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ラーメンは文化だ!
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二郎インスパイア系の出現

2004/02/17

 今まで全国のラーメン屋をたくさん食べ歩いてきて、初めて会う人に良く聞かれる事は「一番美味しいお店ってどこ?」。この質問には毎回答えに窮してしまう。一つに絞るにはあまりにもたくさんのお店と味があるからだ。

 しかし「もっとも熱狂的愛好者が多い店は?」という質問であれば答えるのはごく簡単。「ラーメン二郎」と自信を持って答える事ができる。

 そのボリュームと破壊力、圧倒的な個性で食べたものを虜にする二郎。その魅力にハマり、常習者となった人は「ジロリアン」と呼ばれる。そしてジロリアンはこう言う「二郎はラーメンではない。二郎という食べ物なのだ」と。

 二郎に特化したHPは確認できるだけでも10前後あり、「ラーメン 二郎」で検索をかけると1万5000件近くヒットする。もちろんそのうちには関係ないものもヒットしているが、軽く確認したところ確実に9割以上がまさしく二郎に関するものだった。こんなラーメン屋は二郎を除いて他には考えられない。興味のある方は検索してちょっとのぞいてみれば二郎に対してそれぞれがいかに愛情を持っているかわかるはず。

 そして二郎の味に魅せられた人達が二郎で修行してさらにお店を増やして行き、今では28店舗(2004年1月現在)。関連店を入れるとなんと50店舗近くにもなっている。それでいてそのほとんどの店が行列店となっている事も驚きである。

 最近、二郎に新しい動きが出てきた。いや、二郎の周りでという方が正しいか。二郎とはもともと関係のないお店で二郎風のラーメンを出すようになってきたのである。

 つい数年前に、青葉の味に感銘を受けて青葉の味を目指したラーメン店を指す意味で「青葉インスパイア系」という言葉が流行ったが、それではこれは「二郎インスパイア系」という事になるのか(英語の文法として合っているかどうかはひとまず置いておく)。

 そんな二郎インスパイア系の中で、私がパイオニア的な位置付けと考えているのは松陰神社前の駅近くにある「辰屋」である。二郎の愛好者はあまりにも熱狂的であり、中途半端なラーメンでは、それらジロリアンから受け入れられず、それどころか逆に強烈なバッシングを食らってしまう。

 しかし、ここは二郎にも負けない極太麺、二郎で鍛えられた胃袋を満足させる麺と野菜の豪快な盛りつけ、二郎といえばの刻みニンニク。そしてここでは最後に豪快に鰹節の荒削りを上から乗せ、二郎の脂とはまた違う方向性へワイルドさを見事演出している。

 これらによって辰屋のラーメンはジロリアンをも納得させた。この辰屋の成功により二郎インスパイア系という流れをジロリアンに認めさせたと言ってしまっても良いのではないかと思う。事実この辰屋の成功辺りから二郎インスパイアのお店が続々と出現しだしたのである。ちなみにこの辰屋ではノーマルのラーメンも置いてあるが、二郎系の味を食べたい場合は辰醤油など「辰」で始まるメニューをたのんで欲しい。

 一風変わった二郎風のラーメンを出しているのは小金井街道にある「中家(あたりや)」だ。こちらの店は太麺に豚骨醤油といういわゆる横浜を発祥とする家系に分類されるお店。しかしこちらの店主が二郎好き(正確には二郎系である「生郎」好き)であったために、「アタリ麺」なる二郎風のメニューが存在している。

 見た目は山状に盛られた野菜によって完全に二郎。しかし食べてみるとスープは家系のそれ。麺は太麺ながら食感がやはり家系のもの。しかし添えられた刻みニンニクの香りによりどこか二郎っぽい。二郎を食べているのか家系を食べているのかだんだんわからなくなっていく。まさに二郎ではありえなかった中家オリジナル二郎風ラーメン。

 しかし残念ながら最近この二郎好き店主がお店を辞めてしまい、アタリ麺も食べられなくなってしまっているらしい。この店主がいずれどこかでまた独創的な二郎風ラーメンを作ってくれる事を期待したい。

鬼麺王醤油バージョン
 そして、二郎インスパイア系の中でも変り種中の変り種が志木にある「鬼火山」で出している限定メニュー「鬼麺王」である。なんとこちらの女性店主、二郎を食べた事がないというのだ。もうすでにその時点で二郎インスパイア系という言葉を使って良いものかどうかかなり疑問である。

 もともと限定で極太麺を使用していたのだが、常連がその麺を使って二郎風のラーメンを作ってくれとお願いしたのが最初らしい。そして二郎を本で見たりどんなラーメンか伝え聞いてイメージのみで作り上げたのが鬼麺王なのである。

 これまた見た目はしっかりと二郎している。麺はかなりの極太。ただし食感は二郎というよりもどこかうどんっぽい。そして一番の特徴はスープが牛骨であるということ。脂はほとんどないスープだが、牛骨独特のクセがしっかりと味にインパクトを与えている。

 それ以外のパーツも二郎とはまた違ったしっかりしたもので、ある意味で二郎より完成度が高く、かつ美味しいといえるかもしれない。まぁ、二郎そのものが完成度なんてものを語るのはナンセンスでしかない食べ物なのだが。最近は気まぐれで鬼麺王のいろんなバリエーションをやっている時があるとのことなので、是非通ってそれらも食べてみたいところ。

 じわじわと増え続ける二郎インスパイア系。茨城にも飛び火したという情報も入ってきている。ここで挙げさせていただいた3軒だけでも既にまったく違う個性を持った二郎風ラーメンになっているので、今後またどんな独創的なラーメンが生まれてくるのかと考えると新たな二郎風ラーメンの出現が楽しみでしょうがない。

(小林 孝充)

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小林 孝充

小林 孝充 1974年生まれ。栃木県出身。TVチャンピオン第7代の現ラーメン王(第8回ラーメン王選手権優勝)。学生時代に新横浜ラーメン博物館の一風堂を食べて開眼、社会人になると本格的に食べ歩きを開始する。年間1000杯以上食べるという強者。ラーメンサイト「こば’ず ほ〜むぺ〜じ」を主宰。「茨城のうまいラーメン」本制作に携わるなど、執筆活動にもいそしんでいる。『茨城のうまいラーメン』製作&執筆、週刊現代ラーメン本発売日制覇などを行い、TVチャンピオン第8回ラーメン王選手権では見事優勝。現在のラーメン王となっている。得意エリアは関東全域で、苦手なエリアがないのが特徴。ここ数年で着々と全国を制覇しつつある。ラーメン以外のサイドメニューまで押さえているのも特徴で、自身のHPではラーメン屋のサイドメニュー用の会議室も提供している。登場誌:茨城のうまいラーメン1&2、これが群馬のうまいラーメン、つくば食事典、東京一週間、横浜Walker、関西Walker、新潟こまち、週刊現代、週刊ポスト、GetNavi、Gainer、オリコンウィークリー他。「TVチャンピオンラーメン王 小林孝充が選んだ栃木のおいしいラーメン63」という本を下野新聞社から出版。はんつ遠藤氏、山本氏との3名共同開発でカップ麺「ぶっちぬき」を明星食品から発売。
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■[2004/1/27]
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