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エピソード5 プリウス以来の進化を遂げたLS600h

ところで、ハイブリッド車が本当に環境に優しいのかどうか、私は多少疑問を持っている。プリウスは「自動車のスピード」というパラダイムをある程度犠牲にして成り立っているし、LS600hよりも先行して実用化したハリアーやGS450hは重量とスペースが犠牲になっている。現在のハイブリッド技術は「何かを犠牲にする」ことで成り立っているといっても過言ではない。

トヨタ内部では「重量、スペース、高速性能」などハイブリッドの課題が大きいこともわかっている。本当にハイブリッドが市民権を持つには、もう少し技術が進化する必要があるだろう。ここがハイブリッド技術の大きなハードルなのである。しかもLCA(ライフサイクルアセスメント)で評価すると、通常の自動車よりもハイブリッドのほうがCO2負荷は大きい。

それゆえに、私はハイブリッドの普及やコストを強く意識するトヨタのハイブリッド戦略に多少疑問を持っていたのである。普及を急ぐ余り進化を忘れてはならない。つまり、もっと長い目でハイブリッド技術を育てなくてはと思っていた。

その意味ではLS600hはプリウス以来、初めて大きな進化を遂げていると言える。その証拠に、LS600hはドイツのアウトバーンで時速250キロのクルージングが可能で、ハイブリッドの弱点であった高速性能は克服したようだ。しかし、残念なことにトランクルームが狭く、サムソナイトのバッグが入らない。これでは大型サルーンカーとしての機能が限定されてしまうだろう。

レクサス「LS600hL」のトランクルーム

レクサス「LS600hL」のトランクルーム

エンジンは5リッターV8が搭載され、単体で394PS/6400rpm、520Nm/4000rpmというパワー・トルクを発生する。このエンジンは吸気側に「VVT-iE」を採用し、LS460の4.6リッターV8と同じく、直噴とポート噴射を持っている。

「VVT-iE」とは「Variable Valve Timing-Intelligent system by Electric motor」の略で、トヨタが採用する世界初の電動式連続可変バルブタイミング機構だ。これだけでもメルセデスの「S550」(5.5リッターV8)と同じレベルのパフォーマンスを発揮する。

余談だが、このエンジンは秋にはレクサスISのスポーツカーモデル「ISF」にヤマハのチューニングを受けて搭載され、400PS以上のパワーでデビューするかもしれない。レクサスISFのチーフエンジニアの矢口さんはあえて「IS500]と呼ばないところに意味があると述べている。なにやら怪しげな戦略が隠されていそうだが、このモデルはBMW「M3」をライバルとしているという。

今回登場したLS600hに搭載されるハイテクV8に組み合わされるモーターは224PS/300Nm。2種類のパワープラントを足し算するとなんと「618PS/820Nm」となってしまう。このスペックは6000万円もするメルセデス・ベンツ「SLR マクラーレン」に近いスペックだ。2.3tのボディにも関わらず、0-100Km/h加速は5.5秒(日本仕様)。しかも、変速が一切なくシームレスに加速する。電気CVTのしなやかな加速感は、どんなスムースなエンジンとATでもできない芸当だ。実際、LS460と比べると分かりやすいが、はるかにトルクフルで、スムース。

しかし、LS600hのハイブリッドシステムは電気的な分配器なので、パワープラントで作られるすべての出力がタイヤに伝わるわけではない。走行中に充電にも使われるので、実際の加速感では「500~600PS、600~700Nm」のエンジンと同じだろう。

さて、LS600hの速さは充分に理解できたところで、実際の燃費はどのくらいなのか。試乗会のデータでは、アウトバーンを時速200キロ以上で常時疾走している時は4~5Km/ℓの燃費だ。ドイツのカントリー路を80~100Km/ℓで流している時は6~7Km/ℓ。2.3tを超えるボディを持っていることを考えると、立派な成績であろう。公表される欧州燃費は9.3ℓ/100Km(10.8Km/ℓ)、CO2換算では1Km走行で219gと同クラスのガソリン車よりも優れている。アメリカでは20~22mpg(9Km/ℓ前後)の燃費が公表されているが、日本の10-15モード燃費はどのくらいなのだろうか。おそらく11~12Km/ℓとなるかもしれない。

日本の正式発表は5月17日。価格はアメリカではベースモデルが1257万円(1ドル120円換算)。メルセデス・ベンツ「S550 4MATIC」、BMW「760Li」、アウディ「A8」などがライバルとなりそうだ。

次回も引き続き、LS600hについてレポートする予定だ。その走りは、私が主宰する動画サイトのビデオブログで見ることができるので、興味のある方はぜひアクセスしていただきたい。

レクサス「LS600hL」

レクサス「LS600hL」

清水 和夫(しみず・かずお)

プロフェッショナルなレースドライバーとして国内外の耐久レースで活躍する一方、自動車ジャーナリストとして活動を行っている。ドライビングを科学的に分析する能力はクルマの正確な評価にも生かされ、シャープな論評は支持者が多い。

ジャーナリストとしては国内だけでなく、海外にも活動を広げ、自動車の運動理論、安全、環境、ITSのみならず、自動車国際産業論にも精通し、多方面のメディアで執筆活動を行っている。本年10月には、日本放送出版協会より「ITS」を出版。

ボランティア活動としては、CRS普及活動を行っている「子供の安全ネットワーク・ジャパン」、「妊婦のシートベルト着用を推進する会」などの会をサポートしている。近年は、救急法(ファーストエイド)・AED(除細動器)の普及活動も行っている。


主な連載誌
『NAVI』、『ENGINE』


主な著書
 「ITSの思想」(日本放送出版協会)、「ディーゼルこそが、地球を救う-なぜ、環境先進国はディーゼルを選択するのか?」(ダイヤモンド社)、「クルマ安全学のすすめ」(日本放送出版協会)、「燃料電池とは何か-水素エネルギーが拓く新世紀」(日本放送出版協会)などがある。


著者のブログ
清水和夫の【みんカラ】ブログ「頑固一徹カズです!」
清水和夫の動画サイト「Start Your Engines」

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