ビジネスイノベーターは、nikkeibp.jpビジネススタイルに変わりました。こちらをクリック。

ビジネス イノベータートップへ

ーーー
編集部からのお知らせ

ーーー
連載企画
「IT」と「環境」
まれる心、
企業生き残りの代償


境生活のススメ

塊消費動向研究所
--シニアを“生かす”
ビジネスの可能性


門「近自然学」
〜豊かさと環境の
両立は可能だ


"ビジネス基礎力"向上計画
〜ワンランク上の
プロを目指す


"会社"に頼らない生き方を探れ!

代リスクの基礎知識

「環境」を考える
(日経エコロジー)


ーーー
日経ビズテック創刊!
雑誌関連のお知らせ

ラム・ショーケース

島の眼

ーーー
今週の市場データ

ーーー
読者から
 (Reader's Opinion)

ーーー
仕事の本棚

ーーー
オフタイム・クリエーター
新ワークスタイル研究

出張、リデザイン

充実空間


ーーー
from nikkeibp.jp 倶楽部

ーーー
アーカイブ

ーーー

お問い合わせ

ビジネス イノベーター
spacer
nikkeibp.jp

コラム・ショーケース
プロフィール
これは“信用”問題だ--「地銀の次は公的金融機関、100兆円の融資と保証の実態解明を」

2003/12/04

 地方銀行大手のあしぎんファイナンシャルグループの公的資金投入などで、地方銀行の不良債権比率に注目が集まっている。確かに大手行に隠れて地銀の不良債権問題に関心が集まりにくかった点もあり、足利銀行の破綻処理で地銀の不良債権処理に本腰が入るならば歓迎すべきことだ。

 ただし、地銀の処理が進めば不良債権問題が解決するわけではない。民間銀行に隠れて政府系金融機関も不良債権を相当抱えているとみられるからだ。政府系金融機関の企業への融資額は信用保証協会の保証分も含めて100兆円に迫る。国と地方の財政赤字の合計が、GDP(国内総生産)を200兆円上回る700兆円にものぼる我が国にとって、政府系金融機関の不良債権はけっして見逃せない問題だ。

 政府系金融機関には、小泉純一郎政権の発足当時に構造改革の掛け声と共にメスが入りかけた。しかし、民間金融による貸し渋り、貸し剥がしの波及によって、政府系金融機関は必要不可欠という認識が広がり、結果として生き延びている。

三通りある公的金融の仕組み

 政府が、融資や保証などの制度で金融を行うやり方には3通りある。1つには国際協力銀行や政策投資銀行などを通じて海外への資金協力や国内プロジェクト金融などを行うもの。2つ目は中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、商工中金などの機関を通じて中小企業に融資を行うもの。最後に中小企業事業団を通じた、各地の信用保証協会による保証行為によって中小企業金融を支援するものがある。どの方法も潜在的な財政リスクを抱え始めている。

 公的金融の制度は、民間金融と競合するという視点から、非難されることが多い。たしかに低利・低率の融資や保証で民間金融の経営が圧迫される、というのは理屈としては正しい。ただし実際にそれが深刻な金融問題となっているかといえばやや疑問だ。民間が貸したい優良な融資先はお金が不要で、民間が貸したくないような融資先が公的金融を利用しているケースが多い。民間金融機関にとって公的な金融制度は、優良な貸出先を奪われるというデメリットよりも、リスク債権を抱えなくて済むメリットをもたらしている。

全事業金融の2割を公的機関が賄う

 数字を見てみよう。公的金融機関と民間の事業金融の規模は約500兆円、このうち公的金融機関を除く全国の銀行の事業貸出規模は、昨今減少を続けて約400兆円となっている。冒頭に触れたように公的金融機関の融資は約100兆円で、その内訳は国内貸出・保証の規模が約46兆円(住宅金融を除く)、信用保証制度の保証残高が約47兆円になる。

