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第4回 企業の社会責任から社会の社会責任への転換

2008年10月2日

月尾 嘉男 氏

産業革命がもたらしたフィランソロピィ

世界最初の株式会社は1602年にオランダのアムステルダムに設立された、東方との貿易を業務とする連合東インド会社とされている。株主は会社に直接投資、株主は投資した金額以内の有限責任、株式の譲渡は自由、経営は複式簿記で記録、会社の方針は17人重役会という会議で決定、会社は一回の貿易のみで解散ではなく永続を前提とするなど、現在の株式会社の要件と類似する特徴を具備しているからである。

この時代、会社と利害関係にあるステークホルダーは株主のみであり、会社と雇用される船員などとは賃金の支払以上の利害関係は存在しなかった。ところが産業革命が急速に発展し、多数の会社が事業を展開するようになると、重大な社会問題が登場してきた。工場に就業するために地方から都会に集中してきた多数の人々に社会基盤の整備が対応できないという問題である。

父親がイギリスのマンチェスターで経営していた紡績工場に勤務した20代半ばのフリードリヒ・エンゲルスが、その見聞を出版した『イギリスにおける労働階級の状態』(1845)は、ブタと一緒に生活している家庭や、汚物と塵埃の悪臭が充満した住宅地域など、当時のイギリスの都市の惨状を克明に記録している。エドウィン・チャドウィックによる『イギリス労働人口の衛生状態報告』(1842)も同様である。

そこで登場したのが博愛主義(フィランソロピィ)である。スコットランドのニューラナークに紡績工場を創設したロバート・オーウェンは工場と社宅を同一敷地に建設し、イングランドのブラッドフォードに繊維工場を開業したタイタス・ソルトも工場と住宅が一体となった理想都市ソルテアを建設した。どちらも現在、世界文化遺産に登録されている立派な都市である。ここで社員もステークホルダーに昇格した。


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