2003年はラーメン業界が大きな岐路に立たされた年であったと考える。まず、これまで増え続けてきたテレビのラーメン番組が急激に減少した。2002年の大晦日に、紅白の裏番組で放映された4時間45分のラーメン大特番の視聴率が思ったほど伸びなかったのが、ラーメン番組にブレーキをかけた大きな要因と考えられる。
しかし、減ったとはいえ、ラーメンを取り上げる番組は他の食に比べれば圧倒的に多く、ここ数年が異常であっただけで、元に戻っただけという感じである。ラーメンの書籍は相変わらず数多く発行され、地方のラーメン本や雑誌の特集も年々増え続けているようである。
料理性の高い御当人ラーメンといわれるようなラーメンが、東京だけでなく全国各地で花開き始め、そのような店が地方のラーメン本を賑わせている。「博多一風堂」をはじめ、「北海道むつみ屋」、「京都よってこや」など、力を持った店舗の全国展開も目立った年であった。各地で、地元のご当地ラーメンと、他のご当地ラーメンの進出と、地元発の御当人ラーメンとのせめぎ合いが勃発しはじめた。
こうして様々な地域で、ラーメンがレベルアップし始めている。一方で、他にない食材を使ったラーメンが数多く出て来すぎて食傷気味となり、マスコミも飛びつかなくなったし、お客様もあまり驚かなくなってしまった。期間限定のメニューも、いじくり過ぎてラーメン本来の旨味から遠ざかっている傾向があり、これもあまりマスコミの食いつきは良くない傾向にある。
技術が高くなったのは素晴らしいことだが、テクニックに走りすぎると、ラーメンの良さが損なわれる……、というパラドックスに陥っている。しかし、これは良く解釈すれば、ラーメンも「食」として成熟してきた証かもしれない。
そして、今年の顕著な傾向として、実力がついて成熟してきたラーメン店が、本来の店の味とは違ったラーメンを、屋号も変えて新たなコンセプトで展開するというパターンが続々と現れたことが挙げられる。
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| 「五行」のラーメン |
「博多一風堂」が「五行」、「麺屋武蔵」が「麺屋武蔵武骨」、「せたが屋」が「大大」、「ZUNDO-BAR」が「AFURI」、「ちゃぶ屋」が「CHABUYA SIORAHMEN BRANCH」、「田中商店」が「つしま」と名を変えて、次々とのれんを掲げた。ラーメン職人も技術が成熟して、様々な手法を身につけると、違った味にも挑戦したいというのは当然のことだ。その時に、これまでの屋号がネックになるのなら取払ってしまえというわけで、新たに展開し始めたのである。
そして、2003年のラーメン業界最大の動きは、ラーメン集合施設の乱立である。ラーメンだけでなく、中華料理からスイーツに至るまで、様々な食のテーマパークがこれに続いた。
2003年以前も、新横浜ラーメン博物館の成功後を受けて、旭川ラーメン村、博多のラーメンスタジアム等々が設立していたが、2003年は年間で10施設を超える勢いで立ち上がった。宮城、千葉、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫、熊本など、全国的レベルの規模でウェーブが巻き起こったのだ。
これで業界が活性化するのなら素晴らしいことだが、果たして本当にそれで良いのだろうか。オープン時は話題性が後押しして、当然集客もするだろう。しかし、その話題性が継続できるのだろうか。
大半の施設は売り上げの低い店から入れ替えていくシステムを採り入れているが、これでは、あまりにラーメン店が可哀想である。ファッション業界などと違って、ラーメン店の多くは個人経営である。しかも、施設に出店するには人を育てなければならない。売り上げ最下位で「はい、サヨナラ」では、せっかく育てた人材の行き場がなくなってしまう。
新横浜ラーメン博物館では、私の知る限りでは、期間限定店などで誘致した店は、その後のフォローまで考えていた。現在乱立している商業施設は、ビジネスとしてラーメンを選択しているだけで、ラーメン店のことや業界のことまで考えているとは思えない。
業界の発展のためには、設立した施設の全てが成功してもらわなければ困る。しかし、すでに勝ち組と負け組みは明確に別れてき始めている。おそらくこのままの状態では、2004年には、閉鎖する施設がいくつか出てくるだろう。
そうなってしまったら業界にとってはダメージとなり、大げさに言えば「将来設計」のない施設には未来はないという現実は避けられない。「ラーメン=儲かる商売」などと考えて立ち上げた施設は、必ず「ラーメンの難しさ」を知ることとなる。ラーメン施設の乱立はバブル経済時の不動産業などと、図式があまりに酷似しているような気がしてならない。
「お願いだから、もうこれ以上業界をかき回すのはやめてください」というのが私の本音である。しかし私の心の叫びは、彼らには届かないだろう。それならば、「ラーメン」を正しく導く道しるべを誰かが示さなければならない。「キャシャーンがやらねば、誰がやる」というのが今の私の心境だ。「超らーめんナビ」の達人衆も是非、力を合わせて立ち上がって欲しい。
(武内 伸)
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