 全事業金融の20%程度が公的機関によって賄われていることになるのだが、民間金融の残高は現在でも減少中である。一方、公的金融の残高に大きな変化は見られない。この傾向が続けば、公的金融の融資比率は高まることになる。

 欧米市場を参考にすれば、融資と社債の合計残高はGDPの70〜80%が適正水準との見方が一般的だ。これを日本にも適用すると、およそ500兆円のGDPに対して事業金融の規模は350兆〜400兆円程度が適正な水準と見られる。日本の社債残高は50兆円程度なので、社債を差し引いた300兆〜350兆円くらいが妥当な融資額になる。
 
 欧米市場の常識で考えれば、現在の国内金融の残高合計500兆円は、適正規模より100兆円以上が過大となる。この額は、以下で説明するように潜在的な不良債権の予備軍とも考えられる。民間金融の不良債権処理が進んだことを考えると、公的機関が保有する債権が不良化している可能性は否定できない。

 現実に信用保証協会の保証では代位弁済率(焦げ付き)が急上昇し、保証料では賄えない状態に陥りつつある。メガバンクや地銀の破綻処理に比べれば地味な分野だが、ここでも税金での処理が始まりつつある。

リスク案件に乗り出す公的金融機関

 政府系金融機関が融資ではなく、出資形態での活動を加速させている点も懸念される。例えば、日本政策投資銀行はダイエー救済のために設立された企業再生ファンドに100億円を金銭出資したほか、再生事業への取り組みとして、他の数多くのファンドに出資している。

 出資額は総計で2500億円程度と融資規模に比べると少額だが、いずれも不況下での再生という困難なプロジェクトだけに、この投資はかなりのリスクが伴う。そのリスクを回避するだけの技量が政策投資銀にあるとは思えない。

 確かに公的金融機関は証券化を導入して、リスク分散に取り組み始めている。住宅金融公庫、商工中金に続いて、中小企業金融公庫もローン担保証券(CLO)を利用しようとしている。ただし、これらのCLOは資産効率の改善やリスク資産の分散にはほど遠い。

 中小企業への融資を束ねた証券化といっても、機関投資家に売り出す証券はリスクを極小化したものであり、発行者の手元に残る証券には、凝縮されたリスクが付着したままで、かえってリスクが高まる形になっている。彼らの証券化は本来の趣旨とは違い、単に公的金融機関でも先進的な金融技術を導入できるのだとアピールするための政治的道具に過ぎない。

 民間金融機関も、公的金融機関が証券化などに取り組めば、自らの商売のネタになるとの思いから表立って批判しないようだ。民間金融と公的金融がお互いに市場機能を歪めあい、将来的な財政負担の可能性から眼をそむけている。

 経済環境が悪化している時に、金融システムが不安定では困る。不景気な時代に、経済を底支えする機能を公的金融に求めるのは、世界的にも共通でそのすべてを否定できない。民間金融が取れないリスクを公的金融が取って代わるのは、妥当な点もある。だが、やみくもに公的資金を使うことが逆に国民にとって不経済かつ非効率な環境を作り上げてしまうリスクも付随する。

 税収を国民経済的な論理で使うことにまったく異論はないが、リスク管理機能なしに、公的機関の損失を公的資金で穴埋めするとなれば、文字通りの税金の無駄遣いである。足利銀行やりそな銀行の例のように、民間金融に対し返還される明確な根拠のないままに公的資金の注入が続いている。これが、公的金融にも同じように繰り返されるのであれば、日本の財政は間違いなく破滅へ向かう。

(倉都 康行=RPテック)

