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第3回
動き出す「プログラムCDM」
工場の運営改善も排出権に

2007年1月5日

回答者/パシフィックコンサルタンツ 水野勇史

Question

「プログラムCDM」と呼ばれるクリーン開発メカニズム(CDM)があるそうですが、どのようなCDMを指すのでしょうか。(食品・環境部)

Answer

プログラムCDMは、「設備投資を伴わなくてもよい」という点が、最大の特徴です。

CDMでは風力発電設備など、何らかの設備投資をするのが一般的ですが、プログラムCDMは、温暖化ガスの削減につながる制度(プログラム)を導入し、その普及を促進することによって、実際に温暖化ガスを削減するCDMです。

●日本が手がけるプログラムCDMの例(排出削減量は推定値)

例えば、途上国の政府が製品の高効率化を義務付けたり、企業が途上国の工場で、効率改善のための管理手法を導入するようなことが、CDMになり得るのです。

もちろん、制度を導入したことによる温暖化ガスの削減量を計測できること、そして、CDMという仕組みがなければ実施されないこと(これをCDMの「追加性」と呼ぶ)は、欠かせない条件です。

省エネ運転の指導がCDMに

こうしたCDMが可能になったのは、2004年10月、ガーナでエアコンの省エネ基準を設定するCDMが、国連に提案されたのが発端です。

省エネ基準の設定がCDMになるのかどうかを、国連のCDM理事会で3回議論しましたが結論が出ず、最終的には最高意思決定機関である京都議定書第1回締約国会議で、方針が決まりました。国連の決定からは、プログラムCDMは「単に制度を導入するだけでなく、削減効果を得るために制度の普及に努めること」と解釈できます。

元々、政府がCDMの事業者になることを想定して議論が始まったプログラムCDMですが、日本では企業が取り組む事例が増えています。

例えば、6月に日本政府が承認した出光興産のCDMは、中国のビルや産業施設などで石炭ボイラーの自動制御設備を導入するのと同時に、ボイラーのエネルギー最適化診断をしたり、従業員に対して省エネ運転を指導したりするとしています。

他にも、不特定多数の対象に向けて、薄く広く、省エネ製品を普及させるようなCDMが考えられます。

日本電機工業会が手がける中国でのCDMは、白熱灯の代わりに省エネ性能の高い電球型蛍光灯を買うとキャッシュバックするキャンペーンを実施して普及を促進します。電力消費量が抑制されて、CO2排出量が削減された分、排出権を獲得し、排出権の売却益を、キャッシュバックの原資に充てるというものです。

また、海外運輸協力協会も、バイオディーゼル燃料(BDF)の製造・販売によるCDMを、国連に提案しています。このように、日本の省エネ製品や環境技術が強みを発揮し、市場を開拓するという効果を期待できます。

ただ、不特定多数を対象とする場合に特有の難しさもあります。温暖化ガスの削減量を測定するのが難しいこと、そして、製品を売った側と使った側の双方が、排出権を請求してしまう可能性があることです。

なお、国連への審査申請の手順については、現時点では通常のCDMと同じです。

●日本企業にとってのリスクとチャンス

現時点では、国連が承認し事業化が進むプログラムCDMの事例はありませんが、国内外から、事業の「方法論」(温暖化ガスの削減手法や削減量の計測方法を示す文書)の提案が増えています。実現すれば、海外生産拠点の効率化や省エネ型製品の市場を開拓しながら、排出権も得られる仕組みになるでしょう(編集部)

日経エコロジー(2006年9月号)
日経エコロジー(2006年9月号)より

 上記の記事「京都メカニズムなど気候変動政策を読み解く 動き出す「プログラムCDM」、工場の運営改善も排出権に」は、『日経エコロジー』2006年9月号に掲載された特集です。なお、記事中に記載した内容については、『日経エコロジー』2006年9月号掲載時の内容となっております。
 『日経エコロジー』は環境経営やCSR(企業の社会的責任)推進体制の構築、ISO14000の導入・運用を担当される方々に向けた、月刊ビジネス誌です。
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