we're golfers>>TOPへ
好薬 中部銀次郎
第1回身の丈に合ったゴルフをせよ
文●杉山通敬

2005/06/17
酒場ゴルファー「お助けマン」のありがたい言葉とは?

 中部銀次郎とは、彼の後半生の十五年あまりの間に少ない時で週に一回、多い時は週に数回、酒席を伴にした。トータルすれば千回近くになる。ふたりだけの時もあったが、たいてい誰かが一緒にいて、当然の成り行きでゴルフの話をした。中部は酒場のゴルファーの「お助けマン」だった。

 ある時、彼の甲南大ゴルフ部時代からの球友とともに一杯やった。球友はシングルだったが、アルコールの量が増すにつれ「嘆き節」のボルテージが上がった。

 「ホンマ、なさけないわ。最近は90を切るのがやっと、下手すると平気で100を叩きよる。この調子でいくとどこまで下手になるのか分からへん。友達のよしみで助けてくれ」

 球友はひとしきり、自分のゴルフがいかに下手になったかを具体的に告白し、中部は黙って聞いていた。ティショットが飛ばなくなった。アプローチも寄らなくなった。パットも入らなくなった。と、「嘆き節」を聞いたあと、中部は言った。

 「要するに、年齢とともに肉体は劣化するから、技術的な向上には限度がある。スイングの理想像は歳相応にあるにはあるだろうけど、それを人間の肉体で表現することはできない相談だよ」  

 「そんなら、このまま下手になるのをあきらめろ、というようなものじゃないか」

 「いや、そうじゃない。肉体のやることには限界があるけど、精神的なことには限界がない。前のホールはパーだったのに次のホールはダブルボギー。この前は90を切ったのに今日は100。肉体が急に劣化したためにそうなるんじゃない」

 「精神的に脆いからだ、と言いたいのやな。銀ベエはいつもそれや」

 「お前は『それや』で済ませちゃうから歯止めが利かなくなるんだ。18ホール、同じ精神状態でプレーをつづけてみな。腹も立てず、有頂天にもならず、常に穏やかな気持ちで……」  

 「やっぱり、銀ベエは禅宗の坊さんやな」

 そこで私は半畳を入れた。

 「まったくの話が、色即是空 空即是色。お経でも唱えなければやってられないかもね」


1ページ2ページへ次のページへ
セカンドステージ