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弘兼憲史のゴルフ&ワイン
第2回 モントレーのもうひとつの愉しみ
2005/10/05

 初めてメジャートーナメントを見たのは、1992年の全米オープンだった。場所は、ぺブルビーチ。ゴルファー憧れのコースである。

モントレーのもうひとつの愉しみ

 サンフランシスコからレンタカーでモントレー半島まで向かう。その道すがら少し寄り道をしてスタンフォード大学を通り過ぎ、180キロほどのドライブをしてモントレー半島についた。私たちが泊まったホテルは、メディア指定の宿で、モントレーの町の先に位置するフィッシャーマンワーフだった。ちょうど半島を1周すると17マイルあることから名付けられた17マイルドライブに入って行くとぺブルビーチ、そしてスパイグラスヒル、スパニッシュベイ、ポピーヒルス、そしてサイプレスポイントとゴルフコースがある。

 有名なカーメルという小さな町は、フィッシャーマンワーフとは反対側の太平洋岸にある。驚いたのは、少し歪んだ碁盤の目のような町の道路には信号がなく、自然を中心に町が形成されていると感じたことだ。きっとこの半島で生きている主人公は、森の木々であり、草花であり、野鳥、リス、鹿という動植物なのだ。道路は、大きな木をやたら伐採して強引に道を敷くのでなく、むしろ大木に遠慮がちに迂回している。

 それでも乱開発の勢いが強くなって、ついには世界的に有名なハリウッドの俳優クリント・イーストウッドが、市長に立候補して、自然保護を訴えて当選した。そのイーストウッドが個人の資産を投じて土地を買占め、そこの自然を保護している。

 トーナメント取材中の1週間、私たちは美味しいシーフードとワインを堪能した思い出がある。

 このモントレーの近くには、カレラとモーガンのワイナリーがある。カレラは、ピノ・ノアールが有名である。このカレラが誕生したことで、カリフォルニアのピノ・ノアールの評価は、大きく変わったといわれている。いまではブルゴーニュ・ワインを凌ぐ人気とも言われている。

 モーガンは、シャルドネが有名だ。そしてシーフード料理にもよく合う。リーズナブルなプライスだし、港町のレストランで、暮れゆく海の景色を眺めながら楽しんだことが、いまでも忘れられない。ワインは、誰と、どんな風景で、どんな食事で、どんな時間を過ごしたかで、心に残る味わいがある。

 そのモーガンは、モントレー半島に行く途中の町、サリナスにある。そう、『エデンの東』の舞台になった町である。ジェームス・ディーンが主演した映画。原作は、ジョン・スタインベックだが、ここは彼の故郷でもある。彼は、しばしばカーメルを訪れている。『怒りの葡萄』でピューリツァー賞を獲り、その後『エデンの東』が生まれた。後に、従軍記者も経験し、その記事をまとめた『かつて戦争があった』という短編集は、秀逸だと思っている。

 そんなスタインベックが、こよなく愛したカーメルの町は、まさにアメリカの理想の町だなと思った。自然と共存し、他人を信用し、人生を楽しむ……そんなサンクチュアリが、ひとつ存在してもいい。



My Best Second

『シャトー・マルゴー』は、上品で繊細な淑女……男性的なラトゥールに対して、マルゴーは繊細で上品、女性的な味わいだといわれている。そのセカンドである『パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー』にセカンドというイメージは、ほど遠い。もともとボルドーのセカンドは、一級品と同じ工程でつくられ、万が一の場合に備えて隣の畑でつくったものだから、一級品と変わらない味わいがある。このシャトー・マルゴーをこよなく愛する人は世界で多い。文豪ヘミングウェイもそのひとりで、愛娘で女優だった故マーゴ・ヘミングウェイの名前は、ここからつけたことは有名である。




弘兼憲史(ひろかね けんし)●1947年9月9日 生まれ。
漫画家。早稲田大学法学部卒業後、松下電器の宣伝部に就職。ポスターカタログ、屋外広告等の仕事にたずさわり、28歳で『ビッグコミック増刊号』で『風薫る』を描いてデビュー。現代社会に生きる様々な大人達の生活や葛藤をテーマにした、骨太な社会派人間ドラマを描く。代表作『島耕作』シリーズ、『ハロー張りネズミ』『人間交差点』など。




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