※倉都氏による過去の記事は、アーカイブにてご覧いただけます(アーカイブ「専門家の眼」へ)。


=読者からのコメント=

■全くご指摘の通りです。
総選挙で道路公団がやっと槍玉に挙がりましたが、日本という国はともかく公的部門が腐り切っていて正視に耐えません。
私はベンチャーキャピタルという金融でも比較的小さな分野で働いていますが、ここでも昔から政策投資銀行系列の公的VCと称する連中が、とても投資という名に値しないような活動をせっせと行って、我々の血税をどぶに捨ててくれています。
ところがネットバブルの崩壊で、彼らはVCだけではなかなか思い切った額を捨てられなくなったので、最近は新たにご指摘のプライベートエクイティに参入して、やみくもに量的拡大を図っています。
会社も小さくて事業基盤も確立してないベンチャー企業が垂れ流せる赤字と、水ぶくれのあげくに一度破綻したような会社の赤字では桁も違いますし、対処するためのノウハウ・スキルも全くレベルが異なります。
私はもはや役人という人種にあらゆる意味で改善は全く期待しておりません。一刻も早く止めさせて、我々の血税を取り戻さなければなりませんが、それには皆さんマスコミの力が必要です。宜しくお願いします。
おっと、金融関係といえば『都営銀行』などという究極の噴飯話もありますね。まあ私自身は都民じゃありませんから余計なことかもしれませんが、ああいうのを自殺行為というんでしょう。これ以上銀行作ってどうするつもりなんでしょうね。取りあえずここまで。
(役人大好き:45歳:民間ベンチャーキャピタル)

■ここまで解っていてスジに戻せないのは何故でしょうね。「ゆで蛙」:モラルハザードも言われて久しいし、この「債務超過時代」に倒産:減資などの商取引組織や投資家がリスクに出会う事は数えるほどです。後世に付けが廻るのは良くないとしながらも、俺は別だと保護処置(内容はいずれにしても税金投入)。海外勢と経済戦争を戦っている企業は常時風雨に曝されているのですが国内産業は「過保護」の完全社会主義の世界。ドラスティックな変革も出来ず失われた10年も何時まで続く事やら。
経済理論や企業倫理(自主性)に無関係な世界で、それが大人の理屈でまかり通る、もはや何を言ってみても無駄のようです。「大変なのだよ」と言われますが、あの口吻では当のご本人たちも緊張感は無く成っています。
(武蔵:62歳:元情報システム管理責任者)


倉都 康行

 1955年生まれ。1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行(現東京三菱銀行)に入行。資本市場部、香港、ロンドン勤務を経て、1996年に米バンカース・トラスト銀行入社。  1997年に米チェース・マンハッタン銀行に移籍してマネージング・ディレクターを務め、同時にグループのチェース証券会社取締役東京支店長も兼務。  2001年から、金融ビジネス・リサーチを主に手がけるリサーチアンドプライシングテクノロジー株式会社(RPテック)の代表を務める。中央大学大学院経済研究科客員教授。主な著書に、「金融マーケット入門」(日本経済新聞社)、「金融市場は謎だらけ」(日経BP)がある。
バックナンバー
■[2005/3/17]
・経営の情識・ICカード+生体認証には被害額を上回る投資が必要

■[2005/3/3]
・安易なトヨタ模倣が弊害を招く

■[2005/2/24]
・面白いMOTセミナー、面白くないMOTセミナー

■[2005/2/17]
・トヨタの「大政奉還」を巡る日本と韓国の温度差

■[2005/2/10]
・普遍的だが不変ではない

■[2005/1/27]
・経営の情識・長命なのは「創業者が生んだ事業」

■[2005/1/20]
・経営とITにかかわる2大ニュースを選ぶ

■[2005/1/13]
・“コンテンツ”は研ぎ澄まされなければならない

■[2004/12/7]
・私的「愚直」考

■[2004/11/22]
・経営の情識・失敗すべくして失敗する「不条理なコンピュータ」の怪

■[2004/11/16]
・私の欲しい商品はどこにある?

