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第5回 人生を変える一打、それは神のみぞ知る領域なのか―。

 運と不運は、確かにゲームの中で存在する。それが、そのときだけで片付けられないこともある。ゴルフゲームは、ボクシングや格闘技などと違って外傷もない。残るのは心の傷なのだ。傷が見えていれば、それが回復すれば、同時に心も癒えていく。でも、傷のない痛みは、なかなか癒えない。それが、ときには致命傷となってしまうこともある。スニードは、その後「あの日の出来事は、あの日で終わったこと。もう忘れてしまった」と言っていたけれど、忘れ去ることができなかったのだと思う。

 打ったあと、カップの手前でボールが止まるか、そのまま入るか……。それは神のみぞ知る領域なのかも知れない。

あなたが打つまで、
そのボールは動かないのよ。
そして打ったあと、
あなたは、なにも出来ないのよ。

 これは、ベイブ・D・ザハリアスという女子プロゴルファーの言葉である。彼女は、高校時代にバスケットボールで全米選抜に選ばれ、ほかに水泳、ダイブ、ライフル、ボクシング、ソフトボール投手、テニス……とスポーツ万能。さらに陸上競技でもその才を発揮し、1932年ロサンゼルスのオリンピックでは、槍投げと80メートルハードルで金メダルと世界新。ハイジャンプでは銀メダルを獲得。その後、ハーモニカとダンスでショービジネスへ。さらにプロのバスケットチームに入り親善試合やフィラデルフィア・フィリーズで1イニング投げたこともある。1934年にゴルフをやり、40年代には、現在の米LPGAツアーの原型をパティ・バーグなどと創設する。48〜55年の間に、彼女は通算31勝をマークした。その中には、全米女子オープン選手権(2勝)も含まれている。

 打つ前に、もうその行く手を怖れる僕たちにとっては、なかなか到達できない心境なのかも知れないけれど、潔く、澱みなく1打と対峙する心構えは持っていたいものだ。

みたむら しょうほう●立正大学仏教学部卒業。ゴルフ週刊誌副編集長を経て、1977年フリーランスのゴルフジャーナリストとなる。国内外のトーナメント取材経験が豊富で、4大メジャーは26年連続で現地取材を続けるベテラン。95年米国でスポーツライター・ホールオブフェイム、96年第1回ジョニーウォーカー・ゴルフジャーナリスト賞優秀記事賞を受賞。主な著書に「タイガー・ウッズ—伝説の序章(青山出版社)」「伝説創生—タイガー・ウッズ神童の旅立ち(中央公論社)」など。
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