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「ディザイア」まだ進化し続けるタイガー・ウッズ

 ウッズのアプローチ……。奥からだと大きなグリーンのうねり、マウンドが左にあって、そこから池に向かって厳しい下りになっている。ピンは、その池の近くで、下り傾斜の麓にあたる。直角に曲がるようなスライスライン。難しい。寄らない状況。ウッズは、サンドウエッジを手にした。一度左に低く飛び出したボールが、失速し、そのまま右に落ちていく。ボールが止まるか止まらないほどの転がりで、徐々に加速する。加速といっても、勢いがあるわけでなく惰性のまま、カップに向かっていく。惰性が弱まる。カップの淵までようやくたどり着く。淵で、一瞬、止まった。でも、次の瞬間にひと転がりして、カップに消えた。奇跡的だった。

 これを目撃した人なら誰もがウッズに勝運があり、残り2ホールで決着すると思う。ところがディマルコは、それでも食い下がった。逆に、その粘りにウッズが反応しミスを招いた。17、18番ホールと連続ボギーとし、ふたりは12アンダーで並んだ。

 プレーオフ。ウッズが勝った。その勝因は、たったひとつだったと思う。実は、プレーオフ前の18番ホールとプレーオフの第2打で、ディマルコは、同じミスを繰り返した。一度はグリーンに乗せながら、わずかに距離が足りず、スピンがかかってフェアウェイにこぼれ落としたショットだ。

 ウッズは、プレーオフ前にはミスショットでバンカーに入れた第2打を、今度は、第1打をフェアウェイ真ん中。2打をきっちりと乗せて、約3メートルにつけた。それを真ん中から入れてバーディとし、4度目の優勝を飾った。

 優勝後の記者会見で、ウッズは「クリスは、ほんとにタフな選手だ」と大きくため息をついた。そして「この勝利が僕にとって、どんなに大きな価値があるか、きっと誰も想像できないと思う。それほど価値ある勝利だ」と言った。さらにウッズは、こうつけ加えた。

 「6月の全米オープンまでに課題をクリアしたいと思っている。皆さん、ご存じのようにスイング時の問題。やるべきことが解ったので、それが完全に自分の体に染み付くまで練習します。そのためにも5月中旬までトーナメントを休む予定です」

 僕は、そのときふとジャック・ニクラスの言葉を思い浮かべた。かつて中部銀次郎さんとニクラスの対談で、中部さんが質問した答えだった。

 「あなたは、地位も名誉も実績も持っています。それでも、まだゴルフが上手くなりたいと言いましたが、なんでそんなに頑張れるんですか?」

 「うーん。それは、ディザイア(欲望)だね。もっと勝つこと、もっと偉大になること、その目標に常につき進んで行きたいという欲望。エゴともいえるかもしれない。私は、もっと上手くなりたいし、勝ちたい。だから最後に残るのはそれしかないと思う」

 ウッズにとって、楽な勝ち方ではなかった。むしろ苦しんで苦しんで、ようやく勝ち取った優勝だった。でも、ウッズはこの戦いを経験して、さらに進化するだろうなと思った。

 第2関門は、6月の全米オープンだ。年間グランドスラムという前人未到の記録に挑もうとするウッズにとって、こんな試練が、あと3回も続く。ひょっとしたら僕たちは、歴史的瞬間の一歩一歩を目撃できるかもしれない。


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