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情報モラルと著作権を考える
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第12回  読者の質問にお答えする(その2)

2004/04/20

 昨年11月から半年にわたって連載してきたこの「情報モラルと著作権を考える」は、今回をもって終了することとなった。読者の方には毎回多くのコメントをいただき、大変ありがたく思っている。今回は、その読者の方からのコメントにお答えし、この連載を終了したいと思う。

【コメント】

■ハードの価格性能比に準じて著作物にカネを掛けると考えれば、10万円未満のパソコンに2万円のOSと2万円のオフィスソフト、1万円のメーラ…と次々に言われて、「はい、そうですか」となる人は多数派なのだろうか。一方的なサポート打ち切りで毎年のように数万円規模の振り込み用紙を同封したカタログが届くだけの会社が多いのも、また反発を招く一因だとは思う。(LOT:39歳:官公庁)

■コンピュータソフトウエアの利用者の立場から見ると、著作権保護がされている期間はサポートを継続してほしいものだ、逆にサポートを終了するのであれば著作権を放棄してほしいものだ、との感情があります。(fusa:39歳:製造業情報システム部門)

■ソフトのサポート期間があまりにも短い。2バージョン位まではサポートするが、それ以降は保証しない。そのバージョンアップも使用者側から見れば必要でなく、従来品で十分使えるのに供給者の判断のみで、当方に選択肢が無い。(武蔵:62歳:元情報システム管理責任者)

【お答え】
 全体を通し、読者の方から最も多かった意見が、以上のような「ソフトのサポート期間が短い」というものであった。このことについては、第4回の記事でも少し触れたが、著作権の問題というよりは、企業のサービスの問題であると考える。ソフトウエアメーカー側は、企業としてのバランスを考え、現状のようなサービス期間を設定しているとは思うが、私も1ユーザーとして、皆さんの仰ることはよく分かる。

 メーカーとしては、現在のようにユーザーのパソコン環境が目まぐるしく変わっていく状況の中で、何年も先のサポートまで保証することが難しいという事情がある。ソフトを開発した時点では存在していない新しいOS、ドライブなどの周辺機器、ソフトなどとの互換性までをも予測することは事実上不可能である。

 メーカーとしては新商品を開発することで、そのような新しいものに対応できるよう努力している。この点については理解してほしい。

 しかし、多くの方がメーカーの対応に不満を感じている今の状況は、何らかの不足があるものなのであろう。それがサポート期間の延長であるのか、納得のいく十分な説明であるのかは分からないが、改善は期待できるのではないだろうか。

 私はこの連載を通じこのような意見が非常に多いということを実感させられたし、メーカーにはこの意見を伝えていくよう努力するつもりだ。そして、同時にユーザーの方々にもメーカーにどんどん意見をしてほしいと思う。このような多くのユーザーの意見で、企業がより良く変わっていくものであると私は期待している。

 なお、例えば何らかの事情により、どうしてもそのソフトを使用する必要があり、すべての手を尽くしてもそのソフトが手に入らないといった状況で違法コピーを行ったとするなら、そのユーザーに対して、メーカーが権利行使をするとは私には思えない。

 しかし、前にも述べたように、サービスと著作権は別の問題であり、だからといって著作権を侵害してよいということではないのである。

【コメント】

■倫理にかかわらず、すべての情報は、それを得ようとする個人の欲求に依存しています。子供たちに対して云々しようとするならば、それこそインターネットのシステムに映倫ならぬ“18歳以下倫理フィルター”でも設けるしかないでしょうね。(hiyoko:56歳)

【お答え】
 コンピュータや携帯電話など、だれにでもインターネットが身近となった現代では、子供たちをどうやって有害情報から守るのか、ということが大きな課題となっている。

 ご指摘の通り、フィルターのようなものを設け、技術的にそれを規制する方法も一つあると思うが、技術は必ず技術で乗り越えられてしまうものであり、技術だけに頼るのではなく、やはりモラルの育成、教育が重要であるだろう。

 子供たちへの教育の一環としてACCSでは今月、中学・高校生を対象とした「情報モラルハンドブック3 インターネット・携帯時代の危険な遊び」を発行した。このハンドブックは、中学・高校生がインターネットや携帯電話を利用した事件にどのように巻き込まれていくのか、その典型例をまとめ、考えるきっかけをつくろうとするものである。

 その他、毎年行っている学校での出張授業にも今年は今まで以上に力を入れ、より多くの子供たちに、著作権や情報モラルの理解を得てもらうよう、努力していきたいと考えている。

【コメント】

■まずは、親である大人たちへの教育が必要かもしれません。著作物に対する制作者の仕事をまるで評価することができない人たちに、いかに著作権に関する意識を教えていくかです。(テック2)

【お答え】
 ご意見には全く同感である。ACCSではこれまで、企業向け、教育者向け、子供向け、と大きく分けて三つのセミナーや講演を行ってきた。今年から、親・保護者向けのセミナーも企画している。

 現在、コンピュータや携帯電話といった新しいツールに子供たちだけが詳しくなり、親はどのようなことに気を付けさせなければならないのか、想像さえもできないという話を聞くことがある。

 「モラル教育」という根本的な部分については、インターネットの世界でも現実の世界でも基本的には同じであると思うが、実際の事件・事例や、情報モラルについての知識を持つことで、保護者の方々が子供たちと共に、これらの問題について考えるきっかけを持つことができるのではと期待している。

【コメント】

■個人が(Webなどで)利用するためには「新聞などのメディアに広告を掲載するなど、すべての手を尽くし連絡を取る努力をする」という解釈は阻害要因でしかなく思えます。(0ffice:40歳)