■[2004/11/9]
・「理論とモデルで産業の将来を予測すべき」、クリステンセン流未来予想法の要諦

■[2004/11/2]
・定説をあえて疑う

■[2004/10/26]
・「名経営者が失敗する“本当”の理由」を失敗本の著者に聞く

■[2004/10/19]
・京都の饅頭はなぜうまい

■[2004/10/12]
・「大失敗!」の著者にマーケティングの“本質”を聞く

■[2004/10/5]
・経営の情識・新聞を読み続けると「ビッグピクチャー」が見える

■[2004/9/28]
・サムスンの“実力”を見誤るな・その4

■[2004/9/21]
・サムスンの“実力”を見誤るな・その3

■[2004/9/14]
・サムスンの“実力”を見誤るな・その2

■[2004/9/7]
・サムスンの“実力”を見誤るな

■[2004/8/31]
・経営の情識・マスメディアのIT音痴に関する「傾向と対策」

■[2004/8/24]
・経営の情識・「システム分離に手間が掛かる」、生田郵政公社総裁の不思議な見解

■[2004/8/3]
・経営の情識・「エンジニアこそ本流」、7年後に分かった東京三菱銀トップの真意

■[2004/7/13]
・「技術立国の限界を超えて」

■[2004/6/29]
・経営の情識・メディアはもっと勉強せよ! システム一筋で生涯を終えたベテランの遺言

■[2004/6/22]
・中村修二氏とジャック・ウェルチ氏は相似形

■[2004/6/15]
・経営の情識・情報システム部長が経営トップになる日

■[2004/6/1]
・経営の情識・トップは病的なくらい不安感を持て!命がけで社員の話を聞いた経営者の引退の弁

■[2004/5/18]
・日本人だけがズレている?

■[2004/5/11]
・経営の情識・「全世界のCEO456人は驚くほど同じ考えだった」

■[2004/4/20]
・経営の情識・インターネットが記者に与える好影響と悪影響

■[2004/4/13]
・本当の中村修二・幕引きの弁

■[2004/3/30]
・研究者よ、論文を書くことなかれ

■[2004/3/16]
・本当の中村修二・番外編「××しただけ」の価値

■[2004/3/9]
・本当の中村修二・周りは誰も信じてくれない

■[2004/3/2]
・本当の中村修二・「初対面で彼に言ったこと」

■[2004/2/24]
・経営の情識:故・真藤恒氏からMOT(技術経営)を学ぶ

■[2004/2/17]
・経営の情識:神様の一言、「悪いようにはしない」の威力

■[2004/2/10]
・経営の情識:長老が語る「邦銀の情報システム、その栄光と悲劇」

■[2004/2/3]
・経営の情識:「ネットワークで活力ある高齢社会を」麻生総務相大いに語る

■[2004/1/27]
・理系の経営学・大学院教育の問題と解決策としてのMOT

■[2004/1/20]
・キヤノンに見る「長期ビジョンに勝機あり」

■[2003/12/22]
・経営の情識:トヨタの試験問題漏らし、3つの疑問

■[2003/12/16]
・経営の情識:国民総背番号制度を冷静に考える

■[2003/12/9]
・逮捕された武富士の武井前会長からもらったメッセージ

■[2003/12/4]
・これは“信用”問題だ--「地銀の次は公的金融機関、100兆円の融資と保証の実態解明を」

■[2003/11/25]
・当たり前のことほど難しい

■[2003/11/18]
・スピンオフ起業の勧め--大企業には“人財”がいる

■[2003/11/11]
・「絶対に××するな」は禁句

■[2003/10/28]
・老舗料亭の閉鎖とトヨタ自動車の世界戦略に見る「志の経営」

■[2003/10/21]
・理系の経営学・リーダーは“あるべきよう”を務めよ

■[2003/10/14]
・これは“信用”問題だ--「郵政民営化は選挙の本当の争点なのか」

■[2003/10/7]
・理系の経営学 “特異プロジェクト”を多数起動せよ


日経BP社 www.nikkeibp.co.jp

サービスよくあるご質問 | 記事に関するお問い合わせ
会社案内日経BP社案内 | プライバシーポリシー | 著作権・リンクについて | 広告ガイド
© 2005 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.