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ラーメンは文化だ!
プロフィール
2大国民食の狭間に:カレーラーメン

2004/02/03

 カレーラーメンという食べ物がある。といっても、多くの人は、ラーメン店のメニューかどうか疑うかも知れない。カレーもラーメンも日本人が大好きな国民食とも言える食べ物である。しかし、それを結びつけたカレーラーメンとなると、ほとんど認知されていないのではないか。

 おそらく、一番有名なカレーラーメンは、カップヌードルのカレー味であろう。ラーメン店でカレーラーメンを食べたことのある人は、少ないと思う。

 ラーメン店でカレーもメニューに載せていて、なかなか人気がある店も少なくない。たとえば、蓮沼の「インディアン」は、塩味の支那そばとカレーをセットで食べさせる。あっさりしたラーメンと対照的なスパイシーなカレーが見事に調和している。

 川越街道の「龍神」という店は、ラーメンもさることながら、本格的なタイ風カレーが美味しく、それを目当てで来る客もいる。他にもサイドメニューのカレー丼がびっくりするくらい美味しくて、それを食べに店を再訪するような場合もある。カレーを作るときにもラーメンのスープを使うので、カレー店とは一味違うコクのあるカレーができるという話も聞いたことがある。

 しかし、カレーラーメンとなると、まだまだ出している店は多くない。少なくともメインメニューに掲げている店は、非常に少ない。「味の大王」という北海道は苫小牧の店が古くからカレーラーメンをメニューに出しているそうだ。今から30年以上前のことらしい。ただ、料理としてのカレーラーメンは、市民権を得ているだろうか。正直言って、まだまだではないだろうか。

 一方で、カレーうどんという食べ物は、すでに広がっていてどこでも食べることができる。多くのうどん屋のメニューにもあるし、名古屋では、それを看板にしている店が多く、最近ではフランチャイズ展開をしている店もあるくらいだ。

 東京でも上野の「中川屋」のようにカレーのガイドブックにも掲載されているカレーうどんの店がある。讃岐うどんの本場の香川でも、「五右衛門」のようにカレーうどんで有名な店はある。カレーの強い味とうどんは、比較的、合わせやすいのだろう。

 一方、唐辛子の強い、担担麺のようなメニューは、うどんにはあまり無い。チゲ鍋などで、最後にうどんを入れて食べることはあるが、料理としては決して多くはないと思う。しかし、唐辛子にうどんが合わないかというと、そうでも無いだろう。

 ラーメンの麺は、ふつう強力粉を使うので、うどんとは食感が違う。どちらかというと、粘性のあるソースタイプのカレーを嫌うのだろうか。いや、中華系のメニューでは、とろみのあるスープの麺も多い。考えれば考えるほど、なぜ、カレーラーメンが多くないのかが、わからなくなってくるのだ。

 またタイ、マレーシア、ベトナムなどでは、カレーと麺という組み合わせの料理は、ごくごく普通に存在する。どちらかというとサラッとしたカレーと麺を組み合わせることが多いが、とろみのあるカレーを使うこともある。米をベースにしたビーフンなどは、カレー味との相性がよいのかも知れない。

 となると、麺に一工夫があれば、カレーラーメンは成立するのだろうか? ビーフンとうどんにカレーが馴染むのに、中間の太さのラーメンにカレーがフィットしないことはないと思うが。

 カレーラーメンということで、ラーメン好きの人たちが思い出すのは、新横浜カレー博物館に期間限定で出店した「あまからや」だろう。カレー店の店主が創作したスパイスの利いたラーメンを出した。基本的には醤油味の風味をスパイスで高めるタイプのラーメンで、カレーとラーメンの融合ということでは一歩を踏み出した感があった。

 最近では(横浜市青葉区に出店している)カレースパイスと味噌味と融合されたラーメンも出している。しかし、カレーうどんのように、カレーを全面に打ち出したカレーラーメンが、まだまだ増えてもいいのではと思う。

 普通の食堂で、ラーメンもカレーも人気メニューという店もある。ところが、カレーラーメンとなると、出している店は極端に少ない。

 巣鴨に「大沢食堂」という店があった。「あった」と過去形で書くのは、道路拡張のため、白山に移転することになったからである。もともとは、市場に隣接する、夜中通しで営業することで知られていた便利な食堂なのだが、この店の名物が「カレーラーメン」である。