【お答え】
 これは、第8回の「よりスムーズな著作権の利用許諾を目指して」に対していただいた意見である。利用したい著作物の著作権者と相当の努力を払っても連絡することができない場合に、著作権法では第67条に「裁定」という制度を設けており、文化庁長官がその利用を認めることがある。

 その「相当の努力」の解釈が、上記のようなものであると言われているのだが、これはあくまで解釈の問題であり、多くの利用者がそれを「阻害要因」と考えるならば、これは変わっていくものであると考える。

 ただ、裁定制度とは、文化庁が強制的にだれかの著作物の使用を許可するものであるという性質上、この制度を利用する際のハードルを高く設定せざるを得ないという点は理解していただきたい。

【コメント】

■権利を守ろうという議論もよいのですが、「どんな権利関係が、人間の知をもっとも加速させるのか?」、「権利関係が今のような方向に進むことで、かえって知が痩せていくことはないのか?」という問いを考える人が少ないことの問題点をすごく感じます。(paco)

【お答え】
 権利の保護が強化されていることを懸念している意見であると思うが、私は権利の保護強化が、著作物の利用を制限し、「知が痩せる」結果となることはないと考えている。

 例えばアメリカで、映画の著作物の保護期間が延長されるたびに、「著作物の利用が制限される」という反論があるが、実際に保護期間が延びたことで我々がその映画を見られなくなった、というような事実は、今まで私の知る限りでは、ない。

 逆に、権利を弱めて著作物の利用を自由にすることは、人々が著作物を制作する意欲を失わせ、コンテンツビジネスの成長を阻害することにつながるのではないだろうか。

 ただし、ハンディキャップのある人などが著作物にアクセスできなくなるなど、アクセスする機会が不平等になるといった状況があれば、制限規定を拡げていくべきであるとは考えている。

 「いやだ」という人に強制的にその著作物の利用を許諾させることはよくない。また逆に、「積極的に利用してほしい」という人は、その意思表示を明確にすべきである。これまでは後者の、自由利用を認める意思表示についてはあまり積極的なアピール方はなかったように思うが、文化庁では、その意思表示のための「自由利用マーク」を設定し、その普及に努めている

 権利の主張とは、何もその保護だけに限ったものではなく、その利用を許諾することも含まれているのである。

最後に

 全12回の連載を通じ、多くの方から多くのコメントをいただき、多くの方が、著作権やそれにかかわる問題を一緒に考えてくれたことに感謝している。いただいたコメントは、これからのACCSの活動に反映させていきたいと思う。

 半年間ご愛読、ありがとうございました。

(久保田 裕=社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事・事務局長)

=読者からのコメント=

■著者の立場が、著作権を守るのが仕事なので当然無理だと思いますが、著作権(知的財産)は人類の利益をはかるために存在するという立場での議論もあっていいと思います。私は、現状は権利の乱用になっている、と思っていますが、、、
(s:45歳:開発)

■「私はこの連載を通じこのような意見が非常に多いということを実感させられたし、メーカーにはこの意見を伝えていくよう努力するつもりだ」とあるが、じゃあ、ACCSはユーザーに対して実効性のある対応を取れない、ということになりはしないか?

 有象無象のメーカーが、素直にいうことなど聞かないのは百も承知であるが、あまりにも素直にコメントしすぎるのは脇が甘いのではないか?

 それ以前に、仮にACCSが、今までこういうユーザーの意見に目が向いていなかったとするならば、それは組織としてかなり深刻な問題を内包しているように思われます、社会保険の論議における社会保険庁や未納兄弟のように。
(匿名)


久保田 裕

社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事・事務局長。
1956年東京生まれ。1988年からデジタルコンテンツの著作権保護活動に参加。1991年、社団法人化とともに事務局長に就任、1999年より専務理事。
デジタルコンテンツの著作権保護活動のパイオニアとして、著作権や情報モラル問題について、学校、企業、自治体などで年間50回ほどの講演を行う。
文化審議会著作権分科会小委員会専門委員のほか、文化庁の「権利の執行に関する協力事業協力者会議」委員など。
趣味はラグビー、少年ラグビーチームのコーチをつとめるほかクラブハウスでも活躍。
著書は『知っておきたい情報モラルQ&A』(共著 2002年3月 岩波書店)、『インターネット時代の著作権とプライバシー』(1998年9月 アルファベータ)、『知らないではすまされない!ソフトの違法コピー!』(1998年12月 日本法令)、『ソフトウェア法務の上手な対処法』(平成1995年7年 民事法研究会:分担執筆)ほか多数。
バックナンバー
■第12回[2004/4/20]
・読者の質問にお答えする(その2)

■第11回[2004/4/6]
・活気あるコンテンツ流通の土台作りを目指す

■第10回[2004/3/16]
・ファイル交換ソフトを巡る諸問題

■第9回[2004/3/2]
・個人情報流出事件とその経緯

■第8回[2004/2/17]
・よりスムーズな著作物の利用許諾を目指して

■第7回[2004/2/3]
・著作権保護に向け本格的に動き出す中国

■第6回[2004/1/20]
・ネット上での著作権侵害に対処する

■第5回[2004/1/6]
・『e-Educationと情報モラルを考えるシンポジウム』開催

■第4回[2003/12/16]
・読者の質問にお答えする

■第3回[2003/12/2]
・著作権を巡る最近の動き

■第2回[2003/11/18]
・大学を舞台にソフト/情報管理モデルを試行する

■第1回[2003/11/4]
・著作権ビジネス支援全般を視野に活動


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