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弘兼憲史のゴルフ&ワイン
第3回 プロゴルファーのワイン道楽
2005/11/18

 ワインが美味しい、と生まれて初めて思ったのは、早稲田大学に入学した直後だった。1966年だから、いまから40年近く前のことである。田舎から出てきて生まれて初めて飲んだワインを、こんなに美味しい酒があるんだ、というのが正直な印象だった。

モントレーのもうひとつの愉しみ

 確か、あのときは、代々木上原の寮にいた頃だったか。ホームパーティでチーズフォンデュと一緒に白ワインを飲んだ記憶がある。でも、そのときのワインの名前も味も、いまではとっくに忘れてしまい、美味しかったという思い出しか残っていない。

 ワインの味わいや香りなどの違いが少し解るようになったのは、かなりあとのことである。ようやくその違いなどが理解できるようになると、また別の愉しみが増える。僕にとって、ワインは香りが4割で味わいが5割、そして残りの1割が余韻だと思っている。それを含めてワインの味わいになるのだと思っている。

 たとえば、ル・モンラッシュは、開けた瞬間に部屋中にバラの香りがして、それだけで至福の想いに耽ってしまった記憶がある。

 調べてみると、ワイン好きなプロゴルファーがいっぱいいるようだ。オーストラリアの白鮫、グレッグ・ノーマンは、ワイン好きが高じて「グレッグ・ノーマン・エステート」というワイナリーまで所有してしまったという。彼のフルボディの赤ワインは、まだ飲んだことがないが、きっとノーマンみたいにパワフルなのかも知れない。

 なかでも「マクラーレン ヴェールシラーズ リザーヴ」は評価が高いという。また「クナワラ・カベルネ・メルロ」などのラベルには、あの鮫のマークやサインがついている。

 ほかにも、アーニー・エルスが、友人のワイナリーオーナーであるジャン・エンゲルブレヒトと一緒にプロデュースした「エンゲルブレヒト エルス ヴィンヤーズ」という南アフリカのワインもある。

 ジャンボ尾崎も、ワインに凝っていて、それはそれは僕たちの手が届かないほどのヴィンテージ、幻のワインを集めている。優勝したら、とても高価なワインを飲むことが、自分に対するご褒美だと言っていた。

 ジャンボ尾崎は、僕と同じ世代で、まだシニアツアーには行かずにレギュラーツアーで頑張っているところが、いかにも僕たち世代の代表のような気がする。

 ジャンボがワインに凝り始めたのは、かれこれ20年近く前になるという。マスターズや全米オープンに挑戦している頃に、レストランで飲んだワインの味わいに興味を持ったのがきっかけだった。するとジャンボは、すぐにワインに関する本を買いあさって、徹底的に勉強したという。

 そういうひたむきな、オタク的熱心さは、ワインに限ったことではない。ゴルフでも追求するあまり「練習すればするほど、ますます悩みが増える」というほどだから、ワインに関する知識と、味わいを体に覚えこませる能力は、凄いのだと思う。

 この間、内藤雄士コーチと一緒にラウンドしながらレッスンしていただいた。そろそろ年齢のことも考えて、賢いシニアゴルフを目指したいと思っていた矢先だったので、とても参考になった。それにしても、内藤コーチのワンポイントは、すぐにショットの内容に現れる。これが一流プロを教えるコーチの真骨頂なのだろう。かといって、難しいことは言わない。僕たちレベルでも出来うることを適切に指導してくれて、見違えるようなショットが出た。

 この祝杯をしようと、帰りに銀座の「煙事(えんじ)」という美味しい燻製を出してくれるお店に出かけた。ここは居心地もよく、ワインと一緒に供される、なんとも言えない風味を醸し出す黒豚ベーコンや、牛タンはたまらなく美味しい。ゴルファーにとっても、ワインは、どんな時にどんな場所で、誰と一緒に味わうかが大切なことだと思う。

 最近、優勝が遠ざかっているから、きっと尾崎家には、いっぱいお宝が眠っていることだろうと、余計な心配をしてしまう。是非、優勝して美味しいワインを味わって欲しい。



My Best Second

ロサンゼルス在住のカメラマン・宮本卓氏に薦められて飲んだのが「ダックホーンカベルネソーヴィニヨン」だった。年の生産は、わずか2、3000ケースだと言われていて、クリントン大統領時代にホワイトハウスの晩餐会に出されたことでも有名。もともと銀行家だったダックホーン氏が1976年に設立したワイナリー。ナパの中心から車で20分ほどにあるセントへレナの町の北にある。口当たりもとてもよく滑らかで、その余韻がいつまでも続く。ジャズを聴きながら友人たちと歓談するときに、よく飲むという宮本氏の気持ちが理解できる。日本ではあまり知られていないが、ラベルには必ずダックホーン家の象徴であるダック(鴨)のイラストが描かれている。




弘兼憲史(ひろかね けんし)●1947年9月9日 生まれ。
漫画家。早稲田大学法学部卒業後、松下電器の宣伝部に就職。ポスターカタログ、屋外広告等の仕事にたずさわり、28歳で『ビッグコミック増刊号』で『風薫る』を描いてデビュー。現代社会に生きる様々な大人達の生活や葛藤をテーマにした、骨太な社会派人間ドラマを描く。代表作『島耕作』シリーズ、『ハロー張りネズミ』『人間交差点』など。




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