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第3回 出したモノは捨てるな!——エコトイレの時代

2008年12月5日

環境問題評論家=船瀬 俊介 氏



欧州連合(EU)は温暖化危機を好機ととらえている。それを「環境産業革命」と呼ぶ。先端を行くのが北欧諸国だ。とりわけスウェーデンはエコ革命の優等生。首都ストックホルムは、バイオガス利用で欧州の先端を走っている。

バイオガス成分はメタンガス。“原料”はどこから調達するのだろう? それは、なんと下水処理場から。つまり、市民のトイレや台所から出る下水はメタン発酵プラントでメタンガスを発生させ、それを自動車燃料や家庭の台所燃料として活用しているのだ。早く言えば市民の排せつ物がエネルギーに変化している。

下水処理場とメタンガス発生プラントの合体――これなど、すぐにでも日本で採用できるはずだ。ストックホルム市民が台所でコンロに着火。青い炎が燃え上がる。本人たちが出した排せつ物が回り回ってできたもの。

市内を走るバスも将来はメタンガスタンクを積んだバイオバス。メタンガスでエンジンが回るのか? 心配になる。しかしドライバーは「操作もパワーもガソリン車と同じさ」とニヤリ。日本でもLPガスで走るタクシーをよく見かけた。メタンで走るのも同じ原理だ。同国は古いディーゼル列車を改造してバイオガスで走る列車も開発した。国有鉄道のバイオ化が進む。

近い将来、スウェーデンの公共交通の燃料源はすべてバイオガスに変わる。つまり、国民のし尿等を原料としたエネルギーが公共交通を担うのだ。

畜産業の排せつ物処理にも有効

江戸時代、長屋のくみ取り厠(かわや)から出荷されたし尿は“金肥”と呼ばれた。近在の百姓が金を払って、し尿をくみ取り、肥おけに入れて田舎に運んでいた。それは肥溜めで発酵熟成されたのち有機肥料として畑や田んぼにまかれ豊かな実りをもたらした。見事なリサイクルの妙!

スウェーデンが国家規模で進めているし尿活用は“金肥”の現代版。し尿は捨てれば汚染、生かせば燃料。メタン発酵でバイオガスにすれば貴重な燃料資源となる。

同じことは畜産現場でも言える。酪農家の悩みのタネは牛や豚の大量排せつ物。牛一頭が毎日10kg以上もふんをする。それが牧場の脇に山と積まれ悪臭を放つ。堆肥にするなり、メタン発酵槽で燃料ガスに変える。そんな当たり前の発想が働いていない。

それどころか農家の利益を守るべき農協、農水省が、これら堆肥化技術などに真っ向から反対してきた。信じられない。堆肥のような有機肥料が普及すると、商売の種である化学肥料が売れなくなるからだ。一方でふんの山を作り、一方で大量の化学肥料を購入する愚かさ!

もっと視野を大きく開かないと、世界規模のエコ革命で日本は生き残れない。


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