 実は、ラーメンの上にカレーのルーをのせるだけのシンプルなもの。店主も、メニューのカレーとラーメンを合わせただけなんだよ、と謙遜する。しかし、元キックボクシング日本チャンピオンの不思議な力なのだろうか、料理としてとても完成度が高いメニューなのだ。

 そして、ここには、「極辛」という強烈なメニューがある。一口で目から火花が飛び出るような辛さ。そう、この強烈な辛さの前では、ラーメンだろうがライスだろうが、もう関係は無い。

 しかし「大沢食堂」のようなケースは例外である。カレーラーメンはメニューに少ないし、偶然見つけて注文しても、がっかりするケースの方が多いのだ。なぜ、カレーラーメンがまだ広がっていないのだろうか。

 それはおそらく、カレーとラーメンの強烈な個性をぶつけ合う、せめぎ合うということが、まだまだ行われていない、試行錯誤が足りないのではないだろうか。上品に形を整えただけでは、吸引力のあるメニューにはならないと思う。それでも、インパクトのあるカレーラーメンを出す店も少しずつ現れている。

 横浜市青葉区の「大文字」という意欲的な店は、もともとラーメンの他にカレーライスも出している。店主の好物ということなのだが、なかなか旨い。ところが、カレーラーメンというメニューを試してみると、ラーメンの上にカレールーがのっているが、良いところを打ち消しあっているようで、インパクトが半減しているのだ。

 ラーメン、カレーそれぞれが良くても、それを合わせるのは、決して簡単ではない。2年前「大文字」は、カレーつけ麺という新しいメニューを出してきた。これは、麺に合うように工夫されたカレーのつけ汁。たちまちのうちに、店の人気メニューになった。僕は、もう一工夫して、是非とも、新しいカレーラーメンを完成してほしいと、密かに期待している。

 定番のメニューでなくても、期間限定でカレーラーメンにチャレンジする店もある。最近驚愕したのは、浅草の「つしま」の出した一品。もともと最近流行ってきた和風豚骨タイプのラーメンを出す店。そこが出したカレーラーメンが、和風味が豚骨とカレーをうまくつなぎ合わせる役割をして、素晴らしい出来だった。ふつうラーメン店の期間限定メニューは一度しか食べに行かないのだが、このカレーラーメンは2回食べにいった。

 あと何年かかるかわからないが、醤油、塩、味噌、豚骨といったラーメンの基本的なラインアップに、カレーが加わる日は来ると私は信じている。私たち日本人が、ラーメンもカレーも大好きなのだから。

(佐々木 晶)

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=読者からのコメント=

■・以前寮に住んでいたとき、パスタにレトルトカレーをかけて食べたらげてもの食い扱いされたことがあります。カレーと麺の組み合わせはなにか不思議なものがあるのでしょうか?

・札幌ではスープカレーがはやっていますが、「辛い系」のラーメンのスープとそう変わらない感じのものが少なくありません。カレーの定義にもよりますが、「辛くて」「具のたくさん入った」ラーメンはすでにあるので、あえて「カレー」を名乗る必用が無いだけかもしれません。
(snark:39)

■スープカレーは二日酔いに一番良いと思います。ただ、米だからよいのであって、ラーメンだと厳しそうだなあ、、、。
(田邊@BizTech:42)

■新潟県の三条市には、昔から出す店がたくさんあります!
“カレー中華”という名前で、ほとんどの食堂、ラーメン店に、当たり前のようにメニューにあります。新潟県に多い、煮干しの香ばしい風味の効いたスープに、カレーが絶妙にマッチしておいしいですよ。最近は隣りの燕市の背脂・煮干し・極太麺のラーメンが御当地ラーメンとして有名になりつつありますが、三条市にもこういった独自のラーメンがあることは、県外のラーメンフリークでも意外と知られていない事実なのです。
(NORI)

