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第3回 奇策が窮策であり愚策だった、あの一打

 僕は、意を決し「刻もう」とした。池の手前に刻んで、そこから得意のロブショットでグリーンに乗せる奇策だった。第一打は成功。池の手前である。そして、ボールの落下地点に歩いていった。ボールが止まっていたのは深いラフだった。

 ボール位置に着いて、そこからふとグリーンを見上げた。なんと僕の身長178センチ以上の高さがあった。グリーン面は、今度はなにも見えなかった……。奇策は、窮策であり愚策だった。

 その話を、帰国して中部銀次郎さんにした。苦笑いをしながら、中部さんは、こう言った。

 「なんでそんなに動揺しなければいけないの? 目から入ってくる情報、耳から入ってくる情報……そういう物事に全て動揺されるから、うまくいかないんだよ。愚かな判断もしてしまうんだよ。だから常に自分の心の中にショックを吸収するショックアブソーバーを持っていないといけないわけ。グリーン面が見えないという目から入ってくる情報に翻弄されるけれど、よく考えれば、線のような細いグリーンはないわけだろ。オーガスタの12番ホールにしても、左右20〜30ヤードはあるはずだし、奥行きだって10ヤード以上あると思う。いちばん大切なのは、1打を放つ心の余裕を持って自分を信じて打つことだろ?」

 窮地静穏(きゅうちせいおん)という言葉が浮かんできたのは、中部さんにこの話をしたあとだった。窮地に立たされたときほど、心に余裕を持って周囲を見回すことこそが大切。それが勇気だと新渡戸稲造が「武士道」で書いていたが、まさにその勇気が僕には足りなかった。

 今度、こそ……。

みたむら しょうほう●立正大学仏教学部卒業。ゴルフ週刊誌副編集長を経て、1977年フリーランスのゴルフジャーナリストとなる。国内外のトーナメント取材経験が豊富で、4大メジャーは26年連続で現地取材を続けるベテラン。95年米国でスポーツライター・ホールオブフェイム、96年第1回ジョニーウォーカー・ゴルフジャーナリスト賞優秀記事賞を受賞。主な著書に「タイガー・ウッズ—伝説の序章(青山出版社)」「伝説創生—タイガー・ウッズ神童の旅立ち(中央公論社)」など。
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