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オーガスタのクラブハウスの地下室に、とんでもないワインセラーがあると聞かされたのは、何を隠そう三田村昌鳳氏からだった。1994年に私がマスターズの取材に行ったとき、まるで住人のように詳しく案内してくれたのが、三田村氏で、そのときにクラブハウスの屋根裏部屋と地下室のワインセラーの話を聞かされた。 屋根裏部屋は、通称クロウズ・ネスト(カラスの巣)といわれているらしい。ここはマスターズ期間中、招待されたアマチュア選手が優先で宿泊できる。1泊7ドル。1番ティグラウンドまで50ヤードの距離。もちろんタイガー・ウッズもアマチュア時代はここに宿泊していたという。 オーガスタ・グリーンというやや深緑の絨毯、そして白い壁……すべてが緑と白でうまくデザインされていて、写真を見る限り、清楚な印象があった。 オーガスタナショナル・ゴルフクラブは、通常10月1日からオープンして、マスターズの直後、4月いっぱいか5月には、クローズする。真冬の12月、1月はプレーをしないらしいから、年間でメンバーがプレーできるのは、わずか4、5ヶ月ということになる。トーナメントが終わって夏になると、コースを改造したり、補修したりの作業に入る。毎回フェアウェイを張り替えているという話も聞いたけれど、だとするととても贅沢なコースコンディションである。メンバーの数は、300人台だというから、ほんとに限られたメンバーシップなのだ。 9月30日……、毎年この日にオープニングセレモニーのパーティが開かれて、メンバーはユニフォームである、あの「グリーンジャケット」を着て集まってくるそうだ。
従って、マスターズの最終日、試合後に行われる表彰式でチャンピオンに着せるグリーンジャケットは、チャンピオンズブレザーではなく「さあ、今日から貴方も我々の名誉メンバーのひとりになりました」という意味があるという。 さて、オーガスタのワインセラーだけれど、ここには世界の逸品が貯蔵されている。いまは他界したメンバーのひとりが、丹念に集めていて、そこには注釈があるらしい。たとえば「このワインは、2020年まで、開けてはいけない」とか、その棚に書いてある。 メンバーたちは、オーガスタで食事をするときに、そのワインセラーの中から、注文できる。ほんとかウソか、私が実際に注文したわけでないので、その真偽は分からないけれど、食事を終えたあとの請求書には、ワインの料金は含まれていないのだという。 それは、かのメンバーの遺言で「このワインを飲んだ請求書は、私に送って下さい」という一文があったからだという。 きっと、これがオーガスタナショナル・ゴルフクラブというゴルフクラブの格好良さであり、粋で、なんともいえない雰囲気を醸し出している。 ちなみに私は、クラブハウス前のテラスで食べたハンバーガーとオーガスタ名物のやや塩気の利いたクラムチャウダーが、唯一の思い出として残っている。 クラブハウスのダイニングルームで飲む、ワインの味は、世界のゴルファーにとって見果てぬ夢なのだろうか……。
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