■東武伊勢崎線の西新井の下りホームに西新井ラーメンという店があり、そこは20年ぐらい前からカレーラーメンがあったと思います。

寒い冬には身体が温まって大変美味しかった記憶があります。今もあるかは確認していませんが。
(よしじゅん:36:SE)


佐々木 晶

佐々木 晶(ささきしょう) 1960年2月、東京は渋谷に生まれるが、多摩地方で育つ。学生時代から週2、3回ラーメンを食べていたが、1996年に第2代ラーメン王の武内伸氏の著書を読み、ラーメン食べ歩きに目覚める。忙しい時間の合間を縫って、コツコツとラーメンを食べるようになった。これまで、2000軒以上の店を経験している。2000年、「TVチャンピオン第7回ラーメン王選手権」に出場する。店の扉を触るだけで店名を当てたり、メンマや味玉の欠片で店を識別するなど類い希な記憶力を駆使して優勝し、第6代ラーメン王となる。しかし実際には、データよりも食べ歩いた自分の経験を重視するタイプである。普段は近場のラーメン店に足繁く通い、味の変化を楽しむというリピート派である。ラーメン食べ歩きでは、昔ながらの古い店や、辺境の店に特に興味を示す。地方食べ歩きのルート開発にも熱心で、秋田の「十文字ラーメン」と山形の「新庄ラーメン」を日帰りで食べ回るコースは、知られている。2001年には光文社新書より、「ラーメンを味わいつくす」を上梓。食べ手の立場からのユニークなラーメン文化論を展開する。趣味としてのラーメン論は、文芸春秋や日本経済新聞などでも紹介された。その他に、東京一週間をはじめとする雑誌のラーメン記事、テレビ、ラジオのラーメン関係の番組に多数出演している。本業は東京大学助教授で、惑星科学の研究者である。主に小惑星や火星の研究を行っており、最近では、アメリカ探査機の火星画像の説明などのために、テレビ、ラジオに出演した。
バックナンバー
■[2004/4/27]
・「おばあちゃん生き甲斐系の店」

■[2004/4/20]
・ラーメンフリークが作るラーメン店

■[2004/4/13]
・「期間限定メニューの効果」

■[2004/4/6]
・鶏ガラスープの時代は来るか

■[2004/3/30]
・テレビに愛されるラーメン

■[2004/3/23]
・いま栃木のラーメンが面白い!

■[2004/3/16]
・ラーメン店のブランド戦略

■[2004/3/9]
・「古い店をもっと愛して」

■[2004/3/2]
・ラーメン店 修業すべきか?独学か?

■[2004/2/24]
・「ご当地ラーメンと町おこしラーメン」

■[2004/2/17]
・二郎インスパイア系の出現

■[2004/2/10]
・「最強のラーメンファミリー〜丸長のれん会」

■[2004/2/3]
・2大国民食の狭間に:カレーラーメン

■[2004/1/27]
・ハワイ ラーメン事情

■[2004/1/20]
・カップ麺プロデュース体験記

■[2004/1/13]
・「ラーメン名店に名サイドメニューあり」

■[2004/1/6]
・2003年ラーメン界の動向

■[2003/12/22]
・2003年ラーメン業界を振り返って

■[2003/12/16]
・「浪花麺だらけ」の裏事情

■[2003/12/9]
・“曖昧な”国の“曖昧な”ラーメン

■[2003/12/2]
・新旧せめぎあう広島のラーメン

■[2003/11/25]
・全国・手打ちラーメンいろいろ

■[2003/11/18]
・進化する函館ラーメン

■[2003/11/11]
・外国人ラーメン武者修業者歓迎!

■[2003/11/4]
・チャーシューのこだわり

■[2003/10/28]
・日本のラーメン文化の起源

■[2003/10/21]
・佐賀・人情ラーメンとの出会いと、確信した加水率の秘密

■[2003/10/14]
・“サムライ・ラーメンシェフ”奮闘記

■[2003/10/7]
・ラーメン「こだわり」の波、全国へ

■[2003/9/30]
・滞在型ラーメン店の試み

■[2003/9/22]
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■[2003/9/16]
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■[2003/9/9]
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■[2003/8/26]
・インスタントラーメンに関する一考察

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■[2003/7/29]
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