このところ栃木のラーメンが面白い。栃木と聞いて「ラーメン」がピンとくる人は少ないと思うが、なぜか今、栃木なのだ。最近、大阪や名古屋など大都市でラーメンが活発になってきているのはよく聞く話なのだが、決して大都市とは言えない栃木が盛り上がってきている。なぜ盛り上がっているのか? そこを解剖していきたい。
なぜ、栃木なのか?
まず栃木を語る上で欠かせないのは、佐野という御当地の存在であろう。佐野ラーメンの特徴は青竹打ちを行った加水率の高い太麺。かつては御当地ラーメンとしてはどちらかというとマイナーな存在であったが、ラーメンブームと地元佐野ラーメン会の努力で一般にも浸透し、全国的にも知られる存在となった。休みの日になれば遠くから足を伸ばしてきた人たちによって、多くの店が行列を作るようになっている。
しかし、その中身であるラーメン自体が進歩しているのかというと決してそうは言えない。多くの御当地によく見られるようにその御当地の味に縛られ、新たな味を模索することができずにいるのだ。
そのことは、味を守るという点で決して全否定すべきことではないが、少しでも良い物を作ろうとする動きは大切であろう。そういう点から見ると佐野の有名店には人気に胡坐(あぐら)をかき、コシのない麺を化学調味料や胡椒の味が強すぎるスープで食べさせる店が意外に多い。
しっかりと作った佐野の麺は全国の他の御当地と比べても間違いなくトップレベルにあると思うので、その長所を壊さぬよう奮起を促したいところ。比較的新しい店である「Ra」、「一の蔵」、「木挽亭」辺りが伸びてくれば佐野を変える存在になるのではないかと期待している。
震源地は「佐野」にあらず
ここまで読んでいただくとわかるであろうが、栃木ラーメンの盛り上がりの中心地はご当地である佐野ではない。主に県庁所在地である宇都宮とその周辺になる。実はもともと美味しいラーメン店の多い宇都宮近辺が非常に活発になってきたのだ。
まずその一つのきっかけとなったのが2002年に開店した「つるや」。力強い自家製麺と大量の材料から時間をかけて取った濃厚なスープで全国に名乗りを上げた。
このお店の出現は県内の他の店へ影響を与えた。実際に「つるや」を食べて衝撃を受け、スープの取り方を変えたという有名店の話も耳に入ってきている。その土地のラーメンを変えるのは、何よりも強烈な個性を持ったたった1軒のラーメン店であることが非常に多いのである。
そして、この「つるや」もそうだが、20〜30代という比較的若い年齢層の人たちが開いたお店が急増してきている。これらの店主は新しい味を生み出そうという意欲に燃え、経験は浅いが逆にそれに縛られない感性でラーメンを作っており、ひいてはラーメン全体を活発にしてくれている。
有名店もけん引
盛り上げているのは新店ばかりではない。ラーメン博物館が主催したラーメン登竜門で準優勝した「どる屋」の落合氏が宇都宮の他の店主を集め、スローフード研究会を立ち上げる。その少し後には宇都宮でいちばんの有名店である「花の季」やら「麺屋」が中心となり宇都宮ラーメン会を立ち上げる。
そこらにありがちな、ただの馴れ合いとなってしまっているラーメンの会とは違い、この二つはラーメン店同士の情報、研究などを披露しあい、それぞれに見事な成果を挙げているように思う。
ほかにも、栃木のラーメンの面白さは、八王子近辺でしかほとんど見られない八王子系のお店が突然あったり、最近やっと都内にも初進出した新潟・燕三条系のお店がその直後には栃木にもできたりと、他では見られない系統のお店が進出してもいる。
これもいろんなラーメンを受け入れる土壌があるということか。今後、栃木ラーメンがどのように進化していくか楽しみである。
(小林 孝充)
■つるや
栃木県下都賀郡壬生町本丸2−1657
0282−83−0609
11:30〜14:00 18:00〜21:00
月曜休
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