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One Voice
第2回 『あるがままに打て』のもうひとつの意味
文●三田村昌鳳
写真●宮本卓

2005/11/09

 ボールがディボットの跡に入った。ちょうど目土の砂が薄っすらとかかっていて、僕のボールは、その真ん中あたりに止まっていた。それを見たとたんに「せっかくナイスショットだったのに……」と落胆する自分がいた。次の瞬間、きっと失敗するだろうと思う自分がいた。そんなときに、救いの言葉が聞こえた。

「お客さーん。6インチ動かせますよぉ」

 というキャディさんの声である。僕は、ほっと胸を撫で下ろして、それはシメタものだと思った。

 すると、そこに中部銀次郎さんがやってきた。この日は中部さんとのラウンドだった。

「そのまま打ちなよ」

 と中部さんが言った。

「え?このまま打つんですか」

 と、きっと不満げな表情で言う僕の顔があったはずだ。

「その方がいいと思うよ」と言う中部さんが、続けてこう言った。

「だって、これを打たなければ、いつディボット跡からのボールを打つ練習をするんだ?」

 と聞かれた。

「だって、ディボット跡からのショットなんて、練習場では練習できないだろ。それにもしコンペとか競技に出ることがあれば、そういうときにディボット跡に入っても、どういう球筋になるか、どういうミスをするのか、どう打てばいいのかということが解るだろ。今のうちに打っておけば、これが役立つじゃないか」

  なるほど、中部さんの言うとおりである。僕は、ディボット跡からのショットを、この日初めて打った。中部さん流に言えば、いい練習になったわけである。以来、ディボット跡に限らず、嫌な状況だなあと思う位置にボールが止まったときには、あ、これでいい練習になる、と思うようにしている。



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