村昌鳳氏からだった。1994年に私がマスターズの取材に行ったとき、まるで住人のように詳しく案内してくれたのが、三田村氏で、そのときにクラブハウスの屋根裏部屋と地下室のワインセラーの話を聞かされた。

 屋根裏部屋は、通称クロウズ・ネスト(カラスの巣)といわれているらしい。ここはマスターズ期間中、招待されたアマチュア選手が優先で宿泊できる。1泊7ドル。1番ティグラウンドまで50ヤードの距離。もちろんタイガー・ウッズもアマチュア時代はここに宿泊していたという。

 オーガスタ・グリーンというやや深緑の絨毯、そして白い壁……すべてが緑と白でうまくデザインされていて、写真を見る限り、清楚な印象があった。

 オーガスタナショナル・ゴルフクラブは、通常10月1日からオープンして、マスターズの直後、4月いっぱいか5月には、クローズする。真冬の12月、1月はプレーをしないらしいから、年間でメンバーがプレーできるのは、わずか4、5ヶ月ということになる。トーナメントが終わって夏になると、コースを改造したり、補修したりの作業に入る。毎回フェアウェイを張り替えているという話も聞いたけれど、だとするととても贅沢なコースコンディションである。メンバーの数は、300人台だというから、ほんとに限られたメンバーシップなのだ。

 9月30日……、毎年この日にオープニングセレモニーのパーティが開かれて、メンバーはユニフォームである、あの「グリーンジャケット」を着て集まってくるそうだ。

マッチ

 従って、マスターズの最終日、試合後に行われる表彰式でチャンピオンに着せるグリーンジャケットは、チャンピオンズブレザーではなく「さあ、今日から貴方も我々の名誉メンバーのひとりになりました」という意味があるという。

 さて、オーガスタのワインセラーだけれど、ここには世界の逸品が貯蔵されている。いまは他界したメンバーのひとりが、丹念に集めていて、そこには注釈があるらしい。たとえば「このワインは、2020年まで、開けてはいけない」とか、その棚に書いてある。

 メンバーたちは、オーガスタで食事をするときに、そのワインセラーの中から、注文できる。ほんとかウソか、私が実際に注文したわけでないので、その真偽は分からないけれど、食事を終えたあとの請求書には、ワインの料金は含まれていないのだという。

 それは、かのメンバーの遺言で「このワインを飲んだ請求書は、私に送って下さい」という一文があったからだという。

 きっと、これがオーガスタナショナル・ゴルフクラブというゴルフクラブの格好良さであり、粋で、なんともいえない雰囲気を醸し出している。

 ちなみに私は、クラブハウス前のテラスで食べたハンバーガーとオーガスタ名物のやや塩気の利いたクラムチャウダーが、唯一の思い出として残っている。

 クラブハウスのダイニングルームで飲む、ワインの味は、世界のゴルファーにとって見果てぬ夢なのだろうか……。

My Best Second
スロヴェニア共和国は、イタリアの右隣で、オーストリアとクロアチアに挟まれている国である。この間、赤坂のとあるレストランで勧められたのが、このスロヴェニアの白ワインだった。エディ・シムチッチのシヴィ・ピノ・リゼルヴァ。なによりもワインラベルの可愛らしさが目に付いた。
「これは女性が喜びそうなラベルでしょう」と言われて、純朴だから、それだけで嬉しくなってしまった。エディ・シムチッチという名前も聞いたことがなく、愉しみと不安が入り混じった気持ちで口にした。美味しい、と思わず叫んでしまった。その美味しさは、ラベルの愛嬌のある犬のイラストとは違って、むしろパーシモンヘッドで、インパクト時に芯を捕らえたときに感じる充実感と指先にいつまでもその感触が名残惜しそうに離れないようなものだった。優雅で、それでいてバランスよく、重みを感じて、成熟した濃密さがあるこのエディ・シムチッチは、是非、お勧めです。

 写真●張替 剛
協力●日本クリエイティブ
Tel:03−3449−5901 http://www.winex.co.jp/



弘兼憲史(ひろかね  けんし)●1947年9月9日 生まれ。
漫画家。早稲田大学法学部卒業後、松下電器の宣伝部に就職。ポスターカタログ、屋外広告等の仕事にたずさわり、28歳で『ビッグコミック増刊号』で『風薫る』を描いてデビュー。現代社会に生きる様々な大人達の生活や葛藤をテーマにした、骨太な社会派人間ドラマを描く。代表作『島耕作』シリーズ、『ハロー張りネズミ』『人間交差点』など。




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