私はラーメン屋ですばらしいサイドメニューに出会うことも食べ歩きの楽しみの一つと思っている。ほんの何年か前には「ラーメン屋は極力メニューを絞りラーメン以外にはなるべくメニューを置かない店が良い」みたいな風潮がややあったが、そんな事を言うのはナンセンスに他ならない。
いまやサイドメニューもラーメン屋の演出の一つとなっているのだ。名店であるほどそのセンスをいかんなく発揮してラーメンに合う見事なサイドメニューを考案し、客をラーメン以外の部分でも楽しませてくれるのである。
ラーメン屋のサイドメニューと言われるとなんと言ってもまず餃子を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、この当たり前と思われがちな餃子とラーメンという組み合わせだが、はたして相性が良いのか、と言われてしまうと本当にそうなのかと疑問が残る。
もともとラーメンは中華料理なのだから餃子が良い、という発想なのであろうが、餃子はそれ単体で味が強すぎる。繊細なラーメンとのセットだとラーメンそのものの味を分かりづらくしてしまうのだ。
またラーメンが出てくる前に軽くつまむものだとしても、実際に焼き上げる時間はラーメンの麺を茹でる時間よりも長くかかってしまう。ラーメンと餃子が同時に出てきても、ラーメンは早く食べないと麺が伸びてしまうし、餃子は冷めると格段に味が落ちる。
もちろん餃子を全否定するつもりはないし、いまだに主戦力として存在しているのも事実であるが、最近の流行のお店は餃子を置かない店が増えてきているというのもまた事実。ここでは餃子以外にどんなサイドメニューが存在しているのか、いかに現在サイドメニューのバリエーションが豊かになっているか知っていただこうと思う。
“全国区展開”が進む「チャーマヨ」
まずは名店の名物サイドメニューの中でも代表格である、北海道は小樽にある「初代」の「チャーマヨ」。パリッとした海苔を三角に丸めてその中には御飯とマヨネーズであえた細切れのチャーシューなどが挟まっており、小さめのそれが3個付いてくる。これが1〜2口で食べることができ、食べやすい上に美味しい。
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北海道・小樽の「初代」が出している「チャーマヨ」 画像提供 プロテック |
ラーメンを待っている間に軽くつまむことが出きて、味が強すぎないのでその後食べるラーメンの味を壊すこともない。しかも特に冷めて味が落ちるということもないので、ラーメンが出てきたらラーメンを優先して食べることができる。食べるタイミングにおいてまでラーメンの邪魔をしないのである。単純でありながらここまで優れたサイドメニューはそうそうない。
このチャーマヨは最近少しずつ他の店にも取り入れられている。北海道や首都圏に展開している「むつみ屋」や山梨の「夢乃屋」などがやはりチャーマヨという名称で同じスタイルのものを提供している。
そして新横浜ラーメン博物館の「魁龍」の「魁獣巻き」もこのチャーマヨをヒントにして作られたという話もあるぐらいだ。この魁獣巻きは、魁獣味噌というオリジナルの辛味がある味噌と御飯を海苔で巻いたという単純なものであるが、超がつくほどに濃厚な豚骨スープにこの辛味がベストマッチ。ねっとりと重くなった口の中をさっぱりとさせてくれるのである。
今後もこのようなチャーマヨから発展したサイドメニューが増えていく可能性がある。それもチャーマヨが汎用性にすぐれている証であろう。
続いて紹介するのはこれまた名物サイドメニューの代表格である、宇都宮は「花の季」で提供している「チェンピン」。いわゆる中華風のおやきである。しかしこれがまた格別に美味しいのだ。
餃子の町・宇都宮の「チェンピン」
厚めの皮をほんのちょっとかじると中からどんどんと肉汁があふれ出してくる。その肉汁をこぼさないようにすすった後、いよいよ本体にかじりつくのだ。それからも、中の肉を食べすすむごとにどんどん肉汁があふれてくる。この肉汁を逃さないようにレンゲを使ってうまく食べるべし。
ここまで来るとラーメンとの相性うんぬんを語るのは無粋。ほとんどの人がラーメンと一緒に注文するこのメニュー、ぜひあなたも頼んでほしい。餃子の町・宇都宮に来て、この餃子以上の美味しさに出会う感激は一度味わったものでないと分からないであろう。
なお、このメニューは、中国でも数軒しか作っていないというものを店主が直接教わってきたもの。日本ではラーメン屋以外を含めてもここでしか味わえない貴重なものなのだ。
広島のおでん、岡山のカツ丼
サイドメニューは実は地方によっても様変わりするものである。広島のラーメン屋ではなぜかほとんどのお店でおでんを置いている。広島以外でも西日本では時々見かけるが、東日本の人が食べに行くと、ラーメン屋に入った瞬間漂ってくるおでんの香りに違和感を覚えることだろう。
岡山に行くとなんとラーメン屋でデミカツ丼(ドミカツ丼ともいう)というデミグラスソースをかけたカツを御飯の上に乗せた丼物を提供するお店が何軒も存在する。ラーメンとデミカツ丼とはまた不思議な組み合わせだが、実際にその代表店である「やまと」に食べに行くとほとんどの人がそれらを一緒に食べているのだから面白い。どこが元祖なのかは分かっておらず、どうしてこのような文化ができたのかは興味をそそられるところ。
今回紹介したお店はもちろんサイドメニューだけが美味しいというわけでなく、いずれもサイドメニューに負けない魅力をもったラーメンを提供しているお店ばかり。ラーメンが一流であるからこそサイドメニューが名脇役として存在することができるのである。名店にこそ名サイドメニューあり。ぜひ、すばらしきサイドメニューとの出会いを楽しんでいただきたい。
(小林 孝充)
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