年初の取材の際に必ず聞かれる質問が「今年はどんなラーメンが流行りますか?」である。予言者でもないし、マーケッターでもないので、そんな予測はなかなかできるものではない。毎年、新店や話題の店、新メニューや限定メニューを中心に800杯を超えるラーメンを食べてきたなかで、昨年の動向を考えてみたいと思う。
2003年のキーワードは「新魚介系」「セカンドブランド」「ダイニング」「食べ手」「複合施設」の5つ。
まずは「新魚介系」。ラーメンに魚介を使うのは、今に始まったことではない。むしろ、ラーメンの歴史に魚は欠かせない存在である。なのに何故、昨年のキーワードに「魚介系」をあげるか?
それは「魚介系」の存在を強く感じさせるお店が増えたからである。しかも、これまでにはあまり使われてない素材や新しい手法でのアプローチが増えたのだ。2003年の新店としては「めん徳二代目つじ田」(豚骨鶏ガラ+魚介)、「田ぶし」(豚骨+魚介香油)、「はっち」(豚骨+鰹油)、「鮎ラーメン」(鶏ガラ+鮎)、「生粋」(鶏+さんま)、「大大」(豚骨+帆立)、「いなせなや」(豚骨+魚介)などがあげられる。
いずれも衝撃的で印象に残る味。ある意味、好みの分かれる味かもしれないが、他にない味であるため、わざわざ足を運んででも食べたくなる。
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| セカンドブランドで「真っ黒いスミ油を使った黒武骨」 |
2番目のキーワードは「セカンドブランド」。これまでラーメン界においては、店が流行った場合、同じ店名で同じ味を出すことが多かった。せっかく苦労して作った味でヒットしたのだから、その味で2軒目を出すことが常套手段であった。そして成功への近道でもあった。
それなのに2003年は、同じ店名ではなく、しかも違う味で、まったく内容を変えた店を出すのが多かったのだ。「五行」(博多一風堂)、「つしま」(田中商店)「CHABUYAJAPANSIORAHMENBRANCH」(ちゃぶ屋)、「AFURI」(ZUND-BAR)、「大大」(せたが屋)、「麺屋武蔵武骨」(麺屋武蔵)、「天照」(ラーメン二郎堀切店)など。(カッコ内は元々の店名)チャレンジ精神旺盛な店主といえる。
3番目のキーワードは「ダイニング」。ラーメンはどちらかといえば『早い安い旨い』という食べ物である。所要時間が短い食べ物の代表的業態であろう。しかし、ラーメンを食べるTPOとして「飲んだ後にラーメン」というニーズが間違いなく存在する。このニーズを1軒で満たすことができれば、経営側も食べる側も満足できるはず。
そう思ったからなのかどうかはわからないが「ラーメンダイニング」をコンセプトとしたお店が増えた。「麓郷」(むつみ屋の新業態)、「五行」(博多一風堂の新業態)、「麺や又べえ」(支那そば亭の新業態)、「框堂」(居酒屋などを経営する企業の新業態)、「じゃんけん」(ふらんす亭の新業態)などがそうである。ファーストフード的なラーメンを扱う店なのにも関わらず、スローフード的な「ゆっくりしていってください」というコンセプトなのである。個人的にはこういう店が流行って定着して欲しい。
4番目のキーワードは「食べ手」。「作り手」「食べ手」と分けること自体変な話だが、いわゆる「ラーメン好き」である「食べ手」がラーメン店に関わりを持ってきたということ。
はんつ遠藤氏がプロデュースした「義薫」、立石氏がプロデュースした「極麺王」、石神氏がプロデュースした「潤」(東武百貨店の「諸国ラーメン探訪区」第二弾)など。12月に神田小川町に開店した「ラーメンバトルコロシアム」は、前記はんつ遠藤氏と立石氏がそれぞれプロデュースしたラーメンを同じ店で競わせ、3ヶ月後に売上の悪い方をラーメン王の小林氏プロデュースのラーメンと入れ替えるという。単独店と複合店の中間のような位置づけの新しいコンセプトだ。
こうした「食べ手」の元祖は、昨年開店した「渡なべ」の店主・渡辺樹庵氏とも言える。元々渡辺氏はラーメン好きで全国のラーメンを食べ歩きしていた。自分の店を持ったので「作り手」側に回ってしまったが、「渡なべ」開店前は我々と同じような存在で何軒かプロデュースしているのである。
またラーメンコンプレックス(ラーメン複合施設)の監修においては、私が「ラーメン劇場」や「ラーメン国技場」、はんつ遠藤氏が「麺だらけ」や「明石ラーメン波止場」などを担当。年末にはカップ麺も発売される。はんつ遠藤氏、現ラーメン王の小林氏、元ラーメン王の山本氏、3人の共作である。いよいよ食べ手がカップ麺にも進出したのである。
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| 複合施設で「1ヶ月連続で1000杯売った店もあるラーメン国技場 |
最後に「ラーメン複合施設」(ラーメンコンプレックスとも呼ばれる)。昨年、オープンしたものをあげてみよう。「ラーメン国技場」(宮城)、「拉麺浪漫館」(栃木)、「ワンズモールラーメン劇場」(千葉)、「ラーメンアカデミー」(埼玉)、「ヌードルカフェ麺喰王国」(東京)、「ラーメン哲人館」(愛知)、「京都拉麺小路」(京都)、「道頓堀ラーメン大食堂」(大阪)、「大阪ヌードルシティ〜浪花麺だらけ〜」(大阪)、「明石ラーメン波止場」(兵庫)、「らーめん横丁七福人」(広島)、「ラーメン城下町」(熊本)、とまあこんなにたくさんある。
元祖は創業10年になる「新横浜ラーメン博物館」。「ラ博」の成功を参考に増えていったと見られる。しかし、これらの施設は玉石混淆というか、コンセプトがしっかりしたところと、単にラーメン店を集めたとしか思えないものもあり、その差は数年後に明確に出てくることであろう。
こうしてわずか1年の間にいろんな動きがあったラーメン界。今年はもっともっと面白い、そして楽しい、そして美味しい1年になって欲しいと思う。
(大崎 裕史)
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