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寒い季節になると、スコットランドのリンクスコースでプレーしたときのことを思い出す。全英オープン取材の合間だったから、夏の7月だというのに、その日はどんよりと曇った1日だった。 セントアンドリュースから車で5時間ほどかけて、ターンベリーに辿り着いた。もう日が暮れようとしていた。坂を登った小高い丘のようなところに、ホテルはあった。ホテルは、横に長いエドワード朝の建物で、チェックインして案内された部屋は、そんなに大きくはないけれど、アンティーク調のインテリアは落ち着いていて、窓から眺めるコースとその先の水平線が、まさに黄昏どきの薄暗さの中で、明日のプレーに期待感を持たせてくれた。 このホテルは、1906年にオープンしたという歴史ある五つ星。大戦中は、コースは飛行場となり、ホテルは将校の宿舎だったという。ホテルのほかにロッジやコテージがあり、ゴルフ以外にもスポーツジム、プールとスパもあって、特にスパは女性の人気の的だと聞いた。
ディナーは、ホテルのメインダイニングで本格的なフレンチだった。ワインリストには、常時200種類以上のリストがあり、ナンバリングを見ると600種類近くワイナリーに保存しているようだった。ワインリストを見ると、フランス各地のワイン、そしてスペイン、ドイツ、アメリカ、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イタリア、ポルトガル、ハンガリー、チリなど世界各国のワインが揃っている。 1985年シャトー・オー・ブリオン グラン・クリュ・グラーヴが325ポンドだった記憶がある。ほかにも1982年のヴィンテージもののシャトー・ラトゥールや1988年シャトー・ペトリウスなど垂涎の逸品が揃っているのも、このホテルの格調を感じさせた。僕たちが飲んだワインは、中部イタリア、トスカーナ地方の名門アンティノリのティニャネロだった。1985年もので、しっかりした果実の風合いを凝縮した豊潤さが、いつまでも余韻を残してくれた。 翌日のゴルフは、強風だった。肌寒さと風速20メートルはあるであろう強い海風。まさにリンクスでゴルフをするにふさわしい天候だった。 スタートホールから深いブッシュにボールを失うばかりで、この先18ホールの行く手を思うと途方に暮れる始末だった。ボールを何個失ったのだろう。断崖絶壁の先端にある9番ホールから10番ホールに向かう頃には、自分のゴルフすら見失うほど。驚いたのは、ホントにホントに深いバンカーだったことだ。ただ深いだけではなく、そのバンカーに入ると、まるで地の果てに自分が追い詰められた気分になるから、不思議である。 僕たちがこのコースを訪れたのは、1994年全英オープンの会場になった数年後だった。あのニック・プライスが、17番ホールで逆転イーグルパットを沈めた映像が記憶に新しい頃で、17番グリーンで、プライスが入れたという場所から、何度もチャレンジしたけれど、結局、入ることはなかった。 もし100を切れれば、その晩はヴィンテージワインで祝杯をあげようと思っていた目論見も、数ホールであえなく玉砕し、ただひたすらにうな垂れて18番グリーンに辿り着いたことを覚えている。 ワインとスコアの味は、必ずしも結びつかない。けれども、そのワインを味わったときのことを思い起こすと、何故かそのときのスコアが浮かんでくるのである。でも、あのときのプレーは、思い出したくない